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鳥取から発信!マーケティングで伝えるわたしらしい価値【第2期 講座レポート】

「自分らしい仕事を見つける、つくる」を応援する、MyWork わたしの仕事プロジェクト。第2期も多彩な講師陣によって、MyWorkの基礎となる講座が展開されています。

今回レポートするのはマーケティング講座、講師は 中江 康人さん(KANAMEL株式会社 代表取締役 グループCEO)です。 MyWork わたしの仕事プロジェクトを運営する佐々木 よしみさん(合同会社cocoto代表)の熱烈なオファーに応え、世界を飛び回る合間を縫って出身地である鳥取のためにと駆けつけてくださいました。

当日は、鳥取市にある「スペースソラ」に集まった2期生と、リモートで参加した1期生の有志が熱心に耳を傾け、わたしらしい仕事にぴったりのマーケティング手法を学びました。

ステークホルダーを幸せにするマーケティングとは

講座の最初に確認したのは、マーケティングの前提について。ビジネスとは、価値と価値の交換で成立します。一度だけ物を売って終わりではなくて、売れ続ける、もしくは売り上げが拡大するビジネスモデルを作るために必要なのがマーケティングです。

中江さんが強調したのは、「自分たちの会社だけが利益を得て、幸せになっている状態は、世の中から受け入れられない」ということでした。

受講生は、事業の軸を立てるためにこれまでの講義で学んだパーパス、ミッション、ビジョン、バリューを振り返りながら、お客さんや社会などステークホルダーに対する責任、配慮を適切に定義したうえでビジネスやマーケティングを行うことの大切さを改めて認識していました。

中江さん:定義したことを事業に落とし込んで、本当にステークホルダーを幸せにしているのかを自問自答しながら、ビジネスを進める。現代のマーケティングは、その領域に入っています。

さらに、MyWork受講生の思いをビジネスにする場合の難しさについても切り込みました。

中江さん:みなさんのやろうとしているソーシャルグッドな事業のグッドを価値に変え、価値と価値とを交換する仕組みを作ることは、めちゃくちゃ難しいわけですよ。どのような意志を持ってものやサービスをこの世に生み出し、届けしようとしてるのかを伝えて、それも価値として評価してもらわないとビジネスとして成立しないんです。

耳障りの良いことだけでなく、超えなければならないハードルがあることがわかり、受講生は頷きながら、真剣に話に聞き入っていました。

わたしの仕事にちょうど良いマーケティング
〜MyWorkを一歩前進させるために〜

MyWork受講生に適したマーケティングとして、中江さんが強調したのは、「インサイトの具現化」「売る仕組みをつくること」「誠実な振る舞いをすること」です。

1、インサイトの具現化

マーケティングのスタート地点は、生活者やお客さんが困っていること、解決しなければいけない課題、こうすればもっと幸せになるだろうということに目を向けること。それらを元にサービスやプロダクトが開発できるかどうかが勝負です。

中江さん:開発で大事なのは、生活者の心の中にあるインサイトを想像することです。言葉にされていない生活者の心の奥にある思いや、困っている状況の背景を発見するのがポイント。アンケート調査をして、結果をそのまま受け取るだけでは、リピートにもつながらないんですよね。

2、売る仕組みをつくる

実際にものやサービスを購入してもらうときに忘れてはいけないのが、お客さんにどういう体験を提供できるのかということです。

中江さん:買ってもらう場面も体験だと考えなきゃダメ。「あなたはこんなことに困っていて、こうしたいと思ってるんじゃないですか、どれだけ人を幸せにできるかを考えて私たちが作ったものがこれです」と伝えるだけでも、コミニュケーションが生まれて、お客さんにとっての体験が生まれます。

ここで強調して、話されたのがリピーターになってもらうことの重要性について。リピートしてもらうことによって、どんどんビジネスの効率は良くなって行くのです。

中江さん:リピートしてもらうためには、買ってもらった後のコミュニケーションがすごく大事なんです。しかも、お客さんの体験を想像して、その人が必要とするタイミングに合わせてコミュニケーションを取らなきゃならない。

お客さんが、「自分のことを見てくれている、理解してもらえているんだな。このブランドいいな」とリピーターになり、ファンになってくれると、口コミでどんどん広げてくれて、最終的にはコミュニティができる。それが集客につながります。

3、接客が「超大事!」〜誠実な振る舞いができるかどうか〜

MyWorkを進めるためには、大きな広告を出して認知してもらうよりも、お客さんになる人をきちんと分析して、確実に情報を届けることが大切です。

中江さん:来てくれたお客さん一人ひとりに丁寧に向き合うことによって、常連さんが生まれます。だから、接客が「超大事!」。購入してもらう場面から接客は始まって、購入後も接客し続けるイメージです。それがアフターケアになり、リピーターやファンになってもらうための体験にもなります。

みなさんの場合、たとえば、集客は知り合いから始めて、その時にすごくいい接客、いいサポートを提供する。一生懸命接客すれば、お客さんはサービスの価値を、口コミで周りの人に紹介してくれます。お客さんが価値を代弁して、宣伝や営業をしてくれると考えておいたほうがいい。関係性やコミュニケーションを意識することの意味はそこにあるんです。

MyWorkの受講生は、地域に暮らす人たちに対して事業を展開しようとしています。「手の届く範囲の人たちを、まず幸せにしていく」という中江さんの言葉に共感した方も多かったはず。講座の中盤に差し掛かっても、メモをとる手を休めることなく、まっすぐな眼差しで学ぶ姿が印象的でした。

