怪我
長女が怪我をしたらしいと、長男から家内が聞いたという。連休前の週の月曜日のことである。
たまたま長男が我が家に帰省していて、長男には何でも相談する長女が、怪我して痛かったと話したらしい。
長女は、連休前の木曜日の夜に帰宅した。金曜日に昔の仲間と会うのだということだった。そして、金曜日の深夜に帰宅してきたのだが、そのキズがかなり痛むのだと言って傷口を家内と一緒に見た。
すると、かなり深く、そして切れ口が長い切り傷だった。
どうして言わなかったの?病院にも行かずに。
家内は、ちょっと責めるような口調で長女に言うと、
心配をかけたくなかったから……。
と、長女は気弱に言った。
私は、医者ではない。だが、何度か大きな怪我をしたりしたことがある。その経験から考えて、
それは、縫わねば治らないぞ。
そう、アドバイスした。
長女は、職場で片付けものをしていて、運んだ荷物の中に、たまたま、割れたビール瓶が混じっていたのだという。それが、ふくらはぎの上の方に触れ、切れたようなのだ。
翌日は土曜日。長女の自宅の近隣の整形外科をすぐに家内が調べると、朝10時から診療をやっているという。長女は、その日は遅番だったので、早めに出発して我が家の車で3人で自宅に送り、その足で診てもらうことに決めた。
翌日、家内が心配だというので病院に一緒に行った。そして、はじめて通うことになった病院の様子を私に報告してくれた。
年配の患者さんが多い。受付も看護師さんも、愛想も良いし、にこやかで患者さんに優しい。医院長先生は若先生がやっているようで、当日は先代のジイジ先生だった。また、この先生が面倒見が良さそうで、良い先生だった。週のうち、2日ほど診ているようで、看護師さんが「今日は、ジイジ先生よ」と、年配の患者さんに言うと、みんな喜んでいた。きっと丁寧に話を聞いてくれるし、患者さんに慕われているんだ、と。
ジイジ先生は、長女に言ったそうだ。
このキズは、放っておいたらくっつかないし、治らないよ。
そして、何針か縫ったそうだ。
私は、
何針ぬった?
と聞いたが、家内は、
忘れた。
と、こたえた。
そこ、肝心なところ!と、私は、心の中で家内を指さしてツッコんだ。
抗生物質が出た。きちんと飲むようにと言い、どんなに眠くても面倒でも、必ず通い続けるようにと長女には念を押して長女は出勤し、私と家内は帰宅した。
帰宅して暫くすると、長女から家内にLINEが入った。労災は、問題なく認められるらしい。
家内が言った。
入った会社が、ブラック企業でなくて良かった。
そして、
あの子、病院に行く気が無かったものね。たまたま帰宅して、無理やりにでも連れて行けて良かった。神様が、導いてくれたのね。
我が家は、家内も私も、過保護である。そして、長女は、過保護のカホコである。さらに、我が家の宗教は、恐らく、浄土真宗である。
長女を、神様、仏様、ご先祖様が、導いてくれたのだと思う。本当に、ありがとうございます。