日立ハイテクと連携!再生医療を加速する迅速無菌試験 共同研究スタート
本日2024年9月24日11時、株式会社日立ハイテク(以下、敬称略)および株式会社日立ハイテクサイエンス(以下、敬称略)との共同研究開始について合同プレスリリースしました。タイトルは「由風BIOと日立ハイテクグループが再生医療分野における『迅速無菌試験』技術に関する共同研究を開始」です。
👉https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000109925.html
日立ハイテクGr.は、日立Gr.の中核の1つで、医療検査装置の分野では業界トップレベルのシェアを誇っています。当社から見ると(国内一般企業から見ても)超大企業。合同プレスリリースとなるとその表現チェックが厳しく・・・共同研究そのものは今年7月から始めていたのですが、慎重に協議を重ねやっと一般公開に至りました。
その分、プレスリリース記載内容は、コミットメントに対する社会的意義も両社にとっての事業インパクトも大きいものになっています。本記事では、これらの点について当社視点から解説していきます。
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👉https://ecrowd.co.jp/projects/39
■結論
最初に、本共同研究から生まれる当社にとっての社会的意義、事業的価値を簡潔に列挙します。
■社会的意義
患者さんを待たせることなく安全な特定細胞加工物(以下、再生細胞薬)を提供できるようになります。特に、がん免疫再生医療のようにひっ迫した事例においては、すみやかに再生細胞薬を提供できるようにすることが、患者さんにとっても医療機関にとっても非常に重要です。
■事業インパクト
他社よりも「早く!美味い!」再生細胞薬を提供できるようになるため、競争優位性が生まれます。また、再生医療派生の利益事業である「品質支援事業」において、日立ハイテクとの検査事業の協業が開始され、事業スケールの拡大が期待できます(非常にボリューム大きなビジネスが生まれます!)
■背景
由風BIOメディカルは、2023年10月に厚生労働省から臨床医療に用いる再生医療用細胞薬の製造許認可を得て、医療機関を通じて患者さんに様々な症例に対応する再生細胞薬を提供することができます。
再生細胞薬の一般的な提供フローは次の通りです。
医療機関にて患者さんから細胞や血液等(以下、検体)を採取
物流事業者が検体を細胞培養加工工場(以下、当社)に輸送
当社にて検体から培養or/and加工によって再生細胞薬を製造
当社にて再生細胞薬の安全性試験を実施
物流事業者が再生細胞薬を医療機関に輸送
医療機関にて患者さんに再生細胞薬を投与
本日時点で「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(以下、再生医療安全確保法)」で必須項目として定められている安全性試験として、無菌試験、エンドトキシン試験、マイコプラズマ否定試験の3種類がありますが、今回の共同研究はこの中の「無菌試験」を掘り下げようというものです。
無菌試験:「再生細胞薬が無菌状態であること(菌が混入した状態で投与することは大変なリスクで医療事故に直結し得ます)」を確認する検査
エンドトキシン試験:「再生細胞薬に発熱性物質が含まれないこと」を確認する検査
マイコプラズマ否定試験:「再生細胞薬に風邪、肺炎、気管支炎等を引き起こす原因物質が含まれないこと」を確認する検査
先ほど再生医療安全確保法と書きました。医薬品製造に関係する法律は「薬機法(旧薬事法)」だろう?と思う方が多いと思いますが、日本は再生医療を世界に先駆けて産業化することを目的として、再生医療提供に関しては薬機法ではなく、「法改正を前提とする再生医療安全確保法という発展途上の法律」を作って運用しています。
法改正を前提とする発展途上の法律ということは、当然、薬機法よりかなり緩めで多様な解釈ができる内容になっています。先ほど挙げた安全性試験を例に挙げると、薬機法では「日本薬局方」という基準で指定された方法で厳格に行うことが必須です。但し、日本薬局方というのは日本国内のみ通用する基準であり、グローバルでの安全性試験は「GLP」という基準で指定された方法で厳格に行われています。
