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音楽団体を運営するポイント

先日の振り返り記事でも詳しく書きましたが、私は「N会」というマンドリンを中心としたレクリエーション団体(?)の主宰をしております。
2014年に立ち上げた当初は「主宰」「運営」といった役割を担う気持ちはあまりなく、あくまで「自分が団の中心」くらいの感覚だった気がしますが、10年の月日が経ち、気づくと「リーダー」としての資質が試される場面も増えてきた感じがあります。
(それが、もちろん今までは趣味のフィールドでの「リーダー」だったわけなんですが、30代半ばに差し掛かり、平日の仕事の方にも同様の役割が求められつつあるよなぁ、というのはまた今度何かで書きます)

ここまでの自分の振る舞いを振り返る意味でも、「こうやったらうまくいった」「これは微妙かった」といった経験を踏まえ、現時点で音楽団体運営に関して気をつけていることとかを書いていこうかなと思います。
(具体的な施策というよりは、リーダーとしてのマインドみたいな部分が多くなります。多分。)

これを読んだ方に「こう思ってほしい」とか、関係者に同様のマインドを持ってほしいと思って書くわけではなく、本当にあくまで個人的な備忘録の延長として記録を残しておこう、くらいの感じで書きます。
加えて、ここまで団を続けられたことに対しての多少の自負はあるので、そのスタンスで書きますし、読む方としてはあまり面白い内容にはならないと思います。随分偉そうな部分もあるので、期待しないで読んでもらえればと思ってます。



結論

を先に書くと、
「参加者・関係者の皆様が満足できるように」
ということを念頭において、それに向かって団体を主宰しています。今は。

これは音楽を趣味とする人は皆そうだと思っているのですが、音楽を弾いたり聞いたりする理由って、その先にに満足感があるからだと思ってます。
うまく弾けた、いい合奏になった、お客様に喜んでもらえた、聞いてる側も感動した、それらのゴールのさらに向こう側には「だから自分は満足できた・楽しかった」があるはずです。

逆に言えば、その満足感のために、それなりのリソースを使って、弾く練習をしたり、合奏練習に参加したり、高い演奏会費を払ったりするわけですよね。
皆様のそのリソースを無駄にせず、相応の満足感を得ていただく。というのが、団体運営をするうえで目指すべきゴールだと私は考えております。

そのために気をつけていることを、以下細かく書いていこうと思います。

団体運営面

ストレスなく参加できること

スムーズな団体運営に対して「満足」というのは基本得られるものではなく、むしろ逆だと思っています。
すなわち、団体に対してストレスがあると、参加者の満足感が減ると考えてます。

運営面に対するストレスの要因は多岐にわたるので、全ては書き出せないのですが、思いついたのをバーっと書いていくと、

  • 演奏曲目が決まらない

  • 譜面の用意が遅い

  • 練習日程・場所が決まらない

  • 直前でのスケジュール変更

  • 運営が言ってることが途中で変わる

  • 連絡ツールがメンバーの情報リテラシーと噛み合っていない

  • そもそも連絡が来ない・遅い・分かりづらい

  • 誰が何をやるのかが決まっていない

  • 自分が知らないところで議論が行われている(団の方針次第だけど)

などですかね。まだまだあるとは思います。
上記のようなことが重なると、参加者は団体に対してストレスや不信感を覚え、団体に対して満足ではなく不満を抱くと思ってます。

中でも特に連絡関係については、私自身は一番重要だと思っています。
決まっているのにその情報が参加者に降りてこないっていうのは、不安になりますよね。
私は、決まったことはできるだけ早く参加者に情報展開するよう心がけておりますが、それはこういった考えからです。

今のN会においては、概ねクリアできている課題かなと思っておりますが、昔はとてもひどかったと思います。
前日に練習の中止が決まったり、本番2週間前に楽譜が用意されたり…
若気の至りというかなんというか、そんな時期もありましたね。

新規参画者に優しいこと

新しく見学・参加される方に対して、「ウェルカム感」を出せるよう心がけています。
それ自体には深い理由があるわけではなく、「N会が気になる、参加したい」とご連絡をいただき、実際に来てくださった方に対して、丁寧に接しない理由がない、というところです。

というのは今現在の話です。
昔のN会は常に人員不足に悩まされていました。
練習参加人数が1桁だったり、2,3人で練習したり、そんな日々もありました。
そういった背景があり、見学者や新規参画者に対しては「ウェルカム感」というのを、半ば強要していた時期もあります。
その名残として、団体としてのウェルカム感というのは、ある意味いい形で残っているとは思ってます。

