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睡眠武装と登校拒否

実家に住む母からLINEが来た。

最近LINEを始めた母の打ち間違えがひどくてついついツイートをしてしまった。
なんのためらいもなくついついツイートなんて書いてしまったことが少し恥ずかしい。

話を戻そう。






睡眠武装勢力にならないようー


これはまぁ普通に考えれば睡眠不足にならないようにーの打ち間違いだ。
だから「ははは」と笑い飛ばせばいいのだが少し回想をしてしまった。その前に母の話をしていて「ははは」となんのためらいもなく書いてしまったことが少し恥ずかしい。

話を戻そう。



睡眠武装勢力ってなんやねん。とひとりごちてみたもののこの睡眠武装勢力ってどんな状態かなとか考えてしまった。


睡眠武装とは。






すると一つの記憶に辿りついた。
学校に行きたくない。布団にくるまって家から出たくない。

中学2年の時、そんな時期があった。


忘れかけていた細い細い糸をたぐりよせてしまったのだ。



中学2年の時、全てが嫌になっていた。
中学生の多感な時期だから。そんな言葉で済ませられるかもしれないが、それじゃその頃の自分がかわいそうだから精一杯のフォローをするならば、自分が嫌いで、自分の無力さが嫌いで何もできないと考えていた。



中学のクラスは13人。


田舎だから1クラスしかない。

部活は男子は剣道。女子はバレーボール。

決定権などない。
強制的に僕らは剣道をさせられた。

でも僕は違った。

平日は剣道。土日は野球だった。

クラブチームに所属していたため土日だけ野球に行っていた。

僕以外にもあと二人が学校の部活をしていなかった。

一人はタカくん。

タカくんも僕と同じで平日だけ剣道をして土日だけ僕と同じクラブチームで野球に参加していた。



もう一人がマサくん。

マサくんは部活はおろか学校にもまともに来ていなかった。
勉強も運動も苦手なマサくんは小学生の頃から登校拒否気味になり中学になると本格的に学校にこなくなった。


タカは野球の才能があった。体格も大きく足も早くてパワーもある。
クラブチームでは先輩が出る試合にも参加させてもらっていた。
一方、僕は背が低く体力がない。
同じ地域に住みがならも差は歴然としていた。自分が比べなくても周りから比べられることが多かった。



僕は次第に野球が苦痛以外の何物でもなくなっていた。
好きで始めていたと思っていたものが目的がわからなくなっていた。
体力もなければ実力もない。何をやらせてもチームの中で下から数えた方が早かった。僕は次第に自分で自分を諦めるようになっていた。

そんな風に思うからチームメイトともうまく喋れなかった。実力がない。それは自分の価値がないというのを決定づけるのに至極当然の理由だった。


しかし、学校に行くと周りの人はそんなことを知るよしもなかった。
あいつは剣道がしたくないからって好きな野球をしていてずるい。そういうことを度々言われた。タカくんも同じように言われることがあったがタカくんは冗談半分で返していた。タカくんには余裕があって僕にはなかった。


学校と野球。

生きる世界が二つあったのに、僕はどちらの世界にも居場所がなかった。

僕には二人の兄がいる。二人とも野球をしていたから家に帰ればこの二人とも比べられることが多かった。
野球。学校。家。どこにも居場所がなかった。



中学2年になって野球をやめた。


学校と野球。

この二つの世界のうちの一つを放棄した。
僕はのほほんと過ごす同級生のような生活に憧れていた。
家に帰ればゲームをして、時々みんなと自転車に乗って隣町まで繰り出す。そんな普通の世界に憧れていた。


しかし、だからと言ってそんなにすぐに受け入れてもらえるわけがなかった。
いじめられたわけじゃなかったが学校の同級生とのの壁はひしひしと伝わってきた。


僕は学校を休みがちになった。


週に二、三回ほど休んで週の半ばぐらいから出席する。


僕がたまに学校に行くと珍しがられるようになった。



結局それが1ヶ月続くか続かないかで僕はまともに学校に行くようになった。


それは父の一言がきっかけだった。








「お前、明日は学校行けよ。このままじゃマサくんみたいになるぞ。」







リビングを出るときに父にそう言われた。

僕は胸を締め付けられる感覚になった。




嫌だった。マサくんと同じになるのは嫌だった。

勉強も運動もできない。なんの取り柄もないと思っていたマサくんと同じ扱いを受けるわけにはいかなかった。



次の日から学校に行くようになった。







結局のところ、僕が学校に行くきっかけになったのはマサくんみたいにはなりたくなかったからだ。

野球をしていて自分より下を見つけれなかった自分が学校という世界で自分より下の存在を見つけたのだ。そして自分より下と思っていた人が周りから見たら同レベルと思われていることに気付いたのだ。





自分より下を見て自分の位置が安全な場所であることを確認する。


自分より上を見て自分の不幸さを慰める。





僕はこのとき身をもって自分の醜さを知り、大半の人はそれに近い行動をしていると思った。





優しさとは何か。


僕は時々優しいと言われる。しかしその正体はしっている。

人が僕のことを見た場合、多くは優しさではなく「気遣い」と部類されるものだ。


本当の優しさとは何か。


時々そういうことを考える。





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