流れ星
まだ千葉に住んでいた頃。長男が幼稚園くらいの頃だ。
その頃の休日の夜の習慣と言えば、長男にお話を聞かせながら一緒に寝るということだった。
長女は長男の3つ下で、抱っこで寝ることはなかったから、長男と一緒に寝転がって寝床で川の字になって寝始める。長女はさすがに言葉は分からなかっただろうから、子守唄のように私の作り話を聞いていたのだろうと思う。
私がこうやって子供たちを寝かしつけているあいだに、家内は食事の後片付けや掃除、洗濯などの家事をやってくれていた。
お話をすると言っても、こっちのほうが疲れて先に寝込んでしまい、長男から起こされて話の続きをねだられることも多々あった。
本当に小さい部屋で、布団を敷きつめてあり、窓ギリギリのところに枕を置いて、冬などは、頭が寒い寒いと言いながら寝ていた。
ある日、私がストーリーを繰り出して話をしていると、窓から外を眺めながら聞いていた長男が、こう、言った。
ほしが、うごいたよ。
最初は聴き間違いかと思っていたが、
ほら、うごいた。
2度目に言った時に、ふと我に帰った。
流星群だ。
私は話を途中でやめて、長男と、長女と一緒に、空をただじっと観察した。
すると、また、星が流れた。
長男に、
これ、流れ星って言うんだよ。
流れているあいだに、願い事をすると、神様がかなえてくれるって。
そう教えると、不思議そうに空を眺め続けていた。
布団の中から流星群を眺められるなんて、なんて贅沢なんだろうと、その時思った。
小さい部屋に布団を敷き詰めていて、子供達や家内には狭い思いをさせていたが、こういうことも、いい思い出なんだと、ふと、気付いた。
その後、仕事も忙しくなり、子供達も大きくなり、こういう特別な時間をなかなかとれなくなってしまった。
長男は、この日の流れ星の思い出をもとに、次女の名前をつけてくれた。だが、どうも、既に忘れてしまっているようだ。
次女には、いつか、この話を、してあげようと思っている。