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置いてきた想い出は

先日、何年かぶりにカラオケに行った。

(昔なんてっていう言い方はおっさんくさくて憚られるが)昔なんて20時ぐらいから翌朝の閉店時間まで友人と二人で歌ったこともあった。しかし年々カラオケに行く機会は減り、気づいたら数年ぶりのカラオケになっていた。


車の中ではいつも全力で歌っているし、歌うということに抵抗はなかったのだが、人前で歌うということにはなんとも言えない気恥ずかしさがあった。

歌の技量はもちろん、選曲のセンス、選曲の順番、一緒に行った友人に見定められているような感覚が小っ恥ずかしくもあり、楽しくもあった。


ある曲を入れた時のことだった。一緒に行った友人から「なんかこのアーティストって君野くんの声質に似ているね」と言われた。

確かに声質のタイプで言えば似ているかもしれないなと自分でも腑に落ちる部分があった。


僕はその曲にある思い入れがあった。


高校を卒業した時に何度も何度も歌ったHYの「てがみ」という歌だ。


僕は高校2年の時に初めて彼女ができた。1歳年下の子だった。

1年半付き合ったが、卒業をして地元を離れた僕は4月になって彼女と別れた。


別れた理由は会えない辛さとかいった類のものではなく、ただ新生活の環境の変化に対応するのがやっとで言い換えれば浮かれていただけだった。

バカみたいな理由だが、毎日欠かさず連絡をしていた彼女に連絡をするのが面倒になったのだ。


別に他に好きな子ができたわけでもないけれど、地元で生活を送っている彼女に対してなんだか鈍臭い、田舎くさい時間が流れているような気がした。


そんな僕の雰囲気を察してか、彼女が今後のことについて話を切り出して、僕は別れようと答えた。

僕は別れるの意味がよく分かっていないまま別れた。初めて付き合った彼女。言葉の上では別れの意味を理解していたつもりだったが、それがどういうことかまでは理解していなかった。


別れてから1週間後に彼女から連絡が来た。その内容はある友人に告白されて付き合うかもしれないというものだった。

当てつけのようにもとれる行動だが、僕はその時初めて別れの意味を知った。今まで心の支えになっていた人が誰かのものになってしまうということ。


1歳年下の彼女に対して、時々上からモノを言うこともあった。彼女に対して子どもだなと感じることもあったし、自分のモノという感覚もあったけど、それは僕の勘違いだということに気づいた。彼女にも当然自分の意思があって、もっと尊重すべきだったとようやく気づいた。



僕はもう一度やり直してほしいという思いがあった。本当に身勝手なことだがひたすら後悔をした。


そして自分の気持ちを正直に伝えるために彼女に手紙を書いた。

便箋を買って封筒を買って素直な気持ちをしたためた。


その後、彼女は新しい人とは付き合わなかったらしいが、僕とヨリを戻すこともなかった。

彼女曰く、別れた後より、別れる直前の付き合っている時の方が辛かったということだった。その言葉が一番辛かったのを覚えている。



僕はこのHYの「てがみ」を聴くたび、当時のそんな甘酸っぱい記憶を回想して懐かしくもなったり、少しばかり優しい気持ちにもなったりする。

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