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ご自由に

5年に1度ほど、こういう季節がやってくる。防災用の保存水が期限を迎え、「ご自由にお取り下さい」と事務所の隅に並べられる。

年度の初めに、恐らくつこのペットボトル群は、事務所に置かれたのである。ステイホームの期間を経て、昨日、私は初めて目にした。

よく水を飲むほうだ。よくというよりも、意識的にかなりの量を飲むようにしている。毎日ボトルに緑茶を入れて、4〜5杯おかわりをするのだが、予定変更。迷わず1本拝借した。

三密を避けるための時差出勤という名目で15時過ぎには事務所をあとにしたが、2リットルの水を1本と予め持っていった緑茶500ミリリットルを飲み干していた。

何だか得した気分になった。そんなことで少しとはいえ幸せになれるなんて、なんて単純なんだ。

この、2リットルという量、なかなか飲みきる人はいないらしく、なかなか減らない。しばらくは私のような鯨飲派の天下なのだが、夏期休暇前には総務が、できれば持って帰って欲しいと通達を出す。今年はテレワークが推奨されているから、ますます減りが遅くなるのは間違いない。

ちょっとした幸せな日々は、いつまで続くのか。楽しみでは、ある。

でも、本当の幸せは、この保存水を飲むことが無かったことだろう。つまり地震などの災害に遭わなかったことなのだと思いながら、確かに今の私は幸せなのだと噛みしめながら帰路についた。

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