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新車

我が家に、とうとう新車が来た。先週の金曜日のことだ。

気に入ったミニバンに乗っていた。5年目だった。ただ、次女の遠征についていくこともなくなり、そろそろ車を小さくしたいという家内の要望が大きくなってきていて、車の納期も逆算すると年末までに検討をしていこうということになっていた。

本来、車など贅沢品であることは分かっている。だが、家内が通勤に毎日使うことを考えると買わざるを得ない。今後の私と家内の行動範囲やパターン、家内の通勤距離、長男に続いて長女が独立したあとの乗車人数、残債などを考えた。でも、やはり決め手は家内の意見であった。

燃費が良くなきゃ。

家内は、究極、突き詰めていえば、その一点なのである。

確かに、その通りだ。そもそも我が家は、車を所持しているような余裕なんて無い家庭だ。必要に迫られて車を所持していて、さらにここにきて新たに買う車なんだから、考えなくては。

じゃあ、いっそ、2シーターくらいにしようか。

これには長女が反対した。

一応、家族全員5人が、乗れなくちゃ。

次女は、ミニバンでなくなる時点で、もう、議論に参加してこなかった。次女はスポーツクラブなので狭いのも嫌。足を伸ばしきれないのは嫌。車を変えることに関しては大反対なのだ。

長男は、ほとんど帰宅しないので、我関せず。私は、もちろんのことながら、家内に従わざるを得ない。

ということで、コンパクトカーに決まった。しかし、突き詰めてみると、一番優先しなければならなかったのは、結局は車の納期だった。すったもんだの末、春から発売開始をしているコンパクトカーの、ハイブリッド車となった。

納車の翌日、予期せぬことが起こった。長男はやむを得ぬ突然の出張で。長女は夏物の服を取りに来るとかで、土曜日の夜に全員が自宅に集合したのだ。そして、日曜日の午後、長男を空港まで見送り、長女を自宅に送迎して帰宅するという長距離運行となった。

問題となったのは、席である。運転席は、家内。助手席は巨漢の長男。後部座席に、長女、次女、私の3人が乗り込むことになった。

乗り込んだは良いが、すし詰めとは、こういうことなんだろうという状態になった。そこで、私が言った。

この車に、命名しました。えー。小さいに、こころざし(志)、朗らかで、小志朗(こじろう)です。みんな命を守って貰う車です。以後、よろしくお願い致します。

一同、

……。

すし詰め状態の中、反応無し。

小志朗が動き出す。後部座席の長女と次女が、狭い狭いと言いつつ、肘で場所を拡張しようとする。私にも、

ちょっと広くとりすぎてるんじゃない?

と、文句を言ってくる始末。何だかんだと言い合っていると、

小志朗に文句を言うのは、許さないから!

家内が一括して、一気に静寂が訪れた。

長男は助手席で昼寝。後部座席は声に出さずに小競り合いが続いたが、何とか空港で長男を見送り、長女を送り届けることが出来た。

帰路、車の中では、何の許可も得ず、当然のごとく次女は助手席に座った。そして、思い切り席を後ろに引いて背もたれを倒し、豪快に寝だした。

私は、後部座席の左後ろに小さく鎮座し、スマホを触りながら、心の中で呟いた。

小志朗のお陰で、嵐のような、賑やかな日曜日だった。ありがとう。これからも、よろしくな。

でも、kojuroとkojiro。ややこしい名前をつけてしまったものだと、その時になって、はじめて思った。一字違いで大違い。うーむ。

ごめん、小志朗。仲良くやっていこう。




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