伯母のはなし。
父方の祖母の体調が芳しくない。
とうとう食事の飲み込みもうまくできなくなり、食べるものはミキサーにかけたようなとろっとしたものしか口にできなくなったそうだ。
もともと祖母は、30年ほどまえに脳梗塞を起こし、右半身が不自由だったたのだが、5年ほど前までは意識もはっきりしていて、身の回りのことはわりかし自分で行えていた。
そんな祖母の生活を支えていたのは、父の姉である、わたしの伯母だ。
伯母は祖母が病気になって以来、30年以上身の回りのことや、家事全般を担ってきた。
今回はその伯母についての話をする。
伯母は祖母が病気になる以前は、都会で働いていたらしい。
そんな伯母は、祖母が病気をし、生活がままならぬものになったことにより、仕事を辞めて故郷に帰ってきた。
それが、およそ30年ほど前のこと。
そこから、伯母は外で仕事を持つことなく、結婚もせず、全ての時間を家族に捧げてきた。
長い長い時間の中で、たくさんのことがあった。
伯母から見て弟であるわたしの父や、叔父が結婚し、子どもが生まれた。
祖父は不慮の事故で寝たきりになり、介護が必要となった。
親戚で醜く揉め、関係性が悪化。
祖父の死。
祖母の体調の悪化。
それを伯母は乗り越えてきた。
実のところ、わたしはこの人が苦手で、最近は少し距離をとっているのだけれども、幼い頃はとてもお世話になった。
幼い頃は「なんで、この人は結婚しないんだろう?」と考えていたけれども、今考えると、結婚することさえできなかったのだ。
今回、祖母が体調を崩し入院をしたことにより、伯母は今後の身の振り方を考えたらしい。
「ばあちゃんが死んだら、本当にひとりになるんよね」
という言葉がとても重く、辛い気持ちになった。
今まで祖母の年金で生活をしていたが、祖母が亡くなると、生活の糧を失う。
もう60才に近い伯母が今から仕事を見つけることは難しいだろう。
父や叔父の世話になる可能性もあるけれども、人ひとりを養っていく余裕は、我が家にもあちらにもないはず。
こうなるまで、現実を見ずに、全てを伯母に任せていたことに、とてつもない後悔が襲ってくる。
伯母が自活するのを誰かが手助けしなかったんだろうか。
なぜ、父も叔父もすべてを伯母に任せて、涼しい顔をして自分だけ幸せになったんだろう。
きっと伯母自身にも責任はある。
だが、あの環境の中で、仕事を探し、ひとりで自立を考える余裕はどれだけあっただろうか。
そして、祖母を亡くした後の伯母はどうなるんだろう。
やはり、姪のわたしたちが手を差し伸べるべきだと思うのだけれども、近くに住んでおらず、仲もあまり良くないわたしにはどうするのが正しいのかよくわからない。
正直、今、身内全員がとても混乱していて、わたしもどう発言しようかも考えあぐねている。
環境がそうさせた、伯母の人生。
介護が原因で社会から切り離された人は、きっと多いだろうけど、その後の受け皿というものはあるのか。