【取材記事】夫婦二人三脚で広げていくクラフトビール業界のアップサイクルの輪 横浜発祥のビジネス、目指すは海外進出
【お話を伺った方】
■モルト粕のアップサイクルのアイデアは、横浜散歩がきっかけ
多田:まずは創業経緯をお伺いできればと思います。
松坂さん:夫婦2人でやっている会社なのですが、「kitafuku」という会社名は私が福岡出身、妻が北海道出身なのが由来です。お互いの地元の頭文字をとって「kitafuku」という名前にしました。お互いの地元をはじめ、関わる地域や企業さんの想