ただ、この風潮は他の団体でもそうかというと、意外とそうでもないのかなと感じております。

せっかく見学者が来ているのに、合奏の合間に見学者へ声掛けをしなかったり、見学者が飲み会に参加してくれてるのに昔の団員しか知らないような内輪話で盛り上がってしまったり… みたいな風景は他の団体でちょこちょこ見かける気がします。
それは、団体としてモテないよなぁと思ってしまいます。

ちなみに蛇足ですが、それと逆のパターンで、誰彼構わずウェルカムしすぎる団体もある気がしています。
本当にその人がコミットするかも見極めずに、「とりあえず出てほしい」とアプローチをしたり…逆に見学者の方が尻込みしちゃったりする気がします。

少なくとも私は、団体の長として、新しく参加された方とは多少なりともコミュニケーションを取り、ひいては参加の可否を正しく判断してもらえるよう心がけております。

無理に引き止めないこと

(また前提の話となり恐縮ですが、)N会には正式な入会手続きみたいなものは存在しておらず、一度演奏会に出演したらN会のメンバーかな、くらいの距離感のコミュニティです。
そのため、明確に脱会する方というのはほとんどいないのですが、中にはN会の活動から距離を空ける方も割といらっしゃいます。
多分、知らぬ間にDiscordのサーバーから退出した人も何人かいる気がします。
すべての人がN会にコミットするわけではないので、これはしょうがない部分だと思ってます。

私はそういった方に対して、あまり無理に引き止めをしないことにしています。
先の話と合わせて、「来るもの拒まず、去るもの追わず」の考え方です。
というのは、気をつけていることというよりは、私の考えの原則的な部分になります。

その気がない人を無理に引き止められるほど、自身に自信はないですし、そこで何らかの無理を強いるのは本望ではないため、そういう振る舞いになってしまいます。
N会に参加のメリデメを考えてそういった判断をされたのだと思うので、その意思を尊重すべきだと思ってます。

もちろん、気が向いたら戻ってきてほしい人はたくさんいますので、その際は改めてウェルカムしたい気持ちはあります。

見返りを求めないこと

運営側の作業は多岐にわたります。(これもまた別に記事書きたい気はする)
当然、作業量も多く、よい団体運営のために費やす時間は相当なものになります。

そこにかけた時間や労力に対し、私自身は直接的な見返りを何も求めていません。褒められたいとかもありません。
「俺めっちゃ運営頑張ってるから褒めて」ってのも格好悪いと思います。
労力に対する見返りを求めてしまうと、そのうち労力をかけること自体が目的となってしまいます。
仕事しているアピールは基本的に不要です。
あくまでゴールは、参加者・関係者が幸せになることです。

ただ、たまに、ごく稀に、いろいろ疲れ切っている時に、ポロッと「褒めて」と口走ることがあるかもしれないのですが、そのときは私の中ではよっぽど疲れているときだと思うので、そっと優しい声をかけてください。

やりたいこと/できること の線引き

N会は「やりたいことをやる」を方針として掲げていた時期がありました。
それはもとより「会長のやりたいことをやる」ために集められたメンバーおよび団体だったから、自明なわけです。
最初の数年間は「やりたいこと」を中心に難曲を何曲も並べたりしました。それでもまだまだ若かった我々は、やりきった感が心の大部分を占め、十分に満足することができていました。

しかし、メンバーの増加、我々の大人化に伴い、同じようなレベルの「やりたいこと」を実践しようとしたときに、満足にこなせなくね??と気づくようになりました。
演奏会後の参加者向けアンケートなどで、「全体は良かったけど個人的には弾けなかったので不満」みたいな回答が意外と多く集まったりしました。
(まあこれはある種の成長だと思っています、無知の知みたいな。)

そういった経験を経て、「やりたいこと」「できること」の線引きはかなり意識をするようになりました。
線引きと言いつつも、多くの場合、「やりたいこと」が「できること」を上回るケースがほとんどですので、できることベースに合わせる形にはなります。

学生ならともかく、社会人中心の団体ですので、趣味に費やせるリソースというのはそこそこ限られています。
その中で、「やりたいこと」「できること」のバランスを意識していったほうが、全体的な満足度は高まると考えております。

謙虚でいること

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」

人間は偉くなればなるほど、謙虚に人と接するようになるということを、稲穂に例えて詠んだ句ですが、これめっちゃ好きなんですよね。
社会人生活も来年で10年となり、社会の人々の振る舞いなどを見ていて、自分は頭を垂れる側の人でありたいと思い続けております。
特に、組織のリーダーたる人については、「ほんまこれ」という気持ちです。

