自分の自画像に自分で色を塗る
私の学生時代のお話です。
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そもそも私は、高校で「進路を選ぼう」ってなった時に、音楽の専門学校に行こうと思ったんです。
「音楽業界で働きたい!」
って目をキラキラさせながら、結構本気で親に相談したんですが、当時は鼻で笑われました。
私は、小学生の頃はバスケ部、中学時代は陸上部、ボール触れて走れるから、高校時代はその2つを活かしてハンドボール部と、もう運動しかしてなかったのもあります。
音楽に関して、何もしてないに等しかったのに、なんでイキナリ音楽なの?!
っていう驚きと、
親としては「そんな不安定な業界で果たして喰ってけるのか」という心配や懸念、これも当然あったと思います。
その時「現役の看護師」として働いてた母親が・・・
(※今も現役だった)
「看護師になるのはどう?」
と、提案してきたわけなんですよね。
いやいや看護師て。
待ってよお母さん、と。
私は別に、人のお世話とかに全然興味がない。
人の役に立ちたい、命に関わる仕事がしたい、なんて思ったこともない。
なんで「看護師」なんだと。
この時、看護師の先輩としての母親の発言は、こうでした。
「自分のしたいことができるから、生きたいように生きれるから、
看護師に、まずなってみなさい。」
もうわけがわからない。
わけがわからないけど、家出する勇気も、音楽の専門学校に行くお金もない。
で、泣く泣く専門学校に入学したわけです。
入学前も、未練たらたらで音楽学校の資料を毎日眺めて過ごし、看護学校の資料も入試科目にもまるで興味はなくて、適当に受験して、なんとなく受かって・・・
最低レベルの「意識低い系」新入生が誕生しました
学校の勉強自体は、成績を取ることは必要なことだからと思って、それなりに一生懸命やってましたが、
ついに試練がやってきます。
言わずもがな、実習です。
最初は必死で、絶対に記録とか勉強とかで徹夜、みたいなことに陥らないように、自分を「省エネモード」から逸脱させないように、必死でコントロールしてましたが、周りの意識・環境が、どんどん自分とかけ離れていきます。
最低限の省エネモードで切り抜けられる状況じゃない。
むしろ、努力してないことがダサい、みたいな環境になっていく。
同じ実習グループの仲間は、
「私この処置を経験したいです!気管内吸引の清潔操作をいっぱい練習してきたので、やらせてください!」と、
実習で手を挙げて申し出ます。
みんなで「経験項目」を取り合いする。
そして、どんどん経験していく。
そんなある日、先生に呼び出されます。
「ちょっと、経験項目に全然チェック入ってないけど、やる気ある?」
絶望。
本気になってないの、私だけなのかも。
唯一私だけが、マジじゃないのかも。
もう流して流して、こなしてこなして、卒業すればいいや、って思ってたのに・・・
3年生の、最高学年のど頭に、ガツンとやられたわけです。
本気にならないと、自分にも仲間にも、患者さんにも、指導者さんにも、
全員に対して失礼じゃないか。
そして何より、「ダサい」じゃないか・・・
そんな風に感じて、全ての自信を失います。
そんな時、当時流行っていた、Mr.Childrenの「シフクノオト」というアルバムの中の、「Any」という曲に出会いました。
今僕のいる場所が 探してたのと違っても
間違いじゃない 答えはきっと一つじゃない
何度も手を加えた
汚れた自画像に ほら
また12色の心で
好きな背景を描き足していく
この曲を聴いて、
「あぁ、こういうことだったんだ・・・」と。
ポロポロと、涙が出ました。
「今の居場所が気に入って無くても」
「思ってたのと違っても」
「答えは一つとは限らないし」
「自分で自分の色を、どんどん上から描き足せばいいから」
って言われた気がしたんです。
しかも、自分の「心」で描き足そうよ、って。
これって。
感情とか意識とか気の持ちようで、不正解も正解に出来るし、間違いの中に正しさを見つけられるし、絶望の中に希望を持てるんじゃないかと。
とりあえず、思ってたのと違う場所でも、
息を吸って、前に進んでみよう、と思えたんです。
見事に、息を吹き返した瞬間でした。
音楽の専門学校に進学したかった私が、めちゃくちゃ大衆音楽のJ−POPに心を救われた、という皮肉。
でもそこからは・・・
今この瞬間の、目の前の出来事に「マジ」になろう。
本気で、真剣に向き合おう、と考えるようになりました。
些細な出来事も、人との出会いも、患者さんの言葉も、怖い指導者も優しい指導者も、果てしない調べ物も、記録も、寝不足も、全部「意味がある」と思えるようになりました。
というか、目の前に起こった現実とか事実、現象を、
「意味のあるものにしよう」と思った、のほうが近い。
「自分のしたいことができるから、生きたいように生きれるから、
看護師に、まずなってみなさい。」
その言葉の真意を、今噛み締めながら生きてます。
「看護師という資格をフル使いして幸せになろうよ」っていう、過去の動画でも語ってはいますが・・・
看護師という職業で得られる経験
対人関係能力
ベーシックインカム
場所とか土地を選ばない資格の強さ
そういうものを軸にして、基盤にして、その上にどんどん自分のアイデンティティ・活動・「色」を重ねていく。
それが、結婚や出産の人も居るし
海外留学の人もいるし
一旦看護師を離れて別の職業に就く人もいるし
私の学生時代の友人には、完全に看護師をやめてキッチンカーとかはじめた同級生も居るし
プロのスノーボーダーもいる。
私も1色1色と、自分にしか塗れない色彩感覚で、色を塗り足していけたらいいな、と思ってます。
Nバク
※2020.10.21「Nラジ」より抜粋