九月著『走る道化、浮かぶ日常』感想。"僕は走っている"

九月くんの著書、『走る道化、浮かぶ日常』を読んだ。本書を通じ、この世がまた少し平和になった。ページをめくるたび鳩が一羽、また一羽と羽ばたき、読み終わる頃にはひと握りの愛と大量のフンだけが僕の手元に残った。


"僕は走っている"

ー街中でよく走っている人を見かける。ダイエットかな、運動不足解消のためかな。ひょっとしたら大きな大会が控えているマラソン選手かも。彼らは皆、一様に走っている。身体的にはもちろん、精神的にも、走っているのだ。
彼らは決して歩くことはない。そんな野暮なことはしない。歩いているときだって、ずっと走っている。

わざわざ空いた時間に歩くような人間だ。豊かに決まっている。それも努力で掴み取った豊かさだ。
だから彼らはいつだって走るのをやめない。歩いても良い場面ですら、走り続けるのだ。

ただその実、精神的に走っているさまを見せつけたいがため、わざわざ肉体を走らせている感も否めない。

僕はそう睨んでいる。

だってそうだろ、あいつら人通りの多い場所走るじゃん。皇居ランナーが良い例だ。
豊かさを見せつけるために走っている。もちろん効果はてきめんで、走っている彼彼女らの後ろには、豊かさの残り香がつきまとう。

さっきも言った通り、実際に走っていない場面でもアイツらは走っている。
洒落たレストランにでも行ってみろ、貴様にはくつろいでいるように見えるか?違うんだよな。
よく見てみろ、あそこだって!優雅にワインを揺すってるあいつだよ!!!うっとりした表情の!そう!
あれはテイスティングじゃない。クラウチングスタートだ。
もうこれ走るよ・・・見てな・・・。ほら走った!!!!な!?!?言ったろ!!??????

そうそう!そうなんだよ!別に早くはないんだよ!自尊心が動力源のランナーなんてあんなもんだって!
でもほら!するだろ残り香!これが豊かさね!分かる??いい匂いだよな〜〜〜

いやあ、見事なパフォーマンスだった。楽しかったね。じゃあそろそろ行こうか。ちょっと遠いけど、歩いて帰ろうな。

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