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夢を現実にするためのお金・資金計画【講座レポート】

「自分らしい仕事を見つけ、つくること」を応援する、MyWork わたしの仕事プロジェクトの第5回目の講座は「お金・資金計画」です。2023年12月6日、鳥取市にあるスペースソラに集まったのは、会場参加8名、リモート参加3名(アーカイブ視聴含)のみなさんです。

講師は、鳥取銀行で補助金申請支援業務を担当する山平 学さんです。また鳥取銀行 法人コンサルティング部長 花房 佳輝さん、郡家支店 支店長 森本 健之さんのお二人にもお越しいただきアドバイスをいただきました。

そのほか、MyWorkを企画運営する合同会社cocoto 代表 佐々木 よしみさん、主催の鳥取県より地域社会振興部 人権尊重社会推進局 女性応援課 係長の竹内 香菜江さんも同席しました。

受講生にとって、起業の際に必要になるお金や資金計画の知識は、気になっていても個人ではなかなか情報を得ることができないことの一つです。受講生からの質問や悩みに対して、鳥取銀行のみなさんが一つ一つ丁寧に回答してくださいました。2時間にわたる講座の様子をレポートします。

銀行もメンターの一つ

ーー「銀行をうまく使ってください!」ーー

まず講師の山平さんが示したのは、起業の際に「どこに相談したらいいのかわからなかった」という人が多いというデータでした。

鳥取にある身近な相談先には、銀行・商工会議所・商工会・日本政策金融公庫・鳥取県よろず支援拠点・税理士、そしてMyWorkを運営する合同会社cocotoやNPO法人bankupなどがあります。各地域の商工会議所や商工会、そして鳥取県よろず支援拠点は、地域の活性化や起業家の支援を主な仕事としており、全て無料で相談することができます。また銀行への相談にも費用はかかりません。

受講生 Sさん:相談先に「何を相談したらいいのかがわからない」という方も多いのではないでしょうか。起業したいという人から、具体的にはどのようなことを聞かれますか?

花房さん:資金やテナントについてのご相談は多いですね。今回MyWorkを運営されている佐々木さんが起業する際も相談を受け、物件を一緒に探しました。銀行は、さまざまな機関とつながりを持っているので、不動産会社や商工会議所、税理士をご紹介することもあります。銀行が紹介した事業者だということで、安心感を持っていただける場合も多いようです。

受講生 Fさん:鳥取県の西部に住んでいるのですが、地元の商工会議所に相談に行ったらいいですか?

花房さん:そうですね、地元の商工会議所に相談してみてください。また、西部にも鳥取銀行があり、商工会議所と銀行は相互につながっているので、補助金・融資などの場面によって適切な場所でアドバイスを受けることができますよ。銀行は、日本政策金融公庫とのつながりもあるので、お客様に合う情報を提供することも可能です。

山平さん:相談先の中でも、マッチングの機会が多いのは、圧倒的に銀行だと思います。取引先が何万社もあり、仕入れ先などを考える際にもベストな取引先をご紹介できると思います。

受講生から「すごい!」という声が上がりました。「銀行としては、当たり前のことだと思っていたので、みなさんのリアクションを新鮮に感じます」と山平さん。会場が笑顔に包まれました。

事業計画書

ーー補助金の申請に役立ちますーー

銀行で受けられる支援の一つに「事業計画の作成」があります。事業計画とは、今後の目標や実行可能な具体的戦略が明示されている重要な文章です。起業したばかりで事業実践がない場合には、補助金の申請の際に重要な役割を果たす書類です。作成する際は銀行のヒアリングや支援を受けながら完成形を目指すことができます。

記入の際に気をつけるポイントとして山平さんが強調したのは次の2点です。

1.誰に届けるのか、クライアントは誰かを明確にすること
2.どのくらいの開業資金が必要か、そして売上目標・利益目標を考えておくこと

実際に鳥取県内で起業した女性の事業計画書を例に説明をうけ、受講生からは次のような質問が出ました。

受講生 木山さん:大丈夫だと思って事業計画を作ったものの、実際に始めると違いが出ることもありますか?

森本さん:経営状態が予想よりも上振れすることもあれば、その逆もありますね。銀行との関係は融資だけで終わるものではないので、「こんなことがありました」など、銀行と常にコミュニケーションを取りながら進めていくとメリットがあると思います。

花房さん:事業計画を立てる際、すべて借入に頼るのはおすすめしません。自己資金があると、事業に変化があった時にも対応することができますよ。夢と現実を掛け合わせて、実現可能な計画に落とし込むことが、初期投資を抑えて事業を始めることにつながります。

次に、「収支計画・利益計画」の説明に入りました。「収支計画・利益計画」とは事業計画の一部であり、事業の採算性を確認するために「売り上げ・仕入れ・粗利益・必要経費・事業の利益・個人の利益」などについて試算したものです。例えば、「売り上げ」は、平均単価、1日あたりのお客様の数、営業日数などをもとに、論理的に算出していきます。

山平さん:はじめから綿密な計画ができるお客様はいないので、悩まずに、まずは「これくらいの金額かな?」と書き出してみてください。

森本さん:売り上げを見極めるのは難しい作業です。平日や土日、季節など業種によっても違うので、同業種と比較しながら進めていくことになりますね。

ここで、実際に売り上げを書き出す作業に取り組みました。「蓋然性を大切に取り組んでほしい」と山平さん。頭の中にある予想を書き出すことによって整理し、それをもとに銀行や相談先の機関と壁打ちを繰り返し完成を目指します。

