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003:盾になってくれる兄が欲しかった

 私は親を憎んでいる。

 特に父親は、私にだけ暴力をふるった。
 3人きょうだいだったけれど、私だけが何もかも許されなかった。

 私の人生がゴミになることが確定したのは、大学進学と就職活動の頃だと思う。
 大学選びと就職活動の時、この時期に限って酷くなった父の暴力に私は耐えていた。
 それで私はものすごく心が傷ついてしまい、人生で大切なこの2つの決断を病んでいる時にすることになる。

 おかげさまで、両親を心の底から憎み続ける実家暮らし無職引きこもりになった。

 大学を卒業してから10年近く経つ。
 大学進学の頃私のやりたいことを応援してくれていたら……。
 就職活動の時に、私のことを励ましながら応援してくれていたら……。
 私が選び取る人生を肯定してくれる人が家庭内にひとりでもいてくれたら……。
 こんなことにはなっていなかったんじゃないかなって、そう思い続けている。
 10年近く、同じことを思い続けている。

 子供の頃、私の代わりに暴力を引き受けてくれるお兄ちゃんが欲しかった。
 優しくて、私のことを大切にしてくれて、どんな時でも味方になってくれるお兄ちゃんが欲しかった。

 だけど私の前にきょうだいが増えることはなかった。
 後ろに2人誕生しただけだった。期待外れなことばかり起こる。

 私が盾になったので、下のきょうだいは私ほど酷い目にはあっていない。それどころか、子供の頃から長女である私がどれほどゴミか私にわからせるために、引き合いに出されて褒められていたので、普通の人間に育った。
 2人とも公務員になって、妹は子供が2人いて育休を3年近く取得しているし、弟は良い職場で気楽に働けていて羨ましい。

 下のきょうだいの誰かが、私の盾になってくれたらよかったのに。
 そしたら私は普通の人間になれたのに。
 そしたら私は、死にたいと思いながら、死ねない自分を憎みながら生きなくても済んだのに。

 特に妹は、私のことを馬鹿だと思っている。
 父親の逆らい暴力を受ける馬鹿だと。
 そして自分は私の姿を見てうまく立ち回ったと思っている。きょうだい喧嘩のときに、私の主張が一切聞かれていなかったことに、気がついていない。

 こんなに恨みつらみを書いたって、誰も読まないし誰もわかってくれないよな。
 知ってるよ。私は親にとってもいらない人間だったんだから、見ず知らずの他人からしてみればさらにいらない存在で、どこかにいたとしても、私の代わりなんていくらでもいるから。

 書いていて悲しくなってきた。
 高校生の頃から改善されなかった自傷行為を、書きながら3回やった。腕が痛い。

 毎日書いていたら何か変わるだろうか。

 私は親を捨て、奴らが寝たきりになったら舞い戻り、今までの復讐がしたい。
 私が弱く小さい子供であった時に暴力を受けたように、親が老いて腰の曲がった老人になった時に暴力を振るいたい。

 おしっこ漏らしたら殴るし、食べ物をこぼしたら怒鳴るからな。
 私に気に入らないことを言ってみろ。酷いからな。

 でもそれまで長いんだよ。親はまだピンピンしてる。

 じゃあそれまでに私は親に滅茶苦茶にされた自分の人生を、元に戻さなくちゃいけなくて。でも私のようなゴミに何ができるのか全然わかんないんだよ。

 支えがほしいっていうのは甘えなのだろうか。
 大人は、信じられるものが何もなくても、味方になってくれるひとが生きてきたなかで誰もいなくても、親が全く愛情をくれない子供時代を過ごしても、歯を食いしばって独りの力で立っているのだろうか。

 この世にひとりぼっちでも、自分ひとりだけで生きているのだろうか。

 助けてほしい。支えがほしい。安心できる場所がほしい。

 何からすればいいんだろう。何の自信もない。

 とりあえず貯金はまだあるから、このいじけた心を何とかしたいんだけど、何をしようか。

 自分の好きなことに一生懸命になってみたい。
 私の好きで一生懸命になれることって何だろう。まだその情熱があった時に否定されすぎて忘れた。

 忘れたくなかったはずなのに。心を守るために忘れちゃった。

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