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Reading Record #6 Sep. 2024

2024年9月に読んだ、8作品を紹介します。

*注意していますが、ネタバレも含みます。


45. 自由に捕らわれる。

著:カンザキイオリ
出版年:2024
出版社:河出書房新社

琥太郎は、歳の離れた姿夜の「友達」。親も学校の先生も教えてくれない日常のルールを教えてくれ、自由からかけ離れた生活をする手助けをしてくれました。しかし年明け、姿夜は、琥太郎の自宅にて、琥太郎の死体を発見します。大切な存在が突如としていなくなってしまったことで、自由に捕らわれてしまった姿夜。そんな中、先輩の美生心が、琥太郎の死の真相を明かす手伝いをしてくれると言います。家族内での葛藤、知られたくなかった真実、そして知りたくなかった真実。自由に救いはあるのか。
私は普段、本を買いません。記事で紹介している今までの作品は全て、図書館で借りて読んだ作品です。しかし、この作品は、私が実際に書店で買って読みました。私はもともと著者の音楽が大好きで、「推し」の一人でもあります。そのため、『あの夏が飽和する。』『親愛なるあなたへ』そして『自由に捕らわれる。』の3作品とも、買って自分の手元に置いています。
万人向けの物語とは言い難いです。暗い。暗いのです。しかし、こんな奴らが生きているんだから、私だって生きてていいだろう、そんな風に感じさせてくれる物語でもあります。著者の重い文章が、心にずっしりとのしかかり、読み応えのある作品で、私は大好きです。


46. 光

著:三浦しをん
出版年:2008
出版社:集英社

信之の故郷は、美しい景観を持つ、美浜島です。しかしある日、美浜島は被災し、生き残ったのは、たったの5人になってしまいました。信之、恋人の美花、年下の輔、輔に虐待をする輔の父親、そして美花に目をつける観光客。信之は、絶望に打ちひしがれます。
数年後、信之は、美花とは違う女性と結婚し、幸せな家庭を築いていました。しかし、美浜島にて隠された過去が、再び明らかにされつつあることに気が付きます。信之は、すれ違い、悩んだその先に、光を掴むことができるのでしょうか。最初の大事件が起きた際には、思わず「え?」と疑ってしまいました。以前に読んだ『神去なあなあ日常』とは全く雰囲気が異なり、現実離れしているようにも感じたからです。しかし、それは、「起こってしまった悲劇」であり、私がとやかく言える事情ではないのだと、後から気がつきました。現実でも、そんな悲劇が、いや、それよりも酷い悲劇が、日常的に起きてしまっているのです。


47. キネマの神様

著:原田マハ
出版年:2011
出版社:文春文庫

自らが進めていたシネコン計画から外され、有名企業の課長という地位を捨てて退職する決意をした主人公の円山歩。ひょんなことから、伝統ある映画雑誌『映友』のライターとして再び仕事を得ることになりました。しかし、『映友』の売り上げは下降傾向、このままでは生活が成り行きません。そんな時、歩の父が趣味として書き上げていた映画記録を『映友』のブログにアップすることになりました。キネマの神様に捧ぐ、映画ブログです。謎のローズ・バッドとの出会いもあり、歩の周りの歯車は再び動き出します。
著者の作品の主人公には、強い女性が多いですが、今回も例に外れず、強い女性が輝くような仕組みになっています。マンネリ化した強さではなく、キラキラとした新しさすらも感じさせる登場人物たちのキャラクターに、思わず惚れてしまいます。映画とは、ここまで興奮させてくれるものなのかと、発見のある物語でした。裏表紙には、「“映画の神様”が壊れかけた家族を救う、奇跡の物語」とありますが、まさにその通りです。そしてその家族というのは、歩の家族だけではないのです。私も、名画座にて映画を鑑賞したいと感じさせてくれました。


