九月著『走る道化、浮かぶ日常』感想。"「好きなタイプは?」って聞いてくんな"

九月くんの著書、『走る道化、浮かぶ日常』を読んだ。本書を通じ、この世にまた少し平和になった。ページをめくるたび鳩が一羽、また一羽と羽ばたき、読み終わる頃にはひと握りの愛と大量のフンだけが僕の手元に残った。

"「好きなタイプは?」って聞いてくんな"

ー僕は結構、不毛な会話が好きだ。だから何だってんだよ、と締めくくるしかないような取り留めのないやり取りだけ繰り返したい。
反面、何となく人となりが伺える質問は少し苦手だったりもする。
パーソナル診断質問界最弱の「犬派?猫派?」もギリギリ嫌だ。何となく、犬派が好きってことは恋人にも甘えてほしいのかな、だとか。
猫派ってことは適度な距離感が良いのかな、だとか。デタラメな仮説は一応立てられてしまう。
絶対そんなことないのに。犬派だからなんだってんだ。もうこのやり取り否定派か賛成派で分かれよう。否定派だけの国を創ろう。僕は否定派かつ犬派とだけ仲良くしたい。

新規国家が建立したところで、もうひとつ苦手な質問を挙げたい。「S?M?」論争だ。大抵お酒が入った頃合い、性にパワフルな輩が繰り出してくる難問。
好きなタイプよりもう少し込み入っているし、それでいて答えようがない。答えれば答えるほど、好奇の目は侮蔑へと変わる。極端に嫌悪される。
だって聞いてきたんじゃん、どう好きかまで答えるもんだと思うでしょ。引くなよ。蔑まれるのもMだから嬉しいとか言うな。嫌だよ。
SAWくらいグロい罠で嫌になってしまう。

もっとくだらないことを聞いてきてほしい。「ちくわ」と「はんぺん」どっちが好きか聞いてきてくれ。それを聞いたところで何もわからないだろう。
でも何となく、はんぺん派は嫌だな。少しだけキザな気がする。だって大多数がちくわ派だろうし、わざわざはんぺんを選ぶことで自分を演出しているに決まってる。
ちくわは竹を模しているけど、はんぺんは無。何を表してもいない。精神的に穴の空いた空虚な人間だ。とでも言わんばかりに。
サブカル練り物を許すな。あっち行け。

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