『ジョブ型雇用』vs『メンバーシップ型雇用』(3)
日本のメンバーシップ型雇用を説明した海老原嗣生先生の「よこ・よこ・たて・よこ(理論)」。
👉 役職者や熟練者が退職しても、「よこ(部署や地域)」「たて(昇進)」等の異動により、最終的に「新人1名の採用」で補える。
これは、日本型経営を米国で説明した野中郁次郎先生の「SECIモデル」に匹敵するわかりやすさです。
採用は新卒一括採用、「人柄」と「ポテンシャル(潜在的能力)」と「意欲(熱量)」で選ぶ。入社してから教育し、適性によって配属する。
最初は、スキルもないので雑用から始める。しかし、徐々に慣れて、より高度な仕事を担えるようになる。
部署異動(よこ)を通じて、汎用性の高い職務能力を高めるとともに、社内での役割分担(分業)への理解を深める。同期入社+@の人脈も形成される。
任された仕事で継続的に成果を上げ、チームをまとめる力のある人がチームリーダーや役職者に引き上げられる(たて)。
したがって、ポストに空席ができても外部に人材を求める必要は無く、新人の採用を1人増やせばすむ。
うまくできてる。
一方、メンバーシップ型雇用は会社の人事権が強く、人事異動に会社の価値観が強く反映されます。
自己答申書などがあっても、よほどのことが無ければ反映されない。キャリアパスは会社に依存、際立つプロフェッショナルが育ちにくいなど、課題も多くあります。
日本企業でもこれまで、メンバーシップ型雇用をベースとしながらも、高度な専門的職種(研究開発職、エンジニア職、グローバル財務、知的財産管理、社内弁護士、トレーダーなど)では、「ジョブ型」でのキャリア採用、別体系の人事制度、給与で対応してきました。
しかし、激しいグローバル競争にさらされ、卓越したスピードが求められている分野(創薬、IT、金融/FinTech 、AI、通信、ネットサービス等多数)では、新卒人材の自社育成だけでは追いつかないことは言わずもがな。
さらに踏み込んだ採用・雇用形態の改革が求められています。
「メンバーシップ型」と「ジョブ型」をどのように組み合わせ、人を活かし、イノベーションの連打につなげるか。
採用力を高める一方で、人材流出を防ぐリテンションマネジメントをどのように深化させるか。
HR Techを含めた人的資源管理(HRM)分野での取り組みが、いま熱いです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!!
(続く)
写真:東北大学本部
👉 HRM:Human Resource Management
👉 HR Tech:Human Resources+Technology
👉 FinTech:Finance+Technology
👉 SECIモデル:Socialization(共同化)→Externalization(表出化)→Combination(連結化)→Internalization(内面化)のスパイラルによる知識創造
📗『知識創造企業』
野中郁次郎先生/竹内弘高先生
東洋経済新報社
(1996/3/21)(新装版2020/12/4)
📕『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~欧米のモノマネをしようとして全く違うものになり続けた日本の人事制度』
海老原嗣生先生 日経BP社(2021/4/1)
📘『名著17冊の著者との往復書簡で読み解く 人事の成り立ち: 「誰もが階段を上れる社会」の希望と葛藤』
海老原 嗣生先生 /萩野進介先生 白桃書房(2018/10/31)
📙『働き方改革の世界史』
濱口桂一郎先生/海老原嗣生先生
筑摩書房(2020/9/10)
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