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『ザリガニの鳴くところ』の書評。湿地の少女カイアに踊らされた

この物語は全編を通して、家庭の事情、とくに父親の酒乱による暴力に悩まされる家族、
特に主人公である「湿地の少女」カイアに感情移入してしまいます。

結論からいうと、悲劇のヒロインともいうべきカイアに、最終的に踊らされます。

さまざまな差別が残る1950年代から1970年代のアメリカが舞台の小説で、村一番の人気者クォーターバック (アメリカンフットボール選手) チェイス・アンドルーズの遺体が発見されるところから物語がはじまります。

それと同時に主人公である、湿地の少女と呼ばれるカイアの悲劇的ともいえる少女期の物語も語られます。

この2つの物語が交互に時系列に語られ、最終的にリンクして、物語はクライマックスを迎えます。

文章構成も面白いし、作者であるディーリア・オーエンズの小説家デビュー作とは思えないほどの完成度に驚きました。

…………って、どこにでもある書評を書いても、まったく面白くありません。

私は、主人公の「湿地の少女カイア」の過酷すぎる人生に、人の親として、また人の子として涙を流しながら読みすすめました。
(実際にはAudible(オーディブル)を使ったので聴いていました。)

ところが、最終的にカイアに対して怒りとも違う、虚無感というか…不思議な感情をもちました。
完全に踊らされた感じですね。

本題に入る前に、念のためあらすじを引用しておきます。

ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアは湿地の小屋でたったひとり生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女のもとを去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく…みずみずしい自然に抱かれて生きる少女の成長と不審死事件が絡み合い、思いもよらぬ結末へと物語が動き出す。全米500万部突破、感動と驚愕のベストセラー。

Amazon商品ページより出典

カイアになくてはならない人物

湿地の少女カイアが周囲の偏見の中で生きていくうえで、必要不可欠な人物は誰か?

もっとも重要な人物である母親(マリア)、一番歳の近い兄である(ジョディ)、食べていくための財源を提供してくれる酒乱の父親(ジェイク)。

ネタバレすれすれになってしまうのであえて書きませんが、上記の家族3人はカイアにとって思い出の中の人物なのかもしれません。

その他の登場人物では、船着き場の店の店主(ジャンピン)とその妻である(メイベル)が、父親であり、母親に代わる存在でした。

では、ジャンピンやメイベルが必要不可欠な人物なんでしょうか?

もちろん生きていくうえで、生活の糧を買える店の店主夫妻ですし、精神的にも支えになっていたことでしょう。

だがしかし…

少女から大人の女性になっていくカイアに必要なのは、やはり歳の近い男性です。
そこに登場するのが、兄(ジョディ)の友達であるテイトだったのです。

テイトはいわゆるいいヤツで、カイアになくてはならない人物になるのに時間はかかりませんでした。

このテイトがカイアの人生において、良きにつけ悪しきにつけ、大きな影響を与えます。
テイトがいなければ、カイアの人生はまったく違ったものとなっていたでしょう。

ここで引用したい言葉があります。

テイトの父親であるスカッパーの言葉なんですが、この言葉がテイトの人格形成において、大きな影響を与えているんでしょう。

本物の男とは、恥ずかしがらずに涙を見せ、詩を心で味わい、オペラを魂で感じ、必要な時には女性を守る行動ができる者のことを言うのだ。

『ザリガニの鳴くところ』より出典

絵にかいたような理想の男性像です。

まあ、このような男性は少女漫画の世界にしか存在しないと思いますが…
作者のディーリア・オーエンズが女性だからでしょうね。

男性が考える「本物の男」とは、ほんの少しズレている気がします。

さておき、テイトが本物の男かどうかは本編で確かめていただくとして、いいヤツであることは間違いありません。

少なくとも、私はテイトのようには振舞えませんし、私の周りにいる男性もしかりです。
そんなテイトをカイアが慕うようになるのは、まったくもって当然と言えるでしょう。

余談にはなってしまいますが、私が考える「本物の男」と言える架空の人物は、キャプテンハーロックです。

すみません、完全に脱線してしまいました。

とにかく、テイトはカイアにとって「本物の男」だったのでしょう。

だった?これについては、本編で確かめてくださいね。

女性を守る男と傷つける男

女性を守る男ってどんな男でしょうか?

一般的に見て、経済力があるとか、包容力があるとか、いつも彼女または妻を気にかけているとか…
さまざまな要素があると思いますが、男性目線と女性目線では多少のズレはあると思います。

いざというときに女性を守るとは、たとえば彼女または妻が他の男性に、肉体的あるいは精神的に傷つけられそうになったとき、正義のヒーロー的に助けに入る…といった感じでしょうか?

私の経験や人から聞いた話を総合すると、危機的状況を回避することに成功したカップルは、あまり長続きしていない感じがします。

一方で、女性を傷つける男とはどんな男でしょうか?

自分の欲望を満たすために女性を傷つけたり、自分の将来を案じて夢を追うため、あるいは他の女性に心を奪うれて彼女または妻を傷つけてしまう…だいたいそんな感じだと思います。

さて、「ザリガニの鳴くところ」でカイアに近づく2人の男性、いいヤツのテイトと金持ちのボンボンであるチェイス。

この2人は守る男なのか、それとも傷つける男なのか

2人とも、本編の中で上記のどこかにあてはまることがありました。

私は男性ですので、女性が求める「女性を守る男」の核心までは分かりませんが、少なくとも女性を悲しませるようなことはしたくないものです。

男らしさの概念は、時代とともに変わってきているんでしょうけど、「ザリガニの鳴くところ」の時代、1950年代から1970年代のアメリカは、男性が女性を守るのは当たり前だったはずです。

テイトとチェイスの行動を見て、いろいろと考えさせられました。

カイアという女性は何者だったのか

悲劇のヒロインとも言えるカイアは、偏見や家庭環境などに翻弄されながら、湿地の自然と共存共栄して力強く生きてきた。

カイヤはいつも一人ぼっちだったが、実は常に味方がいたことが救いになっていたんだと、個人的には思います。

カイアの生きざまを見ていると、どうしても涙が止まりませんでした。

いつもは、ちょっとクセのある本を読むことが多いんですけど、久々にいい本を読んだな、ハッピーエンドでよかったな、と安心していました。

ところが………………………………………………

流れていた涙が止まりました。

結局、私は踊らされていたんですね。
虚無感が私をつつみこみました。

何が起こったかは、本編で確かめてくださいね。

いろんな意味で、これほどまで心を奪われた作品は久しぶりでした。
ディーリア・オーエンズ、次回作がとても楽しみです。

悲劇のヒロインとも言えるカイアは、偏見や家庭環境などに翻弄されながら、湿地の自然と共存共栄して力強く生きてきた。

カイヤはいつも一人ぼっちだったが、実は常に味方がいたことが救いになっていたんだと、個人的には思います。

カイアの生きざまを見ていると、どうしても涙が止まりませんでした。

いつもは、ちょっとクセのある本を読むことが多いんですけど、久々にいい本を読んだな、ハッピーエンドでよかったな、と安心していました。


ところが………………………………………………


流れていた涙が止まりました。

結局、私は踊らされていたんですね。
虚無感が私をつつみこみました。

何が起こったかは、本編で確かめてくださいね。

いろんな意味で、これほどまで心を奪われた作品は久しぶりでした。
ディーリア・オーエンズ、次回作がとても楽しみです。


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