忘却との戦い
練習で説明したことをなぜ選手はできないのか。
何度も言ったことをなぜ忘れてしまうのか。
どの指導者も1度は感じたことがあるのではないでしょうか?
知っていること、できること、学習したこと
ミーティングで説明し、トレーニングの中でできた。
「今日のテーマに関して、選手はもう完全にできるようになった。必要な時に今日学んだことを発揮できないのは選手の集中力やモチベーションが足りていないからだ。」
指導者も選手もこのように考えているパターンがほとんどです。
もしこの仮説が正しいのであれば、最初の疑問は一発で解決できます。
ただ、そうはなっていない。
その日のトレーニングの最後に狙い通りのプレーができたとしても、それが永続的に学習された証明にはなりません。
「トレーニング中にできた」=「試合中にできる」という式は成り立ちません。
本当の学習はトレーニングが終わってから始まります。
それが忘却との戦いです。
必要な情報を長期記憶に保存し、必要に応じて長期記憶から引っ張り出して使えるという作業を効率的に実行できないのであれば、そのトレーニングに効果はない。
と考える方が良いでしょう。
もちろん、選手の集中力やモチベーションが原因という場合がないとはいえませんが、指導者として問題の原因をそちらに求めるよりも、自分の指導法やトレーニング計画について自問する方が良いと思います。
そして選手とより良い関係性を築く1歩ともなるはずです。
忘却曲線
忘却曲線は 1度学習したこと(赤線)は 1日後には半分程度、6日後にはほとんど忘れてしまっていることを示しています。
時間を置いてから思い出す練習をすることで覚えている割合を残すことができます。
トレーニング計画においても、時間を置いてから思い出すことができるような計画を立てる必要があります。
忘れ始める頃に、記憶の中から必要な情報を引っ張り出し思い出すプロセルを繰り返すことが記憶の定着に最も効果的です。
ポイント1
完璧なトレーニングセッションであったとしても、1回だけでは長期的な学習には 1ミリもつながらない。
ポイント2
トレーニング終了時に評価すると、ほぼ確実に「よく学習できた」という間違った判断を下すことになる。
ポイント3
間隔をあけて複数回のトレーニングを行い、忘れかけた記憶を呼び起こすことで、より効率的に記憶を検索することができるようになる。
エラボレーション
エラボレーションとは
ある知識を記憶の中の他の知識と関連づけるプロセス
です。
記憶の中にある知識と知識の繋がりを強化すること、いろんな記憶と繋がりを作ることで、検索の手掛かりが増えて記憶を引っ張り出す可能性が高まります。
同じテーマを学習するにしても、さまざまな状況を設定し、さまざまな文脈の中でトレーニングすることによってエラボレーションを引き起こすことが可能です。
まとめ
あるテーマを学習し復習するタイミングはいつなのか?
最も効果的なタイミングは忘れ始めた時です。
チームにとって重要な原則であれば、トレーニング計画の中で何度も繰り返す必要があります。
最初は短いスパンで繰り返し、徐々にその間隔を伸ばし、その状況のバリエーションを増やしていくことでより記憶を定着させることが可能になるでしょう。