だからといって、意識をして「謙虚に振る舞う」というのは先の句の本質ではない気がしています。

N会の今のメンバーに対しては、一人ひとりの実力や団への貢献を理解できるよう努めています。(それは単に演奏というだけではなく、もう少し広い意味合いでの貢献を指します)
それらを知ることで、メンバーに対して尊敬する気持ちなどが芽生えますし、ひいては自然と「謙虚に振る舞う」ことに繋がると考えています。
この、自然と謙虚となる、というのが本質的に重要な部分だと思っております。

まあこれは実際、十分にそうできているかというとそうではない自覚はあります。
今後、私の鼻が伸び、天狗になりつつある場面があったら、ぜひへし折ってやってください。

合奏練習・指揮面

私は団内でのメイン指揮者として、合奏時間の半分以上を指揮者席で過ごします。
合奏練習は演奏会に向けたメインの活動になりますので、このあたりで気をつけていることについても書いていこうと思います。

特に、私は音楽的に優れているわけではないので、誰でも対応ができるような音楽以外の部分で、気をつけていることは結構あるつもりです。

ちなみに、指揮者を立てるような合奏をイメージして書いてますので、アンサンブル団体などにおいては、各曲のトップやリーダーと置き換えて読んでいただければと思います。

皆の時間を使っている意識

普段の練習といえども、貴重な時間・労力をかけて合奏に参加していただくわけですから、それなりに満たされた気持ちで練習を終えてほしいと思っております。

N会では1回の練習で実質5時間くらい合奏練習を行いますが、できるだけ効率よく皆さんの時間を頂戴して、合奏を作る意識を持っています。

その中の施策の1つが、指揮者が展開する「指示譜面」です。
ここはこう弾いてほしい、こういうことに気をつけてほしい、といったことを、あらかじめパート譜に書き込みを行い、それを展開しています。
そうすることで、合奏時間中に
「1stの練習番号Bの5小節前のアウフタクトからのフレーズ、クレッシェンドしてください」
のようなコメント、およびそれを書き込む時間は短縮されますし、
パートトップから、「前回の練習でここがこうなりました」という共有も少なくて済みます。
当然、各パートの譜面に指示を書き起こすのはかなり時間がかかりますが、合奏の時間を使って解決するよりは圧倒的に効率的だと考えています。

ストレスのない合奏

運営面の方で書いたストレスに関する部分と同様に、以下のような合奏面でのストレスは満足度低下に繋がると考えております。

  • 進め方に関する問題

    • 合奏時間全体の使い方の方向性が提示されない・一貫性がない
      このあとの時間の使い方がどうなのかが見通せないというのは、結構ストレスだと思ってます。

    • 弾いたセクションに対するフィードバックがない
      改善点などをコメントもせず、もう一度同じ箇所を弾かせたり、良い点を伝えずに次に進んだりすると、奏者は何が正解なのかがわからずモヤモヤします。(良い点のフィードバックはちょっと苦手ですが…)

    • 喋りが長い割につまらない
      奏者多くは、つまらない話を聞くために合奏に参加しているわけではなく、楽器を弾きに来てます。私は喋りに自信がないので、できるだけ実際に楽器を弾く時間が長くなるような時間の使い方を心がけています。

  • 音楽性に関する問題

    • 奏者に寄り添う気持ちがない無茶な指示
      「お前それ同じことできんの?」って気持ちになってモヤモヤします。強い態度で言われるとなおさらです。

    • 音楽的に的を射ていない指示
      弾きたくない音楽は弾きたくないので(進次郎構文)、音楽的に自信がない中でも、最低限弾く気持ちになるような音楽づくりは必要だと思っています。
      あまり堪能でない指揮者ほど勝手な味付けをしがちですが、私はスコア通りに、作曲者の意図を汲んだ音楽づくりを目指すことが多いです。作曲者がド素人でない限り、それは音楽的に的を射ていることがほとんどだからです。

    • 深い意味もなく前回と異なる指示
      言っていることが二転三転していると、「ほんまそれちゃんと考えてものを言っているのか」と思ってしまいます。
      できるだけ最初から最後まで一貫した音楽づくりが好ましいと思います。
      もちろん、合奏を進める中で考えが変わる部分も出てきますが、それは奏者と相談をしたうえで、それなりの根拠を提示して変えるようにしています。

↑が、あくまでパッと思いついたものです。
少なくとも私が奏者として、こういう進め方の指揮者の元で弾くときは、ちょっとモヤモヤしちゃって、それだけで満足度は下がってしまいます。

また、運営面でのストレスの場合、それがマイナスになることはあってもプラスになることは少ない、と書きましたが、
演奏面でのストレスがない場合は、参加者の練習日当日の満足感に直結すると考えています。

