「熊本城マラソン」の様子を見てきただけの話と、興味が持てない仕事で挫折した話②
(※前回まで↓)
長距離競技に興味を持つことはできなかった。それでもレースや記録会をプレスエリアの何も視界を遮らないところで眺めるのは好きだった。スタートラインに並ぶ選手たちが醸し出す何とも言えない緊張感とか、ゴールへ飛び込む選手のヒトとしての極限状態を見た瞬間とか、スポーツなんかで肉体的にキツい経験をしたことがない自分でさえ、細胞レベルでゾワッとくる何かがある。でもプレスエリアって好きだとかそういうんじゃなくて、自分がさっき挙げたような体験をしっかり報道する人が居るべき場所なので往々にしてそういうものだとは思う。熊本城マラソンを見に行くと決めた時も、沿道ではなくプレスエリアで。そう思っていたので、ツテを使ってプレスの申請をした。
熊本城マラソンの開催は2月16日。熊本に入ったのは2月13日だった。3月下旬現在ほどの厳戒ムードではなかったものの、多少の大きいイベントが自粛を始めたぐらいの時期。3月頭にフィリピン旅行をする予定だった友人もこの頃は「イチかバチかで行く」とか言ってて、今ではまだまだ考えられないような感覚。実際熊本城マラソンは予定通り行われたけど、観客と参加者が触れ合えるゾーンでハイタッチが禁止されたり、中国からの参加者に自粛が求められた・・・ぐらいのアナウンスで、あくまで個人的な感覚だけど深刻な空気はあんまり感じなかった。
それよりも悩んでいたのは、熊本に着いた翌日・2月14日の夜に開催したトークイベント「熊本のテレビ番組について話す会。」の集客とか、「弐ノ弐で餃子食べたいけどイベント終わるくらいの時間って空いてるかなー」とかその辺が自分の深刻ランキングの上位を占めてた。
イベントもケガなく終わり、弐ノ弐の餃子でお腹いっぱいのその翌日、2月15日は熊本城マラソンの「前夜祭」がある。おそらく県の要人とかゲストランナーで来熊した著名人が挨拶をするようなイベントなんだろうなという予測はついていた。正直、レースを見ることしか頭になく、前夜祭はスルーするつもりでいた。高校の時から鈴木えみが好きなので、鈴木えみが前夜祭に来るなら絶対行ってただろうけど、たぶん鈴木えみは来ない。熊本にもマラソンにもゆかりがないし、かすかな希望を託して「鈴木えみ マラソン」で検索してみたら「鈴木えみ カラコン では?」的な誘導のされ方をされてしまう。
何せ当日は超早起きだし、早く寝たい。前夜祭なんて考えた人はみんな早く寝たくないんだろうか・・・なんて甘えた考えでいたけど、プレス用のパスを前夜祭の受付で受け取らなければならない段取りが必要になり、どうせ会場に向かうならパス受け取って帰るだけじゃ味気ないか…と社会科見学気分で参加を申し込んだ。
2月15日。夕方。前夜祭の会場で誰に会うでもないけど、一応それらしく襟付きのシャツを着て会場のホテルへ。スーツは普段着ることがあんまりないし、マジで似合わない。何がおかしいのか分からないけど、何かがおかしい。どんなにめでたい冠婚葬祭でもその朝に鏡に映るヤバい男性(31)を見てしっかり落ち込んで家を出なければならないのが悲しい。なので"それらしい"に留まるデニムシャツと細身のパンツでなんとかスーツの群衆に紛れていたかった。野猿『Be Cool』ばりの「こんなに憂鬱な明日がやってくるなら群衆の中に紛れていたい」感。さらに"仕事で来てます感"を上乗せするため、某テレビ局の入構証を首から下げることにした。普段入構証を入れているケースは、首から下げてもちゃんとカードがちゃんと正面を向いてくれないレベルでボロボロだったので、新しいものをさっき上通の甲玉堂で買った。
久々に甲玉堂に入ったのでもう少し長居したかったけど、熊日30キロロードレースの記者会見の時間が迫っていたので、入構証を新しいパスケースに入れ替えながら足早に会場のホテルへと向かった。
(※続く↓)