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プラスティック・メモリーズは第1話を見ればオチまで分かる良作
サムネイル画像は公式サイトから
アニメ「プラスティック・メモリーズ(以下、プラメモ)」が好きだ。その理由は第1話を見た時点で大体のオチが分かるからだ。欠点のようにも見えるが、実はこれこそがプラメモを評価する最大の理由だったりする。
まず、プラメモの第1話を見てみようじゃないか。固有名詞を抜きにあらすじを説明すると、
この世界には人間と見分けがつかないほど精巧なアンドロイドが人間と共生している。しかし、アンドロイドには耐用年数があり、それを超えると不具合が出るので回収しなければならない。しかし、人と同じように生活するアンドロイドと別れるのは辛い。そのため、その別れを演出する組織があり、人間の主人公(男)はそこに配属される。そこでアンドロイドの少女と一緒に仕事をすることになる……。
この時点で「この後なんやかんやあって二人は好き合うようになり結ばれるが、アンドロイドの運命で結局は離れ離れになるパターン」という予想ができる。
だから、この段階で見るのをやめても良い。おそらく君のその予想は正しい。全13話。1話25分だから、残り約5時間。その時間を別のことに使っても良い。本作は評論家と呼ばれる人たちが高評価する作品ではないし、アニメ史を語る上で重要な作品でもないだろう。もっと「良質」と呼ばれる作品がいくらでもあるだろう。果たしてそんな状況で本作を見る必要はあるのだろうか。
ある。
私は「ある」と断言するタイプの人間だ。
それにあくまで予想は予想。まだ確定したわけではない。奇跡が起こってみんな幸せキャッキャウフフハッピーエンドになるかもしれない。
そんな幻想をプラメモは8話かけてぶっ壊す。
奇跡など起こらない。どれだけ愛し合っていようが、信頼があろうが、アンドロイドの運命は運命。逃れられない。
その現実を理解し、納得しきった主人公はどうするか。
そう、覚悟の扉を開くのである。
主人公は走り出す!
エンディングソングも流れちゃう!
穏やかだった主人公が! 覚悟を決めて!
ヒロインを探しに走る!
隣りにいた女の人が「しっかり、男の子」なんて言っちゃう!
エンディングソングもCパートに突入!
うおおおおおおおお!!!!!!!
そして、ラブコメが始まる。
来たるべき最終話に向けて、できるだけ悲しみを見せない恋愛物語が始まる。最終話で起こることが分かっているので、何気ない一言一言が染みてくる。主人公が覚悟完了したなら、見てるこちら側も覚悟完了する。
そして最終話を迎えるのである。
閑話休題。
ネタバレアンチの人にとっては衝撃かもしれないが、ネタバレされたほうが良いという人もいる。あらかじめ物語の筋をある程度知識としてもっておくことによって、理解が深まるという。私はネタバレアンチ派だがその気持ちは分からないでもない。同じ作品でも2周目の方が面白かったという経験があるからだ。
しかし、知識というのは得てして非可逆的なもので、一度知ってしまったものを忘れることは難しい。テストに出てくる知識はすぐ思い出せなくなるが、好きな作品のネタバレはいつまで記憶される。2周目の面白さを知ってはいるが、だからといって1周目の新鮮さを永遠に失うのは少し怖い。
そこでプラメモだ。第1話の時点で最終話の展開を知ることができるので、実質2周目みたいなものだ。オチを意識することによって、何気ない日常をより楽しむ事ができる。1周目の新鮮な面白さと2周目の展開が分かってるからこその面白さ、本来はありえないこの2つを一気に味わえる。それが第1話を見ればオチまで分かる良作、プラスティック・メモリーズだ。
この世は大コスパ時代。5分でおさらいする名作文学、10分で分かる名作映画、そういった文章・動画が粗製濫造される世の中。そんな世界であえて、要約すればすぐ終わる全13話を見る価値があるのではないか。そう思わせてくれる作品がここにある。
……とまあ、プラメモの魅力を語ってきたが、本作はいくつかの問題がある。最も深刻なのは設定の都合が良すぎることだ。アンドロイドに耐用年数があり、約9年しか保たないのは理解できる。しかし、それを超えると暴走して人間を襲うのはおかしい。なんでそんな危険なものが流通してるんだ……。この世界はこの物語を描くために存在している感がある。私は「まあ、そういう世界なら仕方ないよね。現実世界も理不尽なことあるし」と諦めてしまうタイプの人間なので、あまり気にならない。というより本作全体の流れを評価するため、気にしなかった。でも気になる人はいると思う。作り込まれた設定ではないことは、理解しておく必要がある。万人には勧められない。でも私は好き。