九月著『走る道化、浮かぶ日常』感想。"不快感早押しクイズ~人生大会~"
九月くんの著書、『走る道化、浮かぶ日常』を読んだ。本書を通じ、この世がまた少し平和になった。ページをめくるたび鳩が一羽、また一羽と羽ばたき、読み終わる頃にはひと握りの愛と大量のフンだけが僕の手元に残った。
"不快感早押しクイズ~人生大会~"
ー僕は幸か不幸か背が高い。相当に高い。数字にして192センチ。あんまりいないよね。多分。
僕は自分より大きい人をまだ町中で見たことがない。
統計的に見ると、190センチを越えている日本人男性は全体の0.07%しかいない。
1年間で空き巣に遭う確率は0.1%程度らしいから、それよりもうんと珍しい。
そんなにいるんだ、空き巣被害に遭う人。めちゃくちゃ嫌だな。そんなに落ち込んでる人見ないけど、どこにいるんだろう。
もしただじっと堪えているだけなんだとしたら、そっと抱きしめてあげたい。僕も珍しいから、きっと嬉しいはずだ。
それだけ大きいと、道行く人達からの視線は半端なものじゃない。もうみんな超見る。びっくりするくらい見てくる。
それによく笑っている。デカすぎるとびっくりするもんね。わかるよ。僕も自分と近い背丈の人を見かけると笑っちゃうもの。
相場は170くらいだろ。不必要に育ち過ぎている。スポーツに興じているならまだしも、デスクワークに身長は必要ない。
だから見られるのは別に構わない。慣れたというより、見られるのが普通だから今さら何か思うこともない。
そもそも気に入ってるし。デカく生まれたの。文句の付け所がない。
ただ一点、おおらかで名の通った僕でも唯一許せないものがある。
擦り倒された身長イジりだ。
聞き飽きたのはもちろん、何よりおもしろくなさ過ぎる。
”何食べたらそんなに大きくなるんですか”
ー覚えてねえよ。好きなもの食べてたらこうなったんだよ。
メシごときでどうにかなるならもうちょっと親も色々抑えただろうに。わかるだろ。
”やっぱり小さい頃に沢山牛乳飲んだんですか”
ー飲むわけねえだろ。馬鹿か。さっきも言ったけど牛乳でどうにかなるなら親も抑えてるって。
なんで植物感覚でグイグイ牛乳飲ませるんだよ。そこまで愛歪んでないってウチの親。
”やっぱり着る服とかないんですか?”
ーあるよ。見ろよ眼の前の僕を。これは何だ?服だろ。
あるから着てるんだよ。全裸でうろちょろしてたら言っても良いけど、もうちょっと考えてから喋れ。
何食ったらそんな馬鹿に育つんだ。
”身長10センチだけ分けてくださいよ”
ー貴様が10センチ伸びたところでどうしようもねえだろ。すっこんどけ。
小粋な返しをストックしていないこちらにも非はあるのかもしれないが、絶対聞いてくる方が悪い。
デカいからって何聞いても良いわけじゃないんだぞ。怒るだろ、小さい理由とか聞いたら。
わきまえろ。
ちなみに東大に合格する確率は0.12%。デカくなるよりは簡単なんだぜ。
僕は相当すごいことをしているのかもしれない。馬鹿には辿り着けない領域まで来ている。
ジャイアント赤門でまた会おうな。