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「ウェルビーイング」の視点で「マーケティング」を見直してみる
こんにちは、マイソース代表取締役の谷吉です。
マイソースでは、立ち上げ期・改革期のマーケティング組織に向けた戦略立案や組織づくりの支援を行っています。今回は、ご支援を行っている中で、最近考えている「ウェルビーイングマーケティング」について書いてみようと思います。
多くのマーケターが行き詰まりを感じている
多くのご支援先から、最近こんな声をよく耳にします。
「競合も似たようなサービスを出していて、広告やキャンペーンでしか売上を上げられない」
「いろいろなプロモーション施策はやってみているけど、どれも費用対効果が合わない」
「サービスのお客さんのイメージが掴めない」
多くの企業が、競合とのパイの奪い合いになっている結果、広告費の大量投下や過度の値引きなどでしか勝ち目を見つけられていないということが起こっています。
この状況を打開する一つの打ち手が私は「ウェルビーイングマーケティング」だと考えています。
ウェルビーイングマーケティングとは
私が考えるウェルビーイングマーケティングを一言で表すと、
「企業がウェルビーイングになるプロセスそのものがマーケティングである」という考え方です。
ここで強調したいのは、「ウェルビーイング=社会貢献活動をすること」「健康食品を作ること」などに限定されないという点です。もちろん、企業が社会に役立つ活動を行ったり、人々の健康増進に貢献したりするのは素晴らしいことですが、それらは単なる一例にすぎません。
ウェルビーイングマーケティングは、企業が自社のあり方を見直し、社会や顧客とより良い関係を築くことで、結果として持続的な価値や成果を生み出すプロセスそのものを指しています。
従来のマーケティングが数値目標やシェア拡大を至上命題とするあまり、価格競争や過度な煽り文句に依存してしまう場面もあるのは事実です。ですが、本来のマーケティングは「社会や顧客にとって価値あるものを創り、伝え、届け、関係を築く」活動であるはず。
その本質を改めて捉え直し、企業のウェルビーイングと結びつけるのが、このウェルビーイングマーケティングという考え方の狙いです。
そもそもウェルビーイングとは?
近年よく耳にする「ウェルビーイング」というキーワードを、一言で定義するのは難しいですが、「人が心身ともに健康で、自分らしく充実感を得ながら生きている状態」を表す言葉だと、私は捉えています。
ここではもう少し踏み込んで、ウェルビーイングとは「さまざまな関係性が良好である」ことを重視したいと思います。例えば、以下のようなことです。
自分との関係
自分が何をしたいのか、何にやりがいを感じるのかを理解し、自分自身に納得感をもっている
心身ともに健康で、「自分らしさ」を保てる環境が整っている
仕事仲間との関係
同じ組織やチームで働く仲間と、相互に信頼し合い、前向きに協力できる関係である
互いの強みや価値観を尊重し、意見を出し合って仕事を進められる環境がある
家族との関係
家族における自分の役割を認識し、それぞれの役割を尊重している
家族のやりたいことや実現したい理想を一緒に考えていく場があり、安心を感じられる
ウェルビーイングといっても、「健康でいること」「ストレスがないこと」といった狭いイメージだけにとどまらず、周りとの関係性をいかに磨いていくかという視点が非常に大切だと考えています。
企業がウェルビーイングであるとは?
企業にも同じように、「自社との関係(自分たちがやりたいことや強みの理解)」「顧客との関係」「競合との関係」「パートナーとの関係」など様々な関係性が存在します。企業がウェルビーイングな状態というのは、これらの関係性がバランス良く、そしてポジティブに保たれていることではないでしょうか。
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自分(企業)との関係
企業理念やビジョンが明確で、「なぜこの事業をやるのか」「何のために存在するのか」に社員が共感している。顧客との関係
競合との差別化を価格や過度な宣伝ではなく、自社ならではの価値で訴求し、信頼関係を築いている。競合との関係
過度に市場を奪い合うのではなく、互いの強みが発揮されることでマーケット全体が発展し、自社の存在意義もより明確になる。パートナーとの関係
社員同士や外部パートナーとの間でオープンなコミュニケーションがあり、協働によるイノベーションを生み出せる環境が整う。
この状態こそが、企業にとってのウェルビーイングだといえます。そして、このウェルビーイングの実現こそ、一つのマーケティングであると私は考えています。
なぜウェルビーイングの実現がマーケティングになるのか?
なぜウェルビーイングの実現がマーケティングになるのか、マーケティングのそもそもの定義から考えてみます。
マーケティング(英: marketing)は、「顧客・クライアント・パートナー・社会にとって価値あるものを創り、伝え、届け、交換するための活動・プロセス」と定義されています。実際は、売上や商談数などの数値ばかりが注目されがちですが、本来は「関係づくり」や「価値の共創」がマーケティングの根幹にあるはずです。
一方、ウェルビーイングの視点から見ても、良好な関係性を構築することは極めて重要です。企業のウェルビーイングとマーケティングの本質が、「自分や顧客、競合、パートナーとの関係性をどうデザインしていくか」に帰結する点で共通しているのではないか、と私は考えています。
ウェルビーイングマーケティングは最大の差別化戦略
ウェルビーイングマーケティングの実現は、もちろん企業活動につながっていなければ意味がありません。私は、ウェルビーイングマーケティングが実は最大の差別化戦略になりうると考えています。
機能や価格だけでは差別化が難しくなってきた今、企業が自社の「在り方」や「想い」を顧客に伝えることが、一層重要になっています。ウェルビーイングな状態を目指す企業は、共感や信頼を生み出す「物語」を持っていることが多く、これが差別化の大きな要因となるのです。
しかも、ウェルビーイングな組織であれば、社員が自分の仕事に納得感をもち、社内外との関係性もポジティブに保てます。結果として、組織の生産性やイノベーション力も高まり、業績にも好影響をもたらします。
最後に
私が「ウェルビーイングマーケティング」を考え始めたのは、対話に関する著書も出されており、武蔵野大学で「ウェルビーイング学部」の教授を務めている中村一浩教授との簡単な対話の中でした。(中村さんが登壇されたイベントレポートの記事はこちら)
マーケティングに関する話をしている中で、ウェルビーイングと実はとても接続するのではないかと盛り上がり、これは私自身のやりたいマーケティングの形にも近いと盛り上がり、今回まとめてみたという背景です。
なので、まだウェルビーイングマーケティングには、まだ厳密な定義はありません。そのため、共感していただける皆さまと一緒にこの考え方を実験して形にしていきたいと思っています。
ウェルビーイングマーケティングは、正解があるプロセスではなく、むしろ企業それぞれが持つ背景や強みを生かしながら、共に作り上げていくものだと考えています。
そこで、より深く考える場として、中村教授との対談セミナーを、2/5(水)20:00~21:30で開催することにしました。セミナーでは、よりこの定義を深掘りしていきたいと思いました。
「ウェルビーイングマーケティングを実現している会社事例」
「ウェルビーイングに近づくためのステップ」
などをさらに深く掘り下げていく予定です。
申込は、下記リンクからご確認ください。ぜひご参加いただき、一緒に「ウェルビーイングマーケティング」を考えていきましょう。
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