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ひがみと諦め~伴奏者の苦悩

普段私は、家族以外に露骨に感情をむき出しにすることはあまりありません。

息子たちからしてみたら「オレらばっかり…」になるようですが(^^;

しかし、

たった1度だけ、激しく言い争いになった出来事があります。


あるコーラス部との出会い

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数年前まで、あるママさんコーラスの伴奏をしていました。全くのボランティア…3年ほどさせていただいたかな?

きっかけは、もともとその団体の伴奏者の方がケガでピアノを続けるのが難しくなり、本番まであまり日にちもなく、急遽のピンチヒッターでした。

最初はその本番までの一時的なお付き合いのつもりでした。

しかし本番が終わってみて、いろいろとその活動内容の話を聞いているうちに、もう少し協力してあげたいと思い、そのまま伴奏者として籍を置くことになったのです。

「子育て世代のママさんが多い」

これまで子育てにかかりっきりで、自分のことは二の次。しかも世間と関わる機会もない。

子連れでも参加でき、ストレス発散の場になればいい。

「ほとんどが初心者」

メンバーのほとんどが、これまで音楽とは全く無縁の生活をしてきた方ばかりです。

当然、楽譜は読めない。

だけど、このことがきっかけになって世界が広がり、音楽が好きになってくれたらいい。

「自信を持つきっかけ作り」

練習の成果をステージで発表することでいろんな人に認めてもらい、もう一度自分に自信をもってほしい。


こういう内容のお話を聞いて、私がその活動に協力できるなら、と引き受けました。あくまでも無償のボランティアです。


感じた違和感

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ママさんコーラスのメンバーとなり、一緒に活動していくうちに、少しづつ違和感を感じ始めてきました。

確か、当時創部3年目だったはず。

ということは、一番長く在籍している人で3年目…それにしては…


全く楽譜が読めないままなのです。

それより、自分で読もうとはしない。常に誰かに頼り、耳で覚えようとする。

耳コピも悪くはないんです。それならそれで録音して帰らないと、結局家に帰ると全て忘れて何も練習できないんですね。

次に練習に来るときにはきれいにリセットされてしまっている。また1から…音取りからやり直し。

一体いつになったら先に進めるんだろう?

初心者ばかりなのはわかる。プロみたいに上手にならなくてもいい。だけど、もう少し…

モヤモヤした感情は私の中でずっとありました。


「あなたは特別」

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当時、私は伴奏以外にも…音楽とは関係ない部分にも人に頼られることが多かったのです。

ちょうど小学校のPTA副会長という役職に就いていたこともあったからかもしれません。

頼まれると断れない性格も災いしてか、「みゅうさんに頼めば何でも解決してくれる」という変なレッテルを貼られてしまいました。

・文章の作成、急ぐときはお願いしちゃえ

・パソコンの不具合、どうしたらいい?

・スマホの不具合、どうしたらいい?

・○○さん、気難しいから交渉お願い!

・ねぇねぇ、愚痴聞いて!

などなど、まぁ毎日何かしら頼まれごと、相談事が来るんです。

やんわりと、

「私、そんなに何でもできるわけじゃないよ」

と言っても

「だって、できてるじゃん!」

と返される…

できているんじゃない。自分でやらなきゃいけない必要があったから!


「何でもできて、羨ましいよね」


違うよ?羨ましいって何?

私から見たら、みんなの方が、頼れる実家が近くにあって、頼れる旦那さまがそばにいてくれて、めちゃくちゃ羨ましくて仕方ない!


なんでみんな、自分でどうにかしようと努力しないわけ?

なんで自分でやってみようともしないですぐ人を頼るわけ?


「みゅうさんは特別でしょ?私はできないもん」


最初からできたわけじゃない。必要に迫られたから…

少しは努力すればいいじゃん!

