玉坂汐音という存在#1

彼女が生まれた時のことを、私はよく覚えていない。

たしか、中学2年生の時だったような気がする。中2は、それはそれは楽しい1年だった。前年からジャニーズに傾倒していたおかげでクラスの明るいメンバーとも共通の話題ができ、部活動や元々の交友関係ではオタクな自分をさらけ出し、そういった中庸の立ち位置から、クラスのどこへでもアクセスが良いポジションを手に入れた1年。クラスの中心に臆せず入れるようなリーダーシップのある子が、気が付けば私の親友となっていた。親友というのは、二人組を組める子のこと。数学の先生が「a+b」を「えーぷらすぶー」と噛み、それがツボに入り一人でいつまでも笑っていた私を見て、笑ってくれた子だった。

玉坂汐音、たまさかしおね、という存在が生まれたのは、そんな時だった。

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