外国人労働者や留学生による国内犯罪に送り出し国からの保険や賠償を求める制度構築についての提言。

はじめに

日本では外国人労働者や留学生による犯罪被害者に対して、特定の保証制度は存在していないため、日本人と同様に「犯罪被害者等給付金制度」が適用されます。この制度は、日本国内に住所がある外国人も対象となり、犯罪による負傷や死亡に対して、被害者や遺族に補償金を支給します。たとえば、重度の障害を負った場合には最大約4000万円の給付が受けられることもあります。

犯罪被害者等給付金制度は、犯罪によって生活に影響を受けた被害者の医療費や収入損失を補填するものです。また、犯人が不明な場合でも仮給付金が支給されるケースもあり、これは迅速に支援が行われるための措置です。しかし、これは日本政府の予算に基づくものであり、被害者が加害者から直接賠償を受ける仕組みとは異なります。

一方、シンガポールなどの国々では外国人犯罪者による被害の補償に関してより厳格な責任を追求する手法が取られている場合もあります。シンガポールの制度は特に厳しい法執行と外国人労働者への契約義務を徹底しており、雇用主もある程度責任を負うことが一般的です。

日本での外国人犯罪の被害補償強化には、犯罪を犯した外国人が所属する国や雇用主に賠償責任を負わせる国際協定の導入が考えられます。送り出し国と被害国間で犯罪被害に対する相互保障の契約を設け、例えば本国での保証機関や自治体が賠償を代行し、被害者に支払われる仕組みを作ることが検討されます。このような協定は、犯罪被害者に対する保障の拡充と同時に、外国人労働者がより慎重に法を守るよう促す効果が期待されます   。
以下にさらに詳しくまとめます。

提言概要

1. 二国間賠償協定の締結
      •   日本と技術研修生や留学生の送り出し国の間で、犯罪被害者への賠償を保証する協定を結ぶことを提案します。この協定により、送り出し国の自治体や関係機関が保証人となり、研修生や留学生が犯罪を犯した場合には、被害者へ賠償が行われる仕組みを整備します。
      •   シンガポールでは、被害者への賠償を裁判所が直接命令できる制度があり（刑事訴訟法400条）、同様の枠組みを日・外国間で適用できるようにすることで、迅速な賠償が可能になります 。
2. 被害者補償基金の設立
      •   シンガポールには、特定のケースにおいて国家が被害者補償を行う仕組みがあります。このような国家による被害者補償基金を日本でも導入し、外国人の研修生や留学生による犯罪に対する補償が迅速に行われるようにします。この基金は、送り出し国からの拠出金をもとに運営し、犯罪によって被害を受けた場合には、まずこの基金から支払い、後に犯人から回収を行います。
3. 賠償責任保険の義務化
      •   技術研修生や留学生に対し、来日前に賠償責任保険の加入を義務付けることを提案します。この保険は、送り出し国の政府や関連団体が負担し、もし日本で犯罪を起こした場合には、この保険によって被害者に補償が行われるようにします。シンガポールでも、特定の保険が市民と外国人を対象に義務付けられていることがあり、このような保険を通じて賠償金の確保が可能です 。
4. 法的および外交的連携の強化
      •   この制度を円滑に運用するためには、送り出し国との法的・外交的な協力が必要です。日本は特に多くの外国人労働者や留学生を受け入れている国と国際的な協定を結び、犯罪者の母国においても賠償義務を履行できるようにすることが重要です。シンガポールの厳格な法執行体制と同様に、日本も国際協力の枠組みを活用することで、賠償回収を実現します。
5. 実行可能な契約書と法改正
      •   日本に入国する際、技術研修生や留学生には、犯罪発生時の責任と賠償義務について明示的に同意する契約書を交わすことを義務化します。さらに、これを強制執行可能にするための法律改正も検討します。送り出し国との合意に基づいた契約で、賠償金の支払いを確実にする仕組みを整備します。

まとめ

このような制度は、日本国内の治安維持と被害者の迅速な救済に貢献すると期待されます。また、シンガポールの法制度を参考にすることで、外国人労働者や留学生の犯罪対策として、強固な国際的連携を基盤とした補償体制が構築されることが望まれます。