表向きはニコニコしていても、腹の中は真っ黒な感情が渦巻いてる、最悪な状態でした。


いつの間にか私は

みんなのグーグルであり、秘書であり、スマホショップの店員であり、クレーム対応係であり、カウンセラーであり、保護者であり…

自分が何者かわからなくなっていたのです。


話し合い

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そんなモヤモヤを抱えていた頃、とうとう我慢の限界がくるようなできごとがありました。

本番近くても、相変わらず練習には集まりが悪い。

とうとう1度も練習に出席しないまま、本番には参加する、という人も現れたのです。

そして彼女の言った言葉…

「私、練習してないから歌えないからさ、口パクだからよろしくね」

耳を疑いました。

口パク宣言?

しかも、それが複数人…一体何のためにコーラスやっているんだろう?これまで真面目に練習してきた他のメンバーに悪いとは思わないのかな?

さすがにこれには私も黙っていることができず、意見させてもらいました。すると返ってきた言葉が…


「私たちはみゅうさんと違って素人なの!」


いや、どういうこと?

私はみんなにプロのように上手くなれなんて思ってない。そんなに上手じゃなくても、みんなと合わせる楽しさ、音楽をやる楽しさをわかってくれたら嬉しい。

「だってさ、楽譜読むの難しいし…」

それはわかるよ?慣れないと確かにむずかしい。だから読み方は私も教えるし、最初から全部が読めなくても、まずは一部分だけとか、読んでみようとは思わない?

読めるようになったらまた、新しい楽しさが見つかるよ?

「えー、でも時間ないし…」

それはみんな一緒じゃん。

ご家庭の事情はそれぞれだし、無理強いはしない。

お子さんが小さいとか、仕事があるとか、本当に時間を作るのは大変。だから効率よく練習できるように、私も相談にのるから…


「でもさ、結局さ、やっぱりうちらはみゅうさんとは違うよ。私たちの苦労はわかんないでしょ?」

「みゅうさんは苦労しなくてもできるもんね」

これ、一番ショックでした。

苦労や努力しなくて何でもできる人、この世の中にいる?

これまで私が苦労してきたこと。努力してきたこと。いちいち言わないよ!

今現在でもそれは同じ。こちらの伴奏を引き受けさせていただいてからもその姿勢は変わらない。伴奏者が失敗なんかしたら、どれだけ迷惑かけるか…

それは相手がプロだろうがアマチュアだろうが変わらない。本番、何が起こるかわからない。だから暗譜するくらいの気持ちで練習するから、結構時間は割いてる。

楽譜をもらって、全く練習しないでステージに上がれるわけじゃない。そんな努力、いちいち他人に話すことじゃないと思ってたから言わなかっただけ。何もしてないように思われてるなんてショックだ!


決別

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もう一つ…

私たちは誰かに聴いてもらうために活動している。実際「歌ってください」と依頼されることも増えてきてる。

学校で子どもたちの前であったり、施設でお年寄りの前であったり…

その方たちの前で「口パクで」立つって失礼じゃないの?上手じゃなくてもいい。私たちの「声」をちゃんと届ける必要があるんじゃないの?


結局、この私の訴えにも

「私たちは忙しいの。これ以上の負担はかけさせないで」

という言葉で消されてしまいました。そして代表が言ったのは

「みんな素人なの。みゅうさんみたいにずっと音楽やってきた人とは違う。みゅうさんが今、努力してるって言うけど、みんなが努力しようとするとその10倍、100倍はかかる」

「音楽面だけ見たらそうかもしれない。こんなこと私が言うと偉そうと取られるかもしれませんが、1日24時間はみんな等しく同じです。

私は父親の役目も母親の役目もしなくてはいけません。仕事もあります。子どもも3人います。そのうち持病のある子2人抱えて、通院時間も取られます。頼れる実家もありません。

トータルで考えて、私も皆さんと同じように時間はなかなか取れない中で頑張っているつもりです。それでも努力の度合いが違うと?」

「それができるのが、あなだでしょ?みんなとは違う」


このことがきっかけで、その団体の伴奏を辞めさせてもらいました。


たぶん…人ってどうしても自分を悲劇の主人公にしたがる。

自分が一番かわいそう。できるあの人は神様から特別扱いされているんだ。私は特別扱いされてないから不幸なの。何をやったってダメなんだ。

って思いたがる人が多いように思います。


実際には神様から特別扱い受けたわけじゃない、見えない部分でその人がどれだけ努力したのか気づいていないだけなんですよね。


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