さざえ 笑い
幼い頃食べたさざえは、苦くて磯臭く、とても食べることが出来なかった。
長じてから、ある日母と兄貴が出かけて、串物を買ってきた。「これ何?」と聞いても「まあ食べてみろ」とニコニコ笑いながら言う。焼き鳥が好きな兄貴のことだから、いつも行く焼き肉屋が外でやっている焼き鳥だろう、と思って食べてみたら苦いがうまい。
「どこの部位?これが肝ってやつ?」
そう聞く私に兄貴はニコニコしながら、
「サザエだよ、美味いだろう」そう言った。
「美味しい!こんなに美味しいんだね!」
「お前も大人になったんだよ…」
さざえの寿司食べたい。
さて本日は我が家にとっては厄日である。私が中学時代に死んだ、クソ親父の誕生日。日付を見て、気持ちが落ち込んだ。
母は電話で『一年に一度だから、何かあげておいて』そう言ったが、私ははっきり「嫌だ!一年だろうが十年だろうが百年だろうが、嫌なもんは嫌だ!」そう言った。
嫌な事は忘れるのがいいのだが、忘れられない事もある、いや、嫌な事だから忘れられないのである…。
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