メモ:OECDによるデジタル課税に関する検討状況の公表(2019年1月29日)
2019年1月29日、BEPS包摂的枠組会合(the Inclusive Framework on BEPS)における議論の成果としてPolicy Noteが公表された。
International community makes important progress on the tax challenges of digitalisation - OECD
※あわせてOECD Tax Talk開催(スライド)
以下の内容について、包摂的枠組会合における合意形成の可能性がある提案として、さらなる検討を行うことが合意された。
2本の柱:①利益帰属とネクサスの問題、②低課税国への対応
(1) 第1の柱は、デジタル化する経済による広範な課題に対処するもので、課税権の配分に焦点を当てるもの
何に注目するかによって意見が分かれている状況:
(A) User contributionを鍵概念とするアプローチ
高度にデジタル化された事業に適用/デジタルサービスの利用者によって生み出された価値を認識/イギリスが支持
(B) Marketing intangiblesを鍵概念とするアプローチ
あらゆる類型の事業に広く適用/利用者に限らず、マーケティング活動など市場国(market jurisdiction)によって生み出された価値を認識/アメリカが支持
(C) Significant economic presenceを鍵概念とするアプローチ
2015年BEPS報告書において言及/簡素で執行可能な解決策/インド、コロンビア、多くの発展途上国が支持
(2) 第2の柱は、なお残るBEPS問題に対処するもの(ドイツ・フランスによる提案/アメリカ2017年税制改革の影響)
無・軽課税所得に対する対抗として、居住地国および源泉地国に課税権を認める。
具体的には次の内容:
- 関連株主(related party investor)の所得として合算する所得算入ルール
- 源泉地国に軽課支払に対する控除の否認(または源泉税)を認める税源浸食支払税
- 二重課税の危険を緩和する調整ルール
これらの提案の検討にあたっては…
- 他の権利を損なうことのない【誤:偏見なき】(without prejudice basis)検討であることに合意している。第1の柱の検討は独立企業原則を超える(beyond the arm’s length principle)可能性を含んでいる。
- 経済的利益のないところへの課税または二重課税を生じないことを合意している。
- 税の安定性(tax certainty)の重要性および実効性ある紛争予防・解決手法の必要性を強調している。
2019年6月財務相会議に報告、2020年に解決策の提示。
2019年3月13・14日にパリで開かれるパブリックコンサルテーションに向け、2月には討議文書の公表を予定
(参考)
BEPS包摂的枠組会合メンバー国(2019年1月時点)
同運営会合メンバー国(2019-2020年)
追記
- "without prejudice basis"に対応する訳を訂正(2019年2月19日)