48. スター

著:朝井リョウ
出版年:2020
出版社:朝日新聞出版

名映画監督への登竜門となる、伝統的な映画祭でグランプリを受賞した、立原尚吾、そして大土井紘。お互いに足りないものを補い合う関係であったものの、卒業後は全く違う道を通って、映画監督になるという夢を追い続けることになります。尚吾が名映画監督に監督補助として弟子入りする一方で、紘はYouTubeの動画撮影を担当するのです。お互いが相手の環境に嫉妬しながら仕事を続ける中で、あるとき、時代と共に彷彿としてきた「心」の問題に気がつきます。新時代の「スター」を目指して腐心する二人、そして周りの人々。彼らを嘲笑うかのように時代が変化して行く中で、本当の価値とは何なのか。
帰結がわからないように書かれる、というより、この物語におけるハッピーエンドが何かが明確でなくなるように書かれることで、読者自身に帰結を考えさせるように書かれている物語だと言えると思います。私にとってそれは、不快であり、そして快感でした。著者が疑問に思っていること、世間でもてはやされ、いつの間にか常識になってしまっていることに対して、議を唱える作品で、ビジネスを考えるためにも読んでもらいたい作品です。


49. 落日

著:湊かなえ
出版年:2019
出版社:角川春樹事務所

映画監督・長谷部香は、幼い頃から虐待に近いしつけを受けており、勉強ができずにベランダに出されることもしばしば。そして、隣の家のベランダにも、小さな指先がのぞいていることに気が付きます。いつしか2人は、心を通じ合わせていました。しかし数年後、隣の族は、世間を揺るがす大事件の中心になってしまいます。兄が妹と両親を殺害したのです。
メディアにおける妹の語られ方に違和感を得た香は、事件の真相を明かし、それを映画化することを決意しました。脚本執筆を頼んだのは、故郷を同じくする新人脚本家・甲斐真尋。2人が交わった先には、ある壮絶で、それでいてちょっと温かい、隠されていた過去がありました。
著者の作品には暗い雰囲気が漂っているような気がしていて、著者の本は今まであまり読んで来ませんでした。読んだ作品は『告白』『少女』くらいだと思います。しかし、『告白』も面白かった印象があるのに、なぜハマらなかったのでしょうか。図書館に行った際には、一作品ずつ借りて読もうと思います。


50. アメリカの高校生が読んでいる経済の教科書

著:山岡道男・淺野忠克
出版年:2008
出版社:アスペクト

経済学部に入ろうとしていたくらい、経済学には受験期から興味がありました。(関心の軸は環境問題なのですが、環境問題を考えるためには経済が障害になっています。矛盾をどうにかしたいと考えています。また、ビジネスや企業にも目を向けています。)東京外国語大学にも経済の授業があるため、履修しようとしたのですが、必修と重なってしまったり、他に興味がある授業と重なってしまったり。結果的に、1年生のうちに経済学に触れることができなくなってしまうため、この作品を読みました。
2008年に出版されたということで、内容はかなり古くなっています。ただ、経済学での基本的な用語や概念を掴むためには、十分だと感じました。これを入門書として、様々な経済学の参考書を読んでいきたいと思います。


51. 大人のための会話の全技術

著:齋藤孝
出版年:2015
出版社:KADOKAWA

大学生になって、バイトやボランティアなどで、年齢関わらず人と話すことが増えました。間を持たすためだけの会話だけでなく、自分のためになる会話がしたいと思い、読んだ作品です。
いいことが書いてあった気がするのですが、これを書いている2024年12月現在、あまり内容を覚えていません。もったいないことをしました。


52. 小説 星を追う子ども

原著:新海誠
著:あきさかあさひ
出版年:2017
出版社:角川文庫

忙しい母を持つアスナの前にある日、アガルタという未知のところから来たシュンと名乗る少年があらわれます。心を通わせた二人ですが、その幸せは突然に消えてしまいました。シュンとうり二つの弟シンと、亡き妻との再会を望むアスナの教師モリサキとともに、アスナはアガルタへの扉を開く旅にでます。
感動する話が読みたいな、と思いながら、図書館で文庫本の棚を見あさっていた時に見つけた作品です。フィクションで、そんな奇跡があるはずがないというような論理展開でありますが、こんな物語もあってよいよな、と思えるような、素敵な作品でした。一つのものをきっかけとして結末まで紡いでいくような、そんな雰囲気でした。


まとめ

9月は以上の8作品を読みました。
休みの割には、遊びや集中講義の影響もあり、あまり読めませんでした。しかし良い作品と出会えたため、大満足です。
今月は、現代の風潮について考えさせられるような作品を多く読んだ印象です。

今月のベストブックは、『光』『キネマの神様』『スター』の6冊です。ベストブックと称しつつ、つい多くの作品を挙げてしまいましたが、悪しからず。

それでは、またね。

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