九月著『走る道化、浮かぶ日常』感想。"万物の揚げ足を取りたい"
九月くんの著書、『走る道化、浮かぶ日常』を読んだ。本書を通じ、この世がまた少し平和になった。ページをめくるたび鳩が一羽、また一羽と羽ばたき、読み終わる頃にはひと握りの愛と大量のフンだけが僕の手元に残った。
"万物の揚げ足を取りたい"
ー万物の揚げ足はウケるから取ったほうが良いけれど、万物の揚げ足を取るヤツだと思われてはいけない。
いや、マジで。きつい。君は今何歳だ?
15歳ならまだ良い。余裕で良い。揚げ足が見えてくる年頃だろう。気になるくらいの方が健全だ。
鬱屈とした、蓋を開けてみると何でもない感情をぶち撒けたくなる夜もあるだろう。
そんな日は万物の揚げ足を好きなだけ取れば良い。恥じらいなんてかなぐり捨てろ。戦え。万物をぶち殺せ。
どうだろう、君は20歳かもしれないな。まだ良い、子供と大人の境目を跨ぐ瞬間、万物の揚げ足を取りたくなるはずだ。
酒と煙草と万物の揚げ足。パチンコとセックスと万物の揚げ足。レンタカーと砂浜と万物の揚げ足。
そうだ、そうだ、それでいい。そのまま突き進め。
25歳?そうか、ちょっとな、どうだろうな。まだ大人じゃないだろうけど、少なくとも子供ではない。
老いを感じるだろう?前より少し、許せるようになったろう?じゃあ、万物の揚げ足は取らなくても大丈夫だよな。
少なくとも皆はそうだよな。でもまあ、わかるよ。楽しいよね、万物の揚げ足を取るの。センスありそうだもんね。
あんまりバレちゃだめだよ。キツいから。君の鬱屈とした感情はもう、純然たる鬱屈とした感情になっている。
混じりっけなしだ。混沌を抱えている自覚だけしてくれれば、それでいい。
30歳か、あんまり良くないな。もう良くないな。いるよ、人生の正解見つけたヤツ結構。
これが幸せだって皆わかってきてるよ。家を建てたヤツがいる。家族に恵まれたヤツがいる。
自分の才能を信じてひた走るヤツだって、あるいは、何もないことが十分幸せだと気付いたヤツだって、それなりにいる。
それなのにお前はなんだ、万物の揚げ足を取っていたいのか。センスあるとかじゃないってもう。変なヤツだ貴様は。
もちろん禁止されていない。咎められることも多分、ない。でもな、変なヤツなんだよ。
独自の視点とかじゃないんだって。しゃらくせえだけだよ。なんだその服は、どこに売ってるんだ。
家も流石に暗すぎる。電気をいっぱいつけろ。鬱屈とすらしてないよ。
だからそれはそれで良い、くらい言ってみろよ。どうだ?悲しいか?僕は悲しい。皆大人になっちゃったから。