可能世界

(ブログより転載)

今日は可能世界についての話をします。

少し複雑なので、ここではかなり噛み砕いて説明をします。


まずは、ある例え話から。

20XX年、科学は進歩して、タイムマシンが開発されました。

あなたは、これに乗って自分の生まれる前に行こうと考え、幼少の祖父に会いに、70年前に行きました。

幼少の祖父とは無事に出会うことができましたが、なんと不慮の事故を発生させてしまい、祖父を川に落として溺死させてしまいました。

さて、ここからが問題です。


祖父が幼少で死んだのなら、あなたの親、そしてあなたは生まれてこないはずですよね。

しかし、あなたが生まれてこなければ、タイムマシンで祖父に会って、殺してしまうこともなかったはずです。


このような矛盾が永遠と続いてしまいます。

この矛盾を解明しない限り、タイムマシンの出現はあり得ませんね。


さて、ここで一つ、発想による解決を図ってみましょう。

この矛盾は、

「過去から現在に至る因果関係の流れはただ一つ」

と言う考え方を前提としています。

つまり、「過去から現在の流れは唯一無二の存在であり、過去の原因を変えれば現在の結果も必ず変化する」と言うものです。

川で例えると、「上流で物を流せば、必ず下流に辿り着く」と言った感じでしょうか。

しかし、もし川の流れが途中で複数に分かれていたならば、上流で物を流しても、どの下流に辿り着くかはわかりませんね。

この川の流れように「世界は複数併存する」、と言う考え方を「可能世界論」と言います。


身近な例を出してもう少し補足します。


ここに水の入ったコップがあるとします。

このコップ、一時間後はどうなっているでしょうか。

・そのまま
・誰かに飲まれる
・地震が来て床に落ちて粉砕する

…などなど、いろんな可能性が考えられますよね。

そして、実際には、その後に「誰かが来て飲まれる」と言う状況が発生したとしましょう。


「過去と現在は唯一無二」の考え方では、

・そのまま
・誰かに飲まれる
・地震が来て床に落ちて粉砕する
…など

の中で、

・誰かに飲まれる

が選択され、他の

・そのまま
・地震が来て床に落ちて粉砕する
…など

は不成立だったため、単なる可能性(空想)に過ぎなかったんだと解されます。


しかし、可能世界論においては、

たまたま、その世界では、

・誰かに飲まれる

が選択されただけであり、

別の世界、つまり

・そのままの世界

・地震が来て床に落ちて粉砕する世界

などもどこかに存在している、と考えます。


ゲームで例えた方がわかりやすいかもしれませんね。

ある場面において、Aと言う選択をしたらA'と言うストーリーになった

しかし、それは唯一無二の展開ではなく、

・Bと言う選択をしたらB'と言うストーリーになる

・Cと言う選択をしたらC'と言うストーリーになる

と言うプログラミングもされているから、

B'の世界、C'の世界…も併存する

と言えるのと同じですね。


前置きが長くなりましたが、タイムマシンの矛盾について解決しましょう。


この話では、

・祖父が幼少で死んだ世界
・祖父が生き続ける世界

の二つが存在します。

そしてあなたは、「祖父が生き続ける世界」の住人です。
(この世界は唯一無二の世界でなく、「祖父が幼少で死んだ世界」も別の世界に存在しています)

あなたがタイムマシンで時代を遡り、祖父を殺したとしても、その世界が、元々存在する「祖父が幼少で死んだ世界」に移行するだけであって、あなたの存在する「祖父が生き続ける世界」とは別の世界へと分化していくだけです。

当然、タイムマシンで元の時代へ戻れば、あなたの祖父は生きていますし、タイムマシンであなたの祖父の青年期に会いに行くこともできます。

また、同様に、「祖父が幼少で死んだ世界」にも行くことができます。

そう考えると、タイムマシンは、時の中の行き来と言うよりも、可能性の中を行き来していることになりますよね。

この話はさらに発展の余地がありますが、今日はこのぐらいにしておきます。


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