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自分のやりたいを見つける・言葉にする vol.2【講座レポート】

「自分らしい仕事を見つけ、つくること」を応援する、MyWork わたしの仕事プロジェクトの第3回目となる講座は、「自分のやりたいを見つける・言葉にする2」です。2023年11月22日、鳥取市内は青空が広がる小春日和。暖かな陽射しの中、参加した受講生は、会場参加6人、リモート参加5名(アーカイブ視聴含)のみなさんです。

今回の講師は、前回に引き続きMyWork わたしの仕事プロジェクトの企画運営を担う合同会社cocoto代表の佐々木 よしみさん。そして、特別ゲストとして、AOI TYO Holdings株式会社 代表取締役 グループCEO 中江 康人さんにお越しいただきました。講座の前半は、中江さんによる講義、後半は佐々木さん主導でワークに取り組みます。

ひと言で表すと「誠実さ」

ーー経営で最も大切なことーー

まずは、中江さんの講義からスタート。佐々木さんが起業する際、そして起業後もメンターとてバックアップを続ける中江さん。「軸を立てる」と題して、「会社とは何か」、そして「会社に必要な要素とは何か」について、熱く語ってくださいました!

鳥取市出身の中江さんは、1991年に葵プロモーションに入社し、CMプロデューサーとして活躍後、AOI Pro. 代表取締役社長を経て、国内大手の広告制作企業であるAOI TYO Holdings 代表取締役グループCEOに就任。「万引き家族」をはじめ世の中に強いインパクトを残す作品を多く送り出し、同時に公益社団法人スペシャルオリンピクス日本副理事長として活動するなど、社会貢献にも力を入れていらっしゃいます。

まずは、「会社とは何か」について基本的な知識の説明からお話がスタートしました。受講生は、これから始める事業の「所有者(出資者)」であり、一方でお菓子やパン、絵本販売など専門性を持つ経営者でもあります。経営者として最初にやるべきことは、「経営のフレームワーク」です。

フレームワークで定義するのは、「WHY なぜ社会に存在するのか?(パーパス)」「WHAT 何を行うべきか」「WHERE どこを目指すか?」「HOW どのように実現するか?」「WHO 誰に対して責任があるのか?」の5つ。

中江さん:定義づけされていない会社はただの箱にすぎません。会社に生命をインストールする作業がフレームワークだと思っています。定義づけすることで会社が動き始めます。

そして、定義づけを行う際に意識すべきなのが、「ステークホルダーへの配慮」です。ステークホルダーとは、顧客、従業員、取引先、環境、コミュニティーなど事業に関わるすべての人やものを指します。

中江さん:みなさんは、社会的課題への「思い」を持って事業を始めようとしていますよね。やはり「思い」が一番大切だと思っています。「自分の会社のステークホルダーは誰だろう?」と考えてリストアップしてみてください。

ここで中江さんが例にあげたのは、佐々木さんの合同会社cocotoのこと。

中江さん:cocotoには、働く女性や子育て中の人をふくめ、あらゆる世代の人を応援したり、体にいい食べ物を提供したりと、多くの人が共感する「思い」があります。その思いに対して「それは、いけんで」(鳥取の方言で、「それは、良くない」の意)という人は、まずいませんよね。社会課題を解決しようとしていて、ステークホルダーへの配慮をきちんとしようとしている会社には、支援してくれる人がいっぱい現れるんです。

講義を通して中江さんが強調したのは、「パーパスとバリューという軸をしっかりと立てる」ことでした。バリューは、自らの持つ価値や価値観のこと。パーパスとは、価値と社会のニーズの重なり合う部分であり、会社の存在意義です。

中江さん:社会の変化するスピードが早く、それに合わせて事業内容も変わっていくと思います。でも事業を進める上で、自らが持つ本質的な価値を変えてはダメなんです。

現代は、未来を予測することが不可能なVUCAの時代に入っていると中江さんは指摘します。予測不可能であっても、未来へと持続的に成長し、生き続けるのが会社です。

中江さん:会社のパーパスを実現するために未来に向かって行きましょう。今日一番伝えたかったことは、「誠実さ」。誠実な会社じゃないと誰も協力してくれないし、認めてもくれません。誠実であるためにフレームワークをするんです。特に一人で立ち上げる会社ならば、「誠実じゃないと絶対無理!」なので、そこだけは覚えておいてください。

中江さんが、ユーモアを交えながら力強く「軸を立てる」の講義を締めくくると、自然に大きな拍手が湧き起こりました。

もやもやしつつ考え抜いて、「これだな!」と言語化できたら一気に事業が進む

講座の後半は佐々木さんを講師に、中江さんからもアドバイスを受けながら「軸を立てる」ためのワークに取り組みました。前回の講座「自分のやりたいを見つける・言葉にする vol.1」で書き出した内容を元に、事業の軸となる「ミッション・ビジョン・バリュー」を見つけていきます。

佐々木さん:自分の事業で何を大切にしていくのかという軸があれば、たとえ提供する物やサービスが変化しても、企業の価値も、協力してくださる方とのつながりも変わることはありません。

