九月著『走る道化、浮かぶ日常』感想。"聞いたとかじゃないけど、知ってる"
九月くんの著書、『走る道化、浮かぶ日常』を読んだ。本書を通じ、この世がまた少し平和になった。ページをめくるたび鳩が一羽、また一羽と羽ばたき、読み終わる頃にはひと握りの愛と大量のフンだけが僕の手元に残った。
"聞いたとかじゃないけど、知ってる"
ー聞いてるはずなのに知らないことも、結構ある。
どうやら僕は税金を払っているらしい。所得税とか、住民税とか。
もう社会人生活も長い。何年も税金を払い続けているし、言うまでもなく聞いたことはある。
それなのに給与明細をもらう度、税金の欄を見ておののいている。いつも新鮮に驚く。
ずっと聞いていたはずなのに、税金という概念を見逃しているのだ。
そして懲りずに毎月税金の欄を見ておののいた話もしている。
聞いているどころか、話しているのにすっかり忘れてしまう。
風邪を引くたび、腹を出して寝たのが原因だと気付く。でもやめない。忘れているからだ。
少食なのに大盛りがあれば絶対そっちを選ぶ。でもやめない。これも忘れているからだ。
こんなものが世の中にはごまんと溢れている。
春の穏やかさも、夏も、秋も、冬の静けさも、全部知っている。
毎年色んな人から聞いている。自分も話している。でも、毎年驚く。毎年嬉しくなる。
僕たちは色んなものを聞いては忘れ、何度も繰り返す。
仕事の仕方だって、ずる賢い生き方だって、誰かのこだわりだってそうだ。
いつかは全部覚えたいけれど、きっと無理なんだろう。
どうしても覚えられない、慣れないことは山ほどある。
その筆頭が、恋。
恋は美しいものだと聞いていたはずなのに、
体感していたはずなのに、いつだって驚いてしまう。
でもそれは当然の話。
この世に同じ恋なんて、ひとつも無いのだから・・・。
Happy Birthday to Love...
ヒューヒュー