社会や価値観の変化に合わせてアップデート
〜マーケティングプロセス〜

自分たちが生み出しているものやサービスが、お客様の困りごとに寄り添えているかを常に確認してアップデートを繰り返すことを、マーケティングプロセスと呼びます。社会が変化すれば、価値観も変化するため、少しでもアップデートすることを繰り返さなければなりません。

中江さん:MyWorkをやってみて、うまくいかなかったときが一番大事です。原因を分析して学びにして、アップデートしていかなきゃいけない。そのために必要なのが、長く使われてきたフレームワークを活用して、分析することです。失敗から学び、上手くいったことの再現性を高めてビジネスの精度を上げていくこと。それが自信を持ってものを開発し、お客様におすすめする裏付けにもなります。

ここからは、「絶対にやった方がいい」と中江さんが考える4つのフレームワークの説明に入りました。

フレームワーク1、市場調査

MyWorkの受講生は、鳥取で暮らす人をターゲットにしているので、最初は身の回りのことを調べてみるのも一つの市場調査の形です。加えて、インターネット上のアンケート結果や統計データから市場のデータを集めることもできます。

中江さん:自分がこれからサービスを提供しようとするコミュニティの街角に立って、そこで何が起こっているんだろうと2時間くらいずっと眺めてるだけで発見があるはず。みなさんにとってもっと身近な家族や友だち、同僚の行動や、実際のお店に足を運ぶことで、見えてくるものもあります。

気付いたことをメモしたものと、統計などのビッグデータを重なり合わせると、ずれが見つかります。そこにインサイトがあるわけです。ビッグデータと立体的に掛け合わせていって、「ここに自分の市場がある」というのを導き出すのが市場調査です。

受講生の一人から、「市場調査をしようと思っても、何を観察したらいいのかわからない」という声があがりました。

中江さん:まずは定点観測をして、意味がないと思ったことでも気づいたことは全部メモして、ビッグデータと合わせてみる。でもみなさんは、独自性があるものをやろうとしているから、市場がニッチになるわけです。データがなくて調べようがない場合は、フォーカスを緩めて関連するかなと思うビックデータをどんどん見て。AIを使って壁打ちすることもできるし、使えるツールはどんどん活用するほうがいいと思います。

フレームワーク2、ポジショニング

ポジショニングでは、提供するものやサービスがどのポジションに位置するかを分析して、戦うフィールドを決めていきます。その際に競合が、どの立ち位置にいるのかも合わせて考えます。

講座では、鳥取で事業に取り組む佐々木さんが、どのようにマーケティングを行っているのかという実例も聞くことができました。その一つが、食べるスープや塩おむすび、ドリンクを扱う「soup365」を計画した際の出来事。ポジショニングを活用することで、当初意識していた飲食店だけでなく、コンビニも競合だと気づいたといいます。

実際の体験談を聞くことで、フレームワークの必要性が受講生の心にストンと落ちていったように感じました。

中江さん:競合がひしめき合ってるところでは、新規参入するのは厳しくなるわけだから、空いているスペースにポジショニングするのが通常のやり方です。一方で、競合がいるからこそ、提供できる付加価値が際立つと考えて参入するやり方もあるんですよ。

自分たちの提供する価値をいくつも発見していかないとポジショニングできないし、「価値をいくつ発見できるかな?」と考えてみると良い気がします。同じように競合の価値を分析してみるのも大事だと思います。

フレームワーク3、3C分析

3C分析では、市場調査やポジショニングで明らかになったものを、「市場」と「競合」、そして「自分の会社」の3つに当てはめて比較しながら検討していきます。

中江さん:3つを相対的、相関的に分析することで、事業のオリジナリティが浮かび上がってきます。書き込んでいって、競合とかぶってるなと思ったら、消しゴムで消す。そうやってパズルを組み立てていったときに、最終的に「これだったら勝負できるな」という強みや価値、理念が見えてきます。

フレームワーク4、SWOT分析

SWOT分析とは、自社の「強み」・「弱み」、外部環境を考えた際の「機会」・「脅威」の4つの要素をもとに分析する手法です。

まずは4つの要素に分けて書き出し、それらを掛け合わせて分析していきます。中江さんと佐々木さんは、SWOT分析のポイントやメリットを次のように説明しました。

・景気などの外部環境にも、機会となるプラス部分と、脅威となるマイナス部分がある。まず書き出して、その中でどう戦うか考える。
・弱みを強みに変えるのは難しいけれど、弱いところをどう補完するのか、強いところを強みとして、どうチャンスにするのか考察する。
・リスクはゼロではないけれど、そこまで脅威がないから、思い切って進めようと分析することもできる。
・自社の弱いところや、外部環境が脅威になった時、どう振る舞えばいいのかを事前に想定できる。

外部環境は常に変化するので、どのフレームワークも更新することが重要だと、中江さんは講座を締めくくり、受講生にエールを送りました。

中江さん:今の時代は、ステークホルダーとどんな関係を築くのか、どんな価値を提供するのか、どんな責任を持っているのかを定義して、ビジネスと両立させることが求められています。

定義しただけで終わらずに、それを事業に落とし込んで、本当にステークホルダーを幸せにしているのかを常に自問自答しながら事業を続けていく。マーケティングは、そういう領域に入ってきています。

みなさんが目指していることは、まさにそれにあてはまることなので、ぜひビジネス化してほしいと願うところです。

「受講生のまなざしがテンションをあげてくれた」と話す中江さん。会場からは「もっと話を聞きたいです!また鳥取に来てください」と期待する声が上がり、講座終了後には佐々木さんを交えて直接相談する方も。アットホームで、笑顔と情熱にあふれるセミナーになりました。

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