Killers of the Flower Moon (邦題:キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン、2023)
1920年代のオクラホマ州オーセージを舞台にした実話に基づく歴史サスペンス?長編(3時間22分!)映画です。非常に内容が厳しく辛い映画ですが、長いとは感じませんでした。しかしとても見ているのが辛くなる映画です。
監督はマーティン・スコセッシ。主演はレオナルド・ディカプリオ。共演はロバート・デ・ニーロ、リリー・グラッドストーン
アメリカ原住民居住区のオーセージで石油が発見され、豊かになった原住民の富を狙って白人たちが原住民の女性の婚姻を結んだあと次々に殺めていく、という恐ろしい実話が元になっています。牛飼い事業で地元の名士的なヘイルが、その甥っ子たちに財産目当てにアメリカ原住民の女性と結婚させ次々に殺害していくのですが、残酷な描写もあり3時間半かーなり辛い映画です。映画としてどうかと言われると、まず話がヤバすぎてそれどころではありませんでした(泣
凄いなと思ったのは当時を再現している様子やインディアン女性の衣装の美しさ、そして頭の弱そうな悪いダメ男を演じるディカプリオの演技力です。たぶんオッペンハイマーと来年はオスカー対決になるのでしょうねー。なんと一つも取れませんでした。アメリカの恥部である原爆を扱ったオッペンハイマーが7部門を(やんわりした表現で)とったのと対象的です。比較はできませんがアメリカ原住民の問題はそれだけタブーということでしょうか。
第96回アカデミー賞で過去最多タイの10部門にノミネート(!)される快挙も、受賞はなく…とくにモリー役のグラッドストーンはアカデミー賞にノミネートされた初のアメリカ先住民女優となりましたが、エマ・ストーンが受賞したことで「原住民を無視した」と批判が出たといいます。
映画の元になっている実話ですが、映画では人間味もあるように描かれてはいても、土地を奪おうとしした人たちは根っからの悪党だったようです。ディカプリオ演じるアーネストは、この事件の後の仮釈放中に強盗を働いて再び逮捕されています。
牛飼いウィリアム・ヘイル 役はロバート・デ・ニーロが演じています。
実物はゾッとするような顔の人に見えますが、殺したと思われるのは少なくとも9人、計画していたり未遂で終わった映画の主人公をふくめ最低数人がいるということで、関連する保険金詐欺などの犯罪と合わせて無期懲役となっています。
当時捜査したFBI特別捜査官トム・ホワイトは、 1932年にFBI長官J・エドガー・フーバーに宛てたメモに次のように書いています。
いろいろ恐ろしすぎるのでこのへんで。。。お好きな方は↓に詳細あります😵💫
この恐ろしい役を演じたデ・ニーロさんですが、齡80にしてまた新たな伝説を作ってしまったかな、という感じです。
オーセージ・インディアン殺害事件
これらの事件では警察の腐敗などもあり、後に国と訴訟になっています。
ただ、アメリカでは原住民の問題はあまりに大きすぎる罪・問題で「無視する」というのが長年の大前提で黒人他の「権利・平等」の時代になってもタブーな話題なようで、アカデミー賞を撮れなかった以外でも批判・風当たりが予想されていたようです。
責任を自分一人で引き受けたスコセッシ
映画の最後の部分で、事件のその後についてスコセッシ自信が演じるアナウンサーが、この物語の主人公であり犠牲者のモリーが亡くなったニュースを読み上げます。これは事件のおぞましい最後について他の俳優に追わせるべきではない、と自分で演じることにしたのだとか。
ラジオから流れるニュースという形を取ることで、その時代の人達が数あるニュースの1つとして、「消費」して忘れ去られた、というのを風刺しているという評論もありました。スコセッシはイタリア系移民の子でありアメリカの闇を見て来たからなのでしょうか、アメリカ全体が罪をおうべきと言いたげに見えました。 スコセッシ、すごすぎます。