新一という天才少年‐名探偵コナン ファントム狂詩曲‐
この記事には、「3DSゲーム 名探偵コナンファントム狂詩曲」のクライマックスについての重大なネタバレが含まれています!ご自身でプレイもしくは実況などを見た後に、ご覧ください。
皆さんは、名探偵コナンに出てくる主人公「コナン」という少年、「新一」という人物をどのようにとらえているでしょうか?
探偵?頭の切れる子?好奇心が旺盛な子?漫画の世界に違和感を持つようになった大人とかからは、常識的に考えてあり得ないとかも言われていたり?
私は、新一の心理に近づきたいなあ、知りたいなあと常々思っていました。だって、組織のことや、事件のこと、蘭のこと以外にも確かに年相応な雰囲気がしていたのですもの。でも、彼はギフテッドのような扱いを受けているし、年不相応な頭脳を持っている。
なのに、穿った見方をしていないのはなぜだろうか。
その答えが、3DSのゲーム内に見えた気がした。
もちろん、ゲームのシナリオライターの解釈の一つでしかないかもしれない。でも、そう考えると、すべて納得いくのだ。
名探偵コナン ファントム狂詩曲とは
そもそも話題に挙げているゲームは何か説明しよう(注意書きをすり抜けてしまった人のために)
2014年4月17日に発売された3DS用のゲームソフト。
ジャンルは、ザッピング推理アドベンチャー。
あらすじ:町おこしのための推理イベントに参加するために「吾豆大正街」を訪れたコナンたち。推理参加者は携帯アプリ「吾豆なび」を手に入れる。
推理イベント中に、「第一の殺人事件」が発生!混乱の中、「吾豆なび」がハッキングされ、話題沸騰の推理系ゲームアプリ「ホームズ・アプリ」に変わってしまう。犯人と思われる人物からアプリにメッセージが届く……。
アプリ内には前作のとある機能が追加されており……。その真相は?真犯人はいったい誰なのか?吾豆大正街を中心に、事件が起こる!!コナンと平次が本気の直接対決!?
(公式サイトのストーリーを一部加筆修正)
公式サイトはこちらから!
世良ちゃんも参戦している珍しい作品。(今やれば売れると思うんだけど、本編に関わってきちゃったから無理かな?)
感想的なサムシング
賛否両論あるっぽいけど、程よい難易度の謎解きと、ザッピングならではの複雑に絡み合ったストーリーがすごい好み。(視点別の時間を間違えると迷宮入りになることが多かった)
名探偵コナン本編の、過去のifを見ている話が多い印象。特に最初の事件は、火災の中、犯人と対峙するシーン。原作ではいなかった少年探偵団が外から突破口を見つけてくれ、二人とも助かる。……皆ご存知「ピアノソナタ「月光」殺人事件」のオマージュだろう。
他にも4部作のごとく蒼き宝石の輪舞曲に関連してそうな話、過去からの前奏曲から連続登場なキャラ、そして、マリオネット協奏曲で登場したあの人たちが容疑者として出てきたり、あの時の犯人が真相に深く関わっていたりする。作中でも、黒幕がコナンについて調べるうちにその3作品に辿り着いていた。こんなに関連性が見受けられるのはちょっと面白い。
5周近く??しているが、第1章(と位置付ける)の事件前に結構伏線が多い。
例えば、被害者っぽく見えてたあの人が、さらりとあの発言してたりとか。(プレイ済の人がほとんどだと思うけど万が一を避けて)
あと後藤ちゃんは相変わらずかわいい。アニメに出てくれねえかな。JD探偵って。駐在所の中でのやり取りで毎度泣く。コナンが言ったとおり、親しい人のことをちゃんと考えることができた後藤ちゃんは、いい探偵になるよ。早く立ち直って、変わらず探偵しててね。って思っちゃう。
そして、犯人と……黒幕も嫌いになれない性格してた。
終始「家族」の物語だったように思う。エンディングの、最後の推理。死んじゃってるから明らかにはならないけど、不思議な気持ちになる。
声優さんがほぼ、セーラームーンじゃん。名前も絶対そこからとってるキャラが面白い。
天才児の苦悩(黒幕、犯行動機等のネタバレ注意!)
ここからは完全にネタバレ注意です。
今回の黒幕は、まだ15歳くらいの少年だった。犯行動機はいろいろと複雑すぎて、深くは語らないが、コナンと平次が乗り込んでも責めても、心が冷え切っており、なにを言っても響かない。
同じ施設で友人との疎外感。天才ゆえに話が合わない。
自惚れでもなく、確かにその子は「天才」だった。
彼はコナンに同意を求める。
「周りに比べ、頭が良すぎる…いわゆる天才タイプであるがゆえに、疎外感や孤独を感じた事はないか」
このセリフ、実は、コナンは自分から反論できていない。
平次が機転を利かせて、もののけ倉の事件で連絡先を交換していた、少年探偵団……「天才の周りにいる人物」に電話を掛けたことで、宿にいる3人から電話越しに「友達だもん!」「確かに大人びているって思うけど」「いつかは絶対追いつく」と後押しされて、ようやく口を開くのだ。
……私は反論できていないことが引っかかっている。つまり、「殺人」は理解してないけど、「気持ち」は理解できてしまったということ。
このゲームが出てから、だが、単行本87巻「サクラ組の思い出(蘭GIRL/新一BOY)」が公開された。
そこで新一と母の有希子さんは「新しい保育園」に通う話をしている。
保育園が待機児童を急遽受け入れた。とは考えにくい。
エピソードONEや第1巻などの新聞記事をよーく読むと、答えが見えてくる。
まだ、自分の「持てるもの」を新一の扱いは恐らく「世界的有名な推理小説家と有名な元美人女優の息子」。いわば「2世」。「親の七光り」みたいな感覚だ。
だから、孤立していった。実際問題、サクラ組での蘭との初対面は散々だった。孤立してもおかしくなかった。
彼が、今回の黒幕と同じように孤独にならなかったのは、「蘭」、「園子」が近くにいたからである。
もう一度小学生になって、精神が崩れなかったのは、「組織への敵対心」だけではないはずだ。
もちろん、あの子にもそれにあたる存在がいた。……それを、見せつけられる。それでようやく頑なだった心が解けた。
感想の欄でも述べたが、このゲームは原作の「if」演出が多かった。
天才ゆえに、周りを受け入れられず、孤独になった。
……彼は、「工藤新一」のifなのかもしれない。