『ブラック・ジャック』BJが莫大なお金を支払った回って?高額請求の意味とともにエピソード「助けあい」を考える
連載50周年を迎え、今年スペシャルドラマ化が決定している漫画『ブラック・ジャック』。
ブラック・ジャックは名医ではあるものの、手術の代わりに富豪も怖気づくほどの莫大な金額を請求することで有名だ。
そんな彼が、多額のお金を支払った回をご存じだろうか?
BJの義理堅さ、エピソード「助け合い」とは
ブラック・ジャックが多額のお金を支払ったエピソードーーそれが「助けあい」である。
ある国で殺人の容疑をかけられたブラック・ジャックは、蟻谷という男の証言によって救われる。彼がブラック・ジャックを助けた理由はただひとつ、同じ日本人だったからーー。蟻谷がケガをしたときは自分が必ず治すと約束し、ブラックジャックは帰国する。
月日がたったある日、ひとりの男性が電車にはねられたことをニュースで知る。その男性はなんとあの蟻谷だったのだ。彼を助けるため、ブラック・ジャックはすぐに搬送先である札幌市内の病院に向かう。その間、レンタカーの保証金、モーターボートの代金を即金。さらに、病院を患者ごと譲ってもらうため、経営者に現金二十億円を支払うのだ。
約束通り蟻谷のオペをし、命を助けたブラック・ジャック。なぜここまでしてくれるのかと不思議がる蟻谷に「あなたに助けられたときは もっとうれしかった……」と言って去っていく。
なぜ高額の医療費を請求するのか
そもそも、ブラック・ジャックの医療費はなぜ高いのか。◯百万、◯千万円は当たり前。ときには◯億円なんてことも。相場というものはわからないが、おそらく彼の請求額は高いんだろうということだけはわかる。
だが、いつも高額なわけではなく、場合によっては100円だったり0円だったり、風車やラーメン一杯で済むこともある。では、ブラック・ジャックが本当に受け取っているものとはなんなのかーーそれは、「誠意」である。
ブラック・ジャックは、誰よりもいのちを大事にしている男だ。彼は幼いころ、不発弾の犠牲となり、体がバラバラになってしまった。今のブラック・ジャックがあるのは、彼を繋いだ本間先生と、彼の血の滲むような訓練があってこそなのである。
自らに命の危機がない限り、その重さや死ぬほどの苦しみを身を持って感じる機会はないに等しい。だから、ブラック・ジャックはあえて命と金をてんびんにのせたのだ。「これほどの金を払ってでも治してやりたいか?」「一生をかけて払う覚悟はあるか?」「それほどまでに”生”に執着できるか?」と、患者自身や家族に問うために。つまり、ブラック・ジャックにとって金とは、誠意を目視するための測りなのである。
ブラック・ジャックの誠意とは?
ブラック・ジャックはこれまで、数々の誠意をみてきた。「おばあちゃん」では、母のために「一生かかってもどんなことをしても払います!きっと払いますとも!」と言った息子の誠意を。「落としもの」では、三千万円を払うため「おれの手足 内臓 どこでも買ってくれっ」と身体を差し出した夫の誠意を。
ブラック・ジャックは、「助け合い」で蟻谷と"ケガしたときには助ける"と約束を交わしている。だが、きっとこの言葉がなくても、彼は蟻谷を助けたはずだ。なぜなら、ブラック・ジャックは命の重みはもちろん、なにより助けられる有り難みを知っているから。
たとえ遠い北海道にいようとも、数分後には死ぬかもしれない危篤状態であろうとも関係ない。どんな術を使ってでも助ける。ブラック・ジャックが支払ったお金は、蟻谷への感謝と、それに対する誠意の表れなのである。
ブラック・ジャック
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