初めて患者に注射を打つ看護師との遭遇~恐怖は言葉によって与えられる~
みなさんは人生において何らかの恐怖の体験をしたことがあるだろうか?
わたしはある。
今日はその恐怖体験の話を1つ。
娘を帝王切開で出産して2日後、その日の正午はどん曇りでこれから雨でも降りそうだな、なんて思いながら私はあることを待っていた。
そう、採血。
わたしは元々血液のヘモグロビンだか血小板だか何だかが平均より少ないらしく、ある程度その値が良くならないと退院予定日が伸びてしまうと。
結果的に退院日はギリギリ伸びず(見たこと無いくらい鮮やかな深紅の錠剤をたくさんもらった)、6日間の入院生活での採血はトータル3回くらいで済んだ。
採血。
わたしは注射が苦手なので採血なんてもっとキライ。
「もういい大人なんだから怖がってたら恥ずかしいぞ!」と言ってくる自分もいるのだけれどそんなことより「よくわからん恐怖」の方がはるかに大きいので、毎度毎度恥ずかしげもなく打たれる方の腕を反対の手で強くつねって注射の痛みを相殺させようとするくらいなのだ。
しかも。しかも、である。
採血したことのある人だったらお分かりのように
針が太い!!!!!!
恐怖も相まって超太く見える!怖い~~~
それで話を最初に戻すと、帝王切開後の採血。
腹を切った痛みと2時間おきの夜間授乳でヘロヘロの状態で待っていた採血の時間、おのてらさ~んお加減はどうですか~!と退院までわたしの担当をしてくれる看護師さんの声がしてサッと開けたカーテンの向こうにもう一人見るからにフレッシュ♪明らかに新人☆そうな見知らぬ看護師が見え、
担当「今日は新人の○○さんが採血を担当してもいいですか?」
と。
良いわけないだろッッッ!!!!!!
と瞬間的に思ったけどたかが採血にそんなワガママクレーマーみたいなことは言えない。
顔じゅうの筋肉を総動員して笑顔を作り「いいですよ~」と言葉を振り絞った。マジでほめた、自分を。
この時のわたしはまだ、ここから人生で一番怖い採血の時間を経験することになるとは思ってもいなかった。
その新人看護師さんは最初に丁寧に自分の名前を名乗り、丁寧に必要な医療機器を準備し、ベテランの看護師と比較すれば拙さが垣間見えながらもしっかりしていた。
採血をするとき最初になんかよくわからんゴムの紐?で肘から上をぎゅっと縛る。
ここまでは全く問題なく『新人』という言葉に異様にビビっていた自分を恥じ、心の中で○○さんを疑ってごめんなさいと謝った。
ここまでは。
そしていざ採血、血をとるぞ!という時にベテランが言った
「○○さん(新人看護師)、これが初めての採血なので痛かったり違和感を感じたらすぐに教えてくださいね」
どわぁああああああああ!!!
やめてくれぇぇぇえええ
初めてだってこと先に言えやぁあぁぁぁあああ、こちらサイドにだって心の準備ってもんがあるんだよぉぉぉぉおおお
あっただろうが!心の準備の時間がわたしにも!!!
最初の初めましての挨拶からこの瞬間までたかが数分、されど数分あっただろうがよォ~~~
と心で絶叫したが、見てくれは大人である。
大人なんだから我慢くらいできる。ので、めちゃくちゃ平静を装った。超。
わたしは強い、と言い聞かせて
「何事も初めてを経験して上達していきますからねぇ~」
なんて訳の分からないクソ変態野郎みたいな気持ち悪いことを口走りながらおとなしく差し出している左腕の二の腕の裏側を反対の右手で渾身の力でつねる。
(もうこの恐怖には痛みにはより超強い痛みを作戦で乗り切るしか道はなかった)
そして新人看護師がこれから採血の針を刺す血管を探し始め
「血管がわかりやすいですね」と。
自慢じゃないが自分でも血管はわかりやす方側の人間だなと思っているくらいなのだ。
その言葉にほんのり安心したが恐怖のピークはここからが本番だった。
まさか針を刺そうとピトッと肌に針をそわせた瞬間、新人看護師の口から
「こ、こわい…こわい。」
どわぁああああああああ!!!
デ、デタ―――――!!!
ヤメロヤメロヤメロォ~~~~まじでヤメテ~~~!!!
君がそれ言っちゃダメよダメダメェ~~~
しかも2回もコワイって言わないで~~~
怖いのこっち!
え?ヤバない???超怖いんですけどぉ~ムリ~♡
この採血にて心中での絶叫2回目。
ベテラン看護師が一旦針を納めるように新人に指示し
「大丈夫、落ち着いて。そして怖いって患者さんの前で絶対言ったらダメ。」
からの
「おのてらさん、もう一回お願いしてもいいですか?」
「(もうさ、こうやって人に針ぶっさす怖さと素直に向き合ってるこれからたくさんの命を救うであろう看護師にダメとか嫌ってって言えるわけなくない?
たかが採血でさ。
そんな彼女の恐怖に比べたらわたしの恐怖なんて糞喰らえだ…どわぁああああああああこええよぉおお~最初に言っておこう。患者の前で怖いって言ったらあかんことを!!!)
もちろん大丈夫ですよ!怖いですよね針さすのって!
わたし痛いの大丈夫なんでどんどん刺してください!!!」
こっちはヤケのクソモードに突入である。
そうさ!何事も初めてを経験して上達していきますからね~ぇ!!!
正直超怖いが仕方ねぇ。
早くこの時間が終われ!!!
万が一に何かあっても大丈夫、ここは病院。しかもデカいタイプの大病院だ。
どうにでもなれ!!!
で、省略しますがこの後も新人看護師は小声で「コワイ」を1~2回くらい言いながらも針をぶっ刺すことに成功☆だがしかし見事に空振り☆血は取れず☆
ベテラン看護師にバトンタッチして採血は一瞬で終わりました!
太い針を刺すか刺さないかの瞬間に「コワイ」ってつぶやかれる恐怖は34年間のうちで1位2位を争うくらい怖かったかもしれん。
もしあの時の新人看護師がツイ廃で初めての採血のことを気にしてたらかわいそうだな、と思ってこれまで書くのはやめておいたけどもうあれから2年くらい経つしここに成仏させておこうと思い立った次第である。
怖い。恐い。コワイ、こわい。
恐怖って色々と種類があるけど言葉で与えられる恐怖ってこんなに怖いのか!と思った貴重な経験。
ありがとう、あの日の新人看護師さん。
元気にしていますか?
わたしは元気です。
P.S.
コロナで医療従事者の方々の負担が心身ともにとても大きいと思います。
早くこの大変なウイルスの騒動が収束しますように。
わたしも手洗いうがいなどできることはして重症化しないように気を付けて過ごしていきます。
どうぞゆっくり休める日は休んで無理なくお過ごしください。
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