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無言館・戦没画学生慰霊美術館

 無言館とは第二次世界大戦で没した画学生の慰霊を目的とした長野県上田市にある美術館のことである。

 2023年7月16日(日)、三連休の真ん中(翌日が海の日で祝日)の朝早くに目覚め、せっかくなのでどこか遠出しようということで、少しでも涼しそうな長野方面をGoogleマップで眺めていたら、上田市にある「無言館」という目を引く名前の美術館を発見。調べてみると戦没画学生慰霊美術館という何か「強い想い」の込もった美術館であろうことを第六感で感じ、早速、東京→上田の新幹線のチケットを入手して世田谷の家を一人出発した。

 そもそも長野県上田市に来ることが初めてだったので、真田信繁(幸村)の父、真田昌幸によって築城されたという上田城を簡単に観光したあと、目的の無言館へ向かうことに。無言館へは交通系ICカードが使えない上田電鉄別所線の下之郷駅で下車後、シャトルバス(一日に5本くらい)に揺られながら田舎道のぶどう畑などを眺めているうちに到着した。無言館はそんな田舎で少し小高い丘の、慰霊美術館にふさわしい場所に建てられていた。

 目的の無言館の中に入ると、少し薄暗く涼しい建物の中にたくさんの絵画があった。絵画には、若い画学生が描いたことを思わせる青臭いものも多かったが、自画像や彼らの両親、兄弟、恋人、故郷の風景画など様々なものがあり、戦争の影が忍び寄る当時を生きた彼ら画学生にも、現代人と同じような日常があり、好きな人・場所・ものを慈しみながら毎日を生活していたことを想像することができた。そして、その画学生たちが、1日1日の価値を噛み締めながら、大好きな絵を精一杯描いたからこそ、戦後何十年と経た今まで、これらの絵が誰かに保存され続け、私の目の前に魂の込もった形で存在しているのだろうと感じた。
また、館には絵画だけでなく、画学生の遺品や手紙などが展示されており、ある学生の手記の中に、『人になんと言われようと、自分の信じた道を進むことが大切である』という内容のものがあった。これを読みながら、こういった真っ直ぐな想いを持った青年たちが戦争に散っていかなければならなかったこと、名もなき多くの人が自由に生きることができなかった時代があったことを忘れず、現代に生きる我々は能動的に平和を求めていくことが必要だと感じた。また、そのことを絵画といういかにも平和な手段で思い出させてくれるこの無言館のコンセプトには、直接的に戦争の悲惨さを伝えるよくある戦争資料館などにはない想いが込められていることを感じた。

 帰り際、無言館の近くの林からホトトギスの鳴き声が聞こえてきた。今年も南方からホトトギスが渡ってくる季節が来たなと思うと同時に、冥土に通う鳥とされるホトトギスが南方で亡くなった多くの画学生たちの分身ではないかと想いを馳せつつ無言館を後にした。

 なお、帰り道に、この無言館の設立の経緯を学ぶために「無言館 戦没画学生たちの青春(窪島誠一郎)」を読み、本当にたくさんの人の想いが集まってこの無言館があることを詳しく学ぶことができた。無言館設立に関わった全ての人に敬意と感謝の意を表したい。

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