九月著『走る道化、浮かぶ日常』感想。"センス、シュール、パワフル"


九月くんの著書、『走る道化、浮かぶ日常』を読んだ。本書を通じ、この世がまた少し平和になった。ページをめくるたび鳩が一羽、また一羽と羽ばたき、読み終わる頃にはひと握りの愛と大量のフンだけが僕の手元に残った。


"センス、シュール、パワフル"

ーセンスあるって思われたほうが嬉しいに決まってるし、それっぽい振る舞いをするのは分かる。
僕だってそうだ。センスがあるっぽく思わたい。

ただ、この願望は何があっても見破られてはいけない。もしバレてみろ、真逆扱い真っ逆さまだぜ。


だからこう、気取られることのないよう、慎重かつ的確にセンスを醸し出す必要がある。
闘争は日常の至る所にある。


コンビニで飲み物を選ぶとき。甘くて美味しい炭酸飲料なんて選んじゃいけない。ムキムキ元気チャンだと思われる。一度貼られたムキムキ元気チャンのレッテルは決して覆ることはない。
ソイツは何があってもムキムキ元気チャンだ。

ただ、あまり欲張り過ぎてもいけない。ゲロ甘カフェオレは避けるべきだ。流石にバレる。

あんなもんよっぽどセンスが無いと飲みこなせない。お腹壊して終わりだ。


ここは無難にルイボスティーを選ぶ。コンビニオリジナルブランドじゃない方ね。
このときちゃんと皆にルイボスティーの評価を聞いて回るのも忘れないように。

どうせ皆好きじゃないから、差を見せつける絶好のチャンスだ。


おにぎりもちゃんと選ばないといけない。
唐揚げおにぎりなんて選んでみろ。街1番の大阿呆だと思われる。

その先半ズボンしか履かせてもらえない。

かといって具なしおにぎりも良くない。何となく分かって来たかな?

そう、正解はシーチキンだ。何を隠そうパッケージが青い。
ダサい青なんて知らないでしょ。全部センスあるから、青。

空とか海も100%センスあるじゃん。そういうことよ。


もちろんホットスナックは買うなよ。

どうしても食べたいなら焼き鳥にしろ。

それでタバコも吸え。髪を伸ばせ。メガネをかけろ。

大学を中退しろ。5年くらい経歴不明期間を作れ。

免許は持たなくて良いし、自転車はボロければボロいほどそれっぽい。

汚いアパートで暮らしている割に、実家は太くあれ。


仮初めのセンスに溺れろ。

35くらいで後悔してくたばれ。

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