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友達と比較しちゃうのは悪いこと?

「隣の芝生は青く見える」
この言葉を幾度となく耳にし、「人は人、自分は自分」なのだと言い聞かせるが、心から理解することが難しい。

小さなプライドが高いせいなのか、私はよく友達と比べて落ち込んでしまう。自分の目標に専念しようと何度も決意するが、友人の近況を耳にするたびにソワソワとどこか比較し、憂鬱な気分に陥ってしまう。

目標に向かい突き進む志が弱いことも大いに指摘できるが、ここでは心理学の立場からこのモヤモヤとした感情を分析し整理してみたい。学部で少し勉強した以下「自己評価維持モデル(SEM)」を用いて過去の経験を踏まえ考察していくこととする。

この自己評価維持モデルは、自己評価に脅威を与える他者の遂行をどう処理し、自己の感覚をどう高めるのかをモデル化したもので、課題が自己定義にどの程度重要であるかという関与度 (relevance)、他者と比較した遂行の結果である遂行レベル (perceived performance)、他者との心理的な近さを示す心理的距離(closeness) の 3 つの変数が自己評価に影響を及ぼしている。

池田安世(2013)自己評価維持モデルにおけるメンテナンス・フリー傾向の検討
京都教育大学教育実践研究紀要,14,127-136.

なんだか難しく分かりにくいが、かみ砕けば、「環境や状況に左右される自己評価は、以下3つの他者による影響から説明できる」と言えそうだ。

  • 課題の関与度 (relevance)

  • 他者の遂行レベル (perceived performance)

  • 他者との心理的距離 (closeness)

まだまだ分かりにくいが、この3つの影響をそれぞれ個人的な状況と絡めて考えたい。

1.課題の関与度 (relevance)

まずは課題の関与度について。これは自分の持つ課題が相手とどれほど重なっているかということだ。自分の土俵が相手と同じまたは近いほど比較をし、自己評価に影響を与えるといえるだろう。

私の場合、高校時代同じ大学を目指し勉強していた友達にはライバル意識を持ち比較し劣等感を感じることが多かった。一方、スポーツ推薦枠を狙い別の大学を目指す友人には全くライバル意識を抱かなかった。それは考える間もなく当たり前の感情発生だったが、改めて「課題の関与」ということが自分の人生に明確に影響していたことが分かる。

2.他者の遂行レベル (perceived performance)

次は他者の遂行レベルについて。ここでは1の課題の関与度が高い場合を想定する。相手と同じ土俵に立っている場合、相手と自分との進捗差が自己評価に影響するという。

これも過去を振り返ってみると、思い当たる状況がある。私は高校時代部活動を行っていたが、そのチームで初心者として一緒に始めた仲間の上達具合をかなり気にしてしまっていた。私の方が上達が早ければ安心し、仲間が急に上達すると焦りだし、追い抜かれると自己肯定感が大きく下がった。負けるものかと食らいつくこともあったが、差が開くと悔しながら諦めモードに入った当時の感情が思い出される。相手と自分の進捗差によって一喜一憂し、自己評価が変化するというのも、経験から自然と納得できる。

3.他者との心理的距離 (closeness)

3つ目は、心理的距離について。先の1,2で十分な感じもするが、あと1つの影響を考えたい。これは相手と年齢や経歴、容姿などが近いほど自己評価に影響を及ぼすということだろう。

私は大学時代韓国語の勉強に力を入れ行っており、一緒に留学した友人や留学済みの知り合いとはどこかでライバル意識を持っていた気がする。だが、会ったこともない俳優やアイドルが職業の為韓国語を習得している姿をインターネット上で見ても特に私の自己評価には影響しなかった。これは心理的な距離が遠いことが1つ影響していたのだろう。

私たちの比較感情は当たり前で、複雑

ここまでの考察から、私たちが誰かと比べて優越感や劣等感を感じることは当たり前だと言えるだろう。なにも「私の性格の悪さのせいではない」と言われたようで少し安心する。

だが、私たちの比較感情はもう少し厄介だ。例えば、友達と同じ課題を持っているように見え、心理的に近い距離にいながら、相手の成功を心から喜べる人が存在するようだからだ。この天使のような人は一体何なのだろうか。この複雑性についてはまた今度、同じ「自己評価維持モデル(SEM)」を深堀りして考えることにしたい。



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