震災と実穂ちゃんの発生

胆振東部地震に被災された皆様へ心よりお見舞い申し上げます。

かくいう私も一応北海道民で、被災した人間というくくりに入る。めちゃくちゃ大きい揺れが来て、トン単位で本が詰まった本棚が5センチ程ずれ、猫はビビり、二日間停電と電波不良でTwitterが見られなかった。停電が直ってから冷蔵庫を開けると、大きなパックで買って食べるのを楽しみにしていた杏仁豆腐は腐り、毎日のようにレンチンして食べていた冷凍から揚げも食べられるような状態ではなかった。だがいまいち、被災したという大げさな言葉に実感は沸かない。
今回の震災で、と職場の電話口で言うたび、あの大きな揺れが遠い事のように感じる。私にとってあの地震は先に上げた程度の被害を引き起こしただけで、震災と言うほどのものではなかったからだ。
それで余計な出費が出来たり、飲まなくて済んでいた精神安定剤を再開することにはなったが、所詮そのレベルだ。二度と我が家に住めなくなったわけでも、知り合いが死んだわけでもない。遠くに住む父に大丈夫か聞いたら、夢だと思って寝ていたと返ってきた。私の身の回りの認識は、本当にその程度だ。

今もたびたび揺れているが、今日も元気だな~ぐらいの感覚になってしまった。本棚のずれはどうしようもないからそのままにしてある。普通に仕事はあるし、休みの日はTwitterとnoteだ。コンビニの品ぞろえはちょっと悪いが、昼飯のおにぎりぐらいは置いてある。
もちろん、被害が大きかった人の存在も忘れていない。仕事で、液状化現象の被害で家にもう住めなくなってしまった人とも接している。職場のシャンデリアやグラスが割れていたのを掃除もした。

正直、わからないのだ。

こんな文を書いていても所詮は成人もしていないガキだ。物分かりは悪い。その上鬱の気もある。何にもわからない。テレビでいくら被災状況を見ても、余震がずっと続いていても、自分に出来ることなんてない。
これからどうなるのかなんて、そんなの地震が来る前から分かっていなかった。「不安」というものに長く向き合ってきたから、少しは知っているつもりだが、考えたってどうしようもないものは忘れるのが早い。見なかったことにして蓋をして、そのまま忘れるか、何年か経った頃にそんな事もあったなぁと思い出すぐらいが良い「不安」との付き合い方だと思う。
本震が来るだの、停電するだの、そう言った事に気を取られている暇は私にはない。好きな人と絵と文に囲まれて、楽しく仕事をして、それで精一杯なのだ。

だからもうこの話はこれで終わりだ。今後一切地震の話には触れないように。

さて、今回は実穂ちゃんの話だ。

実穂ちゃんは今さっき生まれた。ここでも度々名前が挙がっている「さよならジュブナイル」というオムニバスの中の一本、ねじれの位置を執筆中に突然生まれた。それまではどこにも存在しなかった、金髪ツインテ女子高生だ。

私は基本的にプロットを書けない。最終的にこうなる作品を書きたい、というところから出発するため、書き始めた時点ではキャラクターの性格や、どんな経験をしてきたか、また細かな登場人物なども全然決まっていない。この先どうなるのか、それは私が一番知りたい。

実穂ちゃんには最初、名前が無かった。クラスでも目立つ可愛い女の子。派手でカースト最上位。男子から人気はあるけど決して媚びたりはしなくて、周りの女子の面倒見も良いためたいてい嫌われない。世渡り上手で教師から一定の信頼はあるが、化粧は怒られようと絶対にばっちり決めるしスカートも三回は巻く。そんな中で自然に、この子を実穂ちゃんと呼ぶようになった。
私にとって実穂ちゃんは、ありったけの可愛いの化身だ。登場シーンでは下校中のメインキャラを教室の窓から身を乗り出して、大声で呼び止める。急いで赤いリップを塗り直し、友人を連れて教室からダッシュで玄関まで下りて、磨いた茶色のローファーを立ったまま履く。可愛い。
そして過去にはそのメインキャラ、白鷺と何かあったようだが……という話は本編では深く掘り下げない。多分ね。

私が描くメインキャラはたいていひどい目に合う。これはもう証が無い事だと思って、諦めてほしい。だから実穂ちゃんをフォーカスした話は書けないと思う。実穂ちゃんには幸せになってほしい。あまりよく知らないけれど、多分家でもうまくいってて、女子大に行って好き勝手遊びまくって、給料がいい企業にそう苦労せず就職が決まり、良い人と結婚して子供を産むんだろう。そうなってほしい。願うだけなら、彼女の将来を決めなくて済むから。

実穂ちゃんは考えるより先に手が出るタイプで、それが彼女の唯一とも言っていい欠点だった。本気でやるような真似はしないし、大抵が照れ隠しだから可愛いものなのだが。
授業はあんまり真面目に聞いていない。周りの女の子と喋ったり、ペンポーチの影でスマホをいじったりしている。大きめのマスクをつけて居眠りしていることも多い。テスト前になれば勉強会と称して友達の家でお泊りをするけれど、勉強はほとんどしない。平均点ギリギリの点数でいつも何とか乗り切っているのに、評定はオール三を取っている。
コスメはいろんなものを持っている。プチプラから韓国、デパコスのクリスマスコフレなど。その中から使うものを適切に選び出し、季節と気分とシチュエーションにあった、一番かわいいメイクをしてくる。

こう書いていると本当に実穂ちゃんと言う友達が居るような気がしてくる。実際、実穂ちゃんは私が見てきた女の子たちの好きの結晶のような子だから、身近に感じるのも無理はない。好きなものをありったけ。いつもお金が足りない!と言いながらも友人たちとカラオケやマックやスタバに行く。キラキラした女子高生。私がもう見失ってしまった女の子。

何度も言うが、実穂ちゃんは絶対に幸せになる女の子だ。それにいつも一番かわいいを追求し続けるから、金髪も明日ピンクに変わっているかもしれない。カラコンもするし、服装の雰囲気も流行と自分をすり合わせて変えていく。だから、決まった立ち絵は描けない。

当初の予定ではもう少し尖っていたやつが、別のキャラと合わせると丸くなったりする。書いている途中で、あれ意外とこいつ不器用だなと分かったり、そうじゃないだろ~!とツッコミを入れたくなることをしでかしてみたり、様々だ。
最初からプロットをちゃんと決めれば、もっと面白い話が描けるのかもしれないし、こんなに時間がかかることもないのだとは思う。けれど、この行き当たりばったりが楽しいし、その方がキャラクターに愛着がわく、気がする。

創作、楽しいよ。

無理な金額は自重してね。貰ったお金は多分お昼ご飯になります。