イコール
私は、結構鈍くさい。俗に言う運動神経などは、人並み以上にあると思うのだが、何事かに集中していると、大切なことを忘れてしまうときがある。
小学生の時である。キャッチボールをしていた。団地の、中庭である。本当は、キャッチボールなどは、そこで、やってはいけない。それでもその禁を破り、やっていたのだ。
友人が投げたボールが少し外れ、階段の入り口付近に飛んでいった。私は、バックし、落下点に入ったが、ジャンプしなければ届かない高さに到達したので躊躇無くジャンプした。すると、脳天に激痛が走った。
何が起こったかと言うと、私は、ひさしの部分に、頭をぶつけたのである。ちょうど階段の入り口の、ギリギリ天井がある部分で、ジャンプし、見事に頭を天井にぶつけたのである。
目から星が出るというが、まさに、そんな感じだった。打ち付けたところに手をやると、切れて、血が出ていた。切れた傷口の長さは、5㎝よりも長く、10㎝よりは短い。 7㎝くらいだろうか。医者に行ったが、縫うほどでは無かった。傷は暫くすると完治した。
それから何ヶ月位してからだろう。学校の運動場で、これも、野球をしていたときだ。外野を守っていた。ホームラン性のあたりが来て、体育倉庫の方に球が飛んできた。この体育倉庫を超えると、ホームランになってしまう。当たりは、ギリギリの当たり。落下点に入った。これを取れば超ファインプレー。ヒーローだ。
そして、ジャンプした。
ゴン!
また、あの、キャッチボールをしていた時と同じだ。目から星が出た。
私がジャンプしたところは、体育倉庫のとびらの前の、ちょうど、ひさしのあるところだった。私は、頭が切れて血を流し、保健室に担ぎ込まれた。
その次の年。中学に入った。入学と同時に丸坊主にしたのだが、入学してしばらくして、私は、あることで人気者になった。
頭の傷が、坊主になると、露わになる。切り傷がふたつ。ちょうど同じような長さと太さ。きちんとズレずに上下に並んで平行線が引かれてある。それが、期せずして、最初のあだ名になった。
私のあだ名は、その日から、「イコール」に、なった。