えいご
朝のファーストフード店の二階、毎日のルーティンでブラックコーヒーをすすり、新聞を読む。
二階の席はあまり人がいない。この出勤前のひとときが、何より大事だ。
私が英語を始めようとしたきっかけはこの場所だった。
その日の朝も、ファーストフード店にいて、ふと新聞から目をそらし、顔を上げたら、長髪の白髪混じり、ボサボサ頭のいかにも路上で生活している感じの60歳くらいの男性が階段から上がってきた。
足取りは重く、古びたコートを羽織り、荷物がやたらと多い
よく言えば、仙人。悪く言えば、ルンペン。
その人はコーヒーを片手に席に座った。
私は珍しいなと思い、また新聞に目をおとし、その時はそれだけで記憶の片隅に残し、店を後にした。
しばらく日が経ち、またある朝、いつものファーストフード店でコーヒーを飲みながら、新聞を読んでいた。
ひと段落して、軽く伸びをしていたら、あの男性が店の片隅に座っているのが視野に入った。
私は男性を見ながら、お金はあるんだな、と呟いた。
男性は新聞か何かを凝視していた。ここからは良く見えない
あれは新聞なのか。新聞だったら、いつの新聞だろうか、大昔の新聞かもしれない。
私は、店を出る為に帰り支度をして、好奇心のあまり、男性の近くに歩みより男性の読んでいる新聞をさりげなく見た。
それは英字新聞だった。
私はこの男性と英字新聞のギャップが目に焼き付き、一瞬立ち止まってしまった。
私はこのシチュエーションにやられてしまったのだ。
男性が英字新聞を理解しているのか、英語をわかっているのか分からないかは、関係がなかった。
その取り合わせに私は痺れてしまった
そしてその日から私は英語を始めようと思いたったのだった。
いつの日か英字新聞を読めるようになり、あの男性の姿を自身の姿にはめこむ為、今はひたすら英単語を暗記している今日この頃だった。