リモート視聴する受講生からは、チャットを通して「まだ固定客がおらず、取引先もない場合は、どのように作成したらいいのでしょうか」という質問があがりました。

森本さん:MyWorkであれば、佐々木さんに相談したり、ほかにも銀行などの相談先を利用したりすることで計画書はブラッシュアップ可能です。

山平さん:例えば「30代男性、鳥取市在住」など、ターゲットと商圏から潜在的なお客様を導き出し、売り上げを想定することも考えられますね。

計画の進捗把握

ーースピード感を持って経営状態を見極めることが重要ですーー

事業計画をもとに事業を始めた後も計画の進捗を把握するために、事務的な作業が必要になります。まずは毎日記帳するなどしてデータを蓄積し、毎月の試算表を作成して月次で進捗を把握していきます。「どういう経営状態にあって、今後何が必要なのか」を見極め、次の一手を打つために重要な作業です。

山平さん:細かな部分にこだわるよりはスピード感をもって作成し、方向感を掴むことをおすすめします。補助金の申請に役立ちますし、銀行の融資を検討する際にも有利になります。税金の事務手続きにも余裕を持って取り組めますね。

計画の進捗把握のポイントとして、山平さんが取り上げたのは主に次の3つです。

1.クラウド会計ソフトを利用する
記帳を簡単に、効率よく行うために便利なのが、クラウド会計ソフトです。通帳の入出金と連動して、自動的に記帳できる機能もあり、月次報告や確定申告に活用できます。

2.専門家の知識を活用する
事業で雇用が生まれた場合は、雇用保険や社会保険についての知識が必要となります。たとえコストがかかっても税理士や社会福祉労務士に任せることで、経営者も従業員も安心して働くことができます。

3.事業専用の銀行口座を作る
生活費と明確に分けた事業専用口座を開設することで、事業でのお金の流れを把握することができます。

受講生からは、次のような質問がありました。

受講生 水根さん:事業を進めるうえで、簿記の知識は役立ちますか?

花房さん:確定申告の際などにも簿記の知識があるとメリットがあり、経営者として知っておいた方がいいものだとは思います。事業の規模によって処理する量も変わってくるので、徐々に慣れていかれたらいいのではないのでしょうか。

佐々木さん:個人事業主の申請の際に、簿記の勉強をしました。事業によっては売り上げや仕入れの動きが多くなるので、クラウド会計ソフトを使うと処理が楽になるのでおすすめです。

山平さん:エクセルで管理をしていると、税率が変わった時に作業がとても大変です。クラウド会計ソフトを使っていると自動的に処理を終えることができますよ。

Q&A

ーー起業の資金の集め方は? 物件はどう決める?ーー

つづいて質疑応答の時間に移りました。事前に受講生からお聞きしていた質問に多く上がっていたのが、補助金について。山平さんは、県と国の補助金を紹介してくださいました。

・県の補助金
設立・開業一年後支援金 
鳥取県起業創業トライ補助金

・国の補助金
小規模事業者持続化補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

加えて、講座終了後には、鳥取県の竹内さんより起業支援や補助金などの情報がまとめられている県のWebサイトを案内していただきました。

とっとり産業支援ナビ/とりネット/鳥取県公式サイト

鳥取県の創業・ベンチャー支援/とりネット/鳥取県公式サイト

また事前に受け付けた質問には「クラウドファンディングについて知りたい」という声もありました。国内には3つの代表的なクラウドファンディング、「READYFOR」「CAMPFIRE」「Makuake」があり、それぞれに得意分野があります。たとえば「READYFOR」は、ソーシャルサービスの分野で強みを発揮します。

山平さん:クラウドファンディングは、潜在的なお客様に融資を募るものです。しかし「開始してもなかなかあつまらない」という相談を受けることもありますね。「こういうクラウドファンディングをしている事業者がいますよ」と銀行がお知らせをして融資を募ったこともありました。

最後に、当日に共有した受講生からの質問をご紹介します。

受講生 長谷川さん:融資の返済は、どのくらいの期間をかけて行うことになりますか?また、融資を受けなくても、物件の紹介などをしていただくことはできますか?

森本さん:返済については、事業計画と紐付けて、どれくらい利益が出るだろうと計算し、無理がないように返済期間を考えます。ヒアリングやアドバイスをしながら計画を立てていきます。

花房さん:融資をしているかに関わらず、物件の紹介も可能ですよ。地域の金融機関の役割は、地域の活性化や雇用の創出なので、地域のためになることを応援していきます。

地域の起業家を支援した経験を、豊富にお持ちの山平さん、花房さん、森本さんのわかりやすいお話に、受講生は「なるほど」とうなずきながら、悩みや不安を解消していました。起業に役立つ「お金・資金計画」について、実務的なお話を聞くことができる貴重な時間となりました。

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会場にスーツやネクタイ姿の講師の方がいらしたのは初めてのこと。いつもとは少し違った雰囲気の中で始まった講座も、質問のやり取りを通してどんどんと場が和んでいきました。次回12月12日の講座では「マーケティング」について理解を深めます。


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