ご自身が「ミッション・ビジョン・バリュー」を考えつくまでの過程を例に、思いつく言葉を時間をかけて、書き出してみてほしいと佐々木さんは言います。受講生は、「これまで考えたことがなかった」「難しい」と話しながら、ワークに向かっていました。

中江さん:「鳥取だから.....」「そんなのできっこない」など無意識にバイアスをかけてしまっていることがあるので、難しいけれどバイアスを取り除いて考えてみることが重要です。

佐々木さんと中江さんが共に言及したのは、言語化の大切さについて。ビジネスは一人では成立しないので、言語化して、いかにステークホルダーに共感を生むかがポイントです。それがお客さんや取引先の協力を得ることにつながります。

佐々木さん:「soup365」で提供しているおにぎりの塩は、沖縄まで行って見つけました。塩を取引してもらうために重要だったのが、事業で大事にしていることを言語化しておくこと。塩屋さんに思いが伝わり、塩の取引ができるようになりました。

中江さん:ー番伝わるのは言葉なんです。「soup365」も、スープやおにぎりのコンセプトや理念が伝わっているから共感して買いに来てくれるお客さんがいるんですよね。

受講生とのやりとりを通して、次第に経営についての話題に展開していきました。仮説を立て、うまくいかなかったときのギャップが学びになるため、小さいチャレンジをいくつもやってみることが大切だと言います。

中江さん:経営とは自分と向き合うこと。とても苦しい作業でもあります。それだけ苦しいところに身を置いていると、毎日自分がすごいスピードで成長するのが分かるんです。課題を解決するために、何かを成し遂げているという実感が得られた時は「本当に、経営をやっていてよかった!」と感じますね。

佐々木さん:「辞めたい」「辛い」と思うことも多いんですが、 喜ばれたことや成功したことが一つでもあると、事業をやっている意味があったんだと思えるんです。

続いて、「どこで、何を届けていくのか」を明確にするワークの説明に入りました。5W2Hに沿って「who だれに」「where どこで」「what 何を」「when いつ」「why なぜ」「how  to どうやって」「how  much いくらで」を具体的に書き出します。
受講生は、ペルソナの設定、競合の調査、戦略など「ミッション・ビジョン・バリュー」とともに持ち帰って作成することになりました。

佐々木さん:MyWorkへの応募書類には思いが言語化されていて、それぞれに共感を覚える部分がありました。みなさんの中に「ミッション・ビジョン・バリュー」につながるものが絶対にあるので、メンターと壁打ちして、事業を始めるまでに形にしていきましょう。

MyWorkで出会った仲間は宝物、
それだけでとても価値があることです

ワークの後は、受講生からの質問の時間に移りました。

受講生 Yさん:企業を経営していて、誰かから学んだり、アドバイスしてもらったりすることはありますか? 

中江さん:今日のような講義をする機会があれば準備をするために勉強したり、会社の研修にも参加したりして常にアップデートしています。自分で環境を整えて、トレーニングを続け、相談できるメンターを見つけておいて欲しいですね。

佐々木さん:「いいものも、ダメなところも見てもらって、聞いてみよう!」と思えるメンターとの出会いはとても大きいと思います。起業するかどうかに関わらず、生きていく上で自分が心地よく感じるメンターの存在は重要ですね。

受講生 下田さん:ストレスにどのように対処していますか?

中江さん:自分自身はストレス耐性があり、メンターから声をかけてもらえる環境にいることで、適度なストレスの中で成長できていると思っています。ただ体や精神に支障をきたすようなストレスを抱える人もいるので、その場合は仕事をストップするように、客観的な見極めをする人やメンターの存在が重要ですね。
そして、すごくおいしいものをできるだけ食べること!落ち込んでいる時に冷めたお弁当を食べると、さらに辛くなりますよね。食べ物はすごく大事です。

中江さんは、「MyWorkへの受講希望者数の多さや、応募書類に表れている意識の高さは、ほかの起業家を育成する事業では見られないことで、すごいと感じている」と話し、受講生にエールを送ってくださいました。

中江さん:MyWorkで同期の仲間ができるのは、それだけでとても価値があることです。相談したり悩みを話したり、将来は事業パートナーや取引先になる可能性もありますよね。ほかでは得られない宝だと思います。

最後に佐々木さんの提案で、中江さんを囲み集合写真を撮ることに。オリエンテーションの時と比べ、受講生のみなさんの笑顔がさらに輝き、充実しているのが印象的でした。撮影が終わると、自然と拍手が湧き起こり、連帯感に包まれた温かい雰囲気の中で第3回目の講座が終了しました。次回は、NPO法人bankupの藤吉 航介さんを講師に「広報・情報発信」のポイントを学びます。

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「経営について学べば学ぶほど、やらなければならないことが増えていく」と分かり、「大変だなあ」という受講生の声も。ですが、そうつぶやく受講生の目は輝いていました。
「楽しいことばかりではない、でも前に進みたい」と起業に向け受講生の意識が格段に進化していることを実感しました。

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