楽しげな雰囲気

あくまでアマチュアが仕切るアマチュアの集まりですので、合奏中の雰囲気も和気あいあいとしているべきだと考えております。
理由は端的に、その方が楽しい時間を過ごせるからです。

たまには合奏を進める中で思うようにいかない場面もありますが、困難に対し悲観的にならず、現実的な解決策を提示できるよう努めています。

音楽的には真面目に

「楽しく」やるだけで奏者が満足するわけではありません。
当然、メンバーは「音楽」をやるために集まっているので、音楽自体に楽しさを見出します。

私自身は音楽的に優れていないと書きましたが、それでも皆様の時間やリソースを預かる以上、良い合奏ができるよう、不勉強なりには事前に楽譜を読んで勉強しています。
音楽団体なので、ちゃんと音楽をしないといけません。(というのは半分建前です本当は早くビール飲みたいですすいません)


実際に「技術的な意味合いで」満足に弾けたかどうかはその方次第ですが、少なくとも「練習量的な意味合いで」満足な時間になったかどうかは、合奏を仕切る人、すなわち指揮者によって大きく変わってくる部分だと思ってます。
できるだけ多くのメンバーが信頼できる指揮者を立てることが、音楽団体運営においてはかなり重要な部分であると思います。

ことN会においては、団体運営者としての私が、指揮者としての私を一番信頼しているので、そのへんをクリアできている、なんて言わせんな恥ずかしい……

N会ならではな点

重ねて、私が主宰している「N会」が他の多くの音楽団体とは異なる点があります。
それは、私のあだ名がそのまま団体名となっていて、団体自体も私が中心となっている点です。(「N会」は「にっと会」と読みます、未だにだいぶ恥ずかしいです)
そして、ここまで書いてきた通り、団内でもメインの指揮者として、多くの合奏時間の進行などもしています。

有名な音楽家の先生が音楽監督として団の中心にいて、団名にも先生の名前が含まれている、みたいなパターンはあるかと思いますが、アマチュアのなんでもない人が、有名な先生と似たようなことをやっているのは、あまり聞かないです。

だからこそ、私自身があまり浮かれないようにしたいと心がけています。
だって、「俺の団体で、俺が指揮で、俺めっちゃ楽しいわ、俺最高じゃね」ってなってる人だいぶ鬱陶しくないですか??

団名こそ私の名前が由来ですが、今のN会の実態はメンバー一人ひとりの輝きの集まりだと思っているので、私自身はそこまで輝かず、メンバーの方が輝ける場所を運営として準備したい、という気持ちが最近では強いです。
これは、「これを気をつけている」というのではなく、こういうマインドでいるよ、というお話でした。

終わりに

↑のところまでを数ヶ月前に書き溜めてて、今久しぶりに読み返しながらこれを書いてますが、数ヶ月前の自分は随分と偉そうに書いてやがるなぁと、かなり痛い気持ちになりました。
ただ、多分今時点での私の考えからはそんなに離れていないので、やはり備忘録的にこれを投稿しておこうと思います。

結論として先に書いた「参加者・関係者の皆様が満足できるように」というマインドは、やっぱり大事だと思います。自分の感情は二の次です。
自分の感情を優先してしまう人は、多分ここまで書いてきたのとは全く違うやり方のリーダーになるのかなと思います。
個人的には、そういうリーダーについていきたいとは思わないです。

ありがたいことに、今はある程度私の考えや進め方に賛同してくれるメンバーが多いように見受けられます。
類は友を呼ぶ、なのかもしれませんが、おかげさまでほぼ不自由なく団体を主宰できています。

そういった昨今の団体メンバーに感謝しつつ、今後どのような方向に団体が進んでいくのか(あるいは後退していくのか)、どうぞ生暖かい目で見ていただければと思っています。


最後に宣伝です。
今年は演奏会をやります


N会10周年記念演奏会
~あなたのそばにいたいのです~

■日時・場所
府中の森芸術劇場 ウィーンホール
2025/8/16(土) 開場 15:20/開演 16:00

【第1部】
・流星群 / 末廣健児
・うきわのわるつ / M.Mochio
・ハミングバードクエスト / 中﨑智大

【第2部 アンサンブルステージ】
・メリッサ / 作:ak.homma 編:日下部真柚
・葛飾ラプソディー / 作:堂島孝平 編:中田日都
・アナと雪の女王メドレー / 作:Kristen Anderson-Lopez, Robert Lopez  編:遠藤秀安

【第3部】
・叙景的幻想曲「山国の婚礼」/ 作:V.Filippa 編:中野二郎
・青いトルマリン<委嘱初演> / 小林由直

※チケットは5月ごろ発売開始予定です


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