これに対し、再生医療安全確保法では必ずしも日本薬局方にもGLPにも準拠する必要はなく、簡易方法での試験でOKとなっています(これ、患者さんからしたらとても不安です)。
なお、日本薬局方とGLPはどちらが偉いというものではありません。但し、特に再生医療における無菌試験の運用に関しては、GLPがより実態に即した運用であると当社は考えています。
■再生医療における無菌試験の課題
過去記事「医療を支える!迅速・高感度免疫血清検査薬の必要性」で、診断医療における現状課題として「迅速性(早い!)と検査感度(美味い!)の両立できていないこと」にあると書きましたが、同様のことが再生医療の無菌試験でも課題になっています。
再生細胞薬の一般的な提供フローとして、細胞培養加工工場は、再生細胞薬を製造した後に安全性試験を実施し、問題ないことを確認してから再生細胞薬を出荷しなければなりません。安全性試験は、無菌試験、エンドトキシン試験、マイコプラズマ否定試験の3項目で、後者2項目は即日完了するのに対し、無菌試験は最短でも4~5日間を要します。
無菌試験の期間の長さが再生細胞薬の提供律速となっており、いちはやい再生細胞薬の投与を望まれる患者さんや医療機関にとって大きなストレスになっています。そして場合によっては症状の分岐点になってしまうケースもあります。しかし、当然ながら早ければ何でも良いわけではありません。菌を見逃してしまっては医療事故に繋がってしまうため、「早く、より高感度で、多種多様な菌種の有無を調べる」方法が必要です。
無菌試験の検査感度について説明します。
代表的な無菌試験方法として、「直接法」と「メンブレンフィルター法」とう方法があり、現在、多くの細胞培養加工施設において採用されてます。これらは薬機法で用いられる日本薬局方に記載のある方法であり、試験の必要十分条件を満たしているように思われがちです。しかし、一般的な自家再生医療(患者さんの検体から再生細胞薬を製造する再生医療)に対しては少し事情が異なってきます。
先ず直接法。再生細胞薬のような細胞懸濁液だと非常に視認し難く、検査精度(検査感度)が落ちてしまいます。また、抗生剤を含む再生細胞薬の場合、抗生剤の種類によっては直接法が適切とは言い難いケースが多々生じてしまいます。
そしてメンブレンフィルター法。この方法を用いるには大量の再生細胞薬のが必要です。自家再生医療の場合、患者さんの検体から再生細胞薬を製造するわけですから、一般的な医薬品のように大量生産できません。少量を前提とする再生医療では十分な検査感度が得られない場合があります。
次に、無菌試験で検査できる菌種について説明します。
日本薬局方に記載のある「直接法」と「メンブレンフィルター法」ですが、そもそも製造の開始から終了までを医薬品グレードの工場で扱われる製品を前提にした方法であるため、原則として「指定6菌種」と呼ばれる種類の菌種のみを検査対象としています。
一方、自家再生医療の場合、再生細胞薬の一般的な提供フローにあるように検体採取からスタートするため、指定6菌種以外の多種多様な菌種も混入してしまうリスクがあります。このため当社では、グローバルスタンダードのGLP基準に記載のある「ガス検知法」という多種多様な菌種を検出できる方法を採用してリスクの最小化を図っています(但し、無菌試験の迅速性に関する課題は残っています)。
■本共同研究の挑戦
本共同研究は、現状の無菌試験の課題の全てを解決し、正しく再生医療の「早い!美味い!」を実現しようという試みです。
日立ハイテクでは、かねてより「生物発光法」という方法を応用した微生物迅速検査装置「Lumione® BL3000(以下、BL3000)」を上梓しており、医薬品、医療部材、食品、飲料、化粧品をはじめとする多くの分野で測定実績を重ねています。
生物発光法は、その原理上、多種多様な菌種を極めて迅速、かつ高感度に検出することができます。しかし、検体や再生細胞薬に対しては、「細胞」が生物発光法の検出メカニズムと干渉してしまい、BL3000の特徴である迅速性や検出感度の高さを生かすことができていませんでした。
日立ハイテクと当社は、これまでに技術交流を重ねてきており、生物発光法で検体や再生細胞薬を測定する際に生じる技術課題を解決するための「専用試薬」と、「当該専用試薬のポテンシャルを最大限引き出すための計測プロトコル」について原理検証するに至っています。
