闘う人の引き際と高みを見た日(2023年11月12日、DDTを観戦して思ったこと)
ビッグマッチの名に相応しい1日だった。
オープニングからタッグのタイトルマッチで、創作昔話の語り部アントーニオ本多選手への声援で、会場の空気がしっかりあったまる。
時間差タッグランブルは、若さあふれる面子が飛びまくり、ベテランの搦め手が光り、見ていてとても楽しい試合だった。
東京女子プロレス提供試合はキラキラまぶしく、かつスリーパーホールドやサソリ固めといった技の見せ場もきっちりあって眼福。荒井優希選手が頼もしく見えた。
スペシャル8人タッグマッチは、急遽ルール変更で土下座フォールマッチに。ルールを提案した側の彰人選手は、ディーノ選手に愛犬ハクくんの寂しさを語り(大石選手によるハク役の名演技?つき)、なかなかに的確な精神的攻撃を仕掛ける。しかしディーノ選手側の方が一枚、いや数枚上手だった……何と言っても「提案と暴力」の高いプレゼンスキルを持つスーパー・ササダンゴ・マシン選手がいる。中継カメラを誘導し、川松選手(何と議員さんである)と「戦う」(ここはそう表現させてもらう)ディーノ選手を映し、このまま続けていいのかと大社長・高木選手に迫る。まさに暴力的提案の現場で、目が離せなかった。
続いてはイケメンこと黒潮TOKYOジャパン選手と正田壮史選手のスペシャルマッチ。黒潮選手はTAJIRI選手の著書「戦争とプロレス」に出ていた人だ〜、と実物を見られて私は感激していた。入場曲をフルに使ってアピールする姿は一生忘れないレベルのインパクトで、この後数日間は「HELLO」が脳内リフレインした程である。ジャケットを脱がないファイトスタイルも面白かった。
6人タッグマッチはDDT vs VOODOO-MURDERS。全日本プロレスの斉藤ブラザーズが見れる! 彼らも「戦争とプロレス」に出ていたので、初めて見るのになぜか懐かしささえ感じてしまった(「戦争とプロレス」を3回読んだからだろうか)。とにかく大きい。HARASHIMA選手が小柄に見えてしまうくらい大きい。納谷選手とのバチバチな絡みは今後も続きそうなので、非常に楽しみだ。
佐々木大輔選手と遠藤哲哉選手の浅からぬ縁がわかる映像が流れ、スペシャルシングルマッチの幕が上がる。遠藤選手の見事に仕上がった筋肉や、佐々木選手がセコンドの介入を制する一瞬など、見所満載な一戦だった。
そして赤井沙希選手の引退試合へ……。
Eruptionの絆も、プロレスラーの全力投球ぶりも、何もかも美しかった。対する丸藤選手、樋口選手、山下実優選手も、何の遠慮もなく全力でぶつかっていく。山下選手と赤井選手が対峙した時、坂口選手が男性陣を制して最後のステージを整えた姿には胸を打たれた。山下選手がスカルキックを決めた後、赤井選手の前髪を直してあげていた場面はすごく萌えた。
赤井選手引退セレモニーの余韻も冷めやらぬ中、試合はまだまだ続く。
ついに来た高橋ヒロム vs 平田一喜!
面白すぎる!
DDTワールド(というより、平田一喜選手の世界?)に全力で乗っかり、翻弄されながらも、ヒロム選手は笑いの絶えない試合を展開していく。「TOKYO GO」を踊り切ってから、かつてと同じスープレックスを平田選手に決めて見事勝利。
アイアンマンヘビーメタル級のベルトを巡る一騒動を経て、同ベルトの呪いから解放されたヒロム選手だったが、花道で待ち構えていたのはディーノ選手。リップロックされたまま退場するその時までたっぷり楽しませてくれる最高の演出だった。
DDT UNIVERSAL選手権試合は、ノーDQマッチで進行。体格差をものともせず、レフェリー・ヨシヒコ登板の波乱を制し、MAO選手が新チャンピオンになった。マット・カルドナ選手もステフさんもまた来てほしいなあ。
宴もたけなわ感のある中、とうとうクリス・ジェリコ選手が登場!
入場曲の大合唱を受けて現れたジェリコ選手は本当にかっこいい。
若さとパワーなら確かにTAKESHITA選手が有利ではあるけれど、技術や間のとり方や求心力でこんなにも試合のペースをさらっていくのかと、プロレスを極め続ける人の戦法を見た気がした。
メインイベントに至る頃にはかなり魂が抜けそうになっていたが、クリス・ブルックス vs 上野勇希のKO-D無差別級選手権試合もすさまじかった。場外、入場ゲートの上から背面跳びする上野選手には心底驚いた。ギリギリまでどっちに転ぶかわからない攻防の果て、上野選手が新王者となった。
あぁ、楽しかった。面白かった。すごかった。まだ続きがありそうだから、また観たい。そう思った試合だった。
さて、次はどんな試合を観られるかな。
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