今回の共同研究は、技術開発を原理検証フェーズからさらに数歩先に進め、実際の検体や再生細胞薬に対して専用試薬と計測プロトコルを最適化し、実運用に足る「早い!美味い!」な無菌試験として実用化するところまでを見据えています。
■社会的意義と事業インパクト
ここまでで、「無菌試験の早い!美味い!」が「再生医療提供の早い!美味い!」に直結することを説明してきましたが、これこそ、患者さんや医療機関が今の再生医療に求めているものです。
👉参考記事:再生医療産業で勝ち残る!プラットフォーマーとしての戦い方
様々な疾病を抱える患者さんの再生医療ニーズは非常に大きいものがあります。そして、疾病を抱える患者さんは少しでも早期にQoL向上を望まれていますし、このことは誰しもが想像し得ることだと思います。
特に当社の場合、再生細胞薬のラインナップの1つとして、国立研究開発法人理化学研究所(理研)の基礎研究と国の先進医療Bとして実施された千葉大学の技術をもとに理研発メディカルサイエンス企業である株式会社理研免疫再生医学が完成させた「NKT細胞標的治療:RIKEN-NKT®」というがん免疫再生医療を扱っています。この関係から、検体採取日からのいちはやい投与を望まれる患者さんや医療機関からの声が直接届いており、「早い!美味い!」の社会的意義を切実に実感しています。
このような社会的意義がある中で、医療機関は、「再生医療提供の早い!美味い!」を実現する企業と「一般的な再生医療提供」を続ける企業のどちらに、より多くの再生細胞薬製造を依頼したいでしょうか。多くのケースにおいて、前者をより優先することに妥当性があると考えられます。即ち、本共同研究は、当社の再生医療関連事業の競争優位性を高めることに繋がります。
また、プレスリリース本文中「本プロジェクトの概要」記載の「将来展望」記載の「検査事業における日立ハイテクグループと由風BIOの協業」という点が、当社にとってさらに大きな事業インパクトを生み出します。
当社は、再生医療派生事業として品質支援事業という事業を実施しています。この事業は、当社で内製化している再生細胞薬の無菌試験を含む安全性試験(設備およびノウハウ)を用いて、社外製品の安全性試験をも受託サービスとして引き受けていくというもので、現在、総合環境衛生企業の老舗である環境衛生薬品株式会社との業務提携を基軸に進めています。
既に多くの顧客様、顧客様候補がおり、品質や安全性がさらに厳格化されるであろう近い将来において、再生細胞薬製造以上の利益事業になると期待しています。この利益事業において、医療検査装置の分野では業界トップレベルのシェアを誇る日立ハイテクとの協業が生まれるのです!当社3事業の一つである体外医薬品開発関連とのシナジー創出もあり得るかもしれません。
日立ハイテクとの協業によって事業スケールの大幅拡大が期待されます。一方で今後、この利益事業を伸ばしていくことによって日本の再生医療産業の安全安心に貢献していきたいと考えており、身の引き締まる思いでいます。
■謝辞
再生細胞薬の安全性試験に関し、より充実した設備環境の整備と技術レベル向上に関する施策についてその社会的意義や事業的価値が評価され、令和6年度内閣府域外競争力強化促進事業(先進枠)の採択事業となっています。
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由風BIOメディカルでは、現在、イークラウド株式会社の第39号案件として株式投資型クラウドファンディングを公開しています。この記事執筆時点で、目標額の2倍以上(2,550万円)に到達!129人もの投資家様にご支援いただいておりますこと、大変感謝しております。
皆様の共感が事業推進の大きな原動力になります。申し込み締め切りは明日2024年9月25日22時までとなります。投資云々関係なく「こんな企業があるよ!」と、ご知人、ご友人、ご家族、SNS等で情報共有していただき、当社の活動を知っていただくだけでも励みになります!引き続きの応援をどうぞよろしくお願いいたします。
👉https://ecrowd.co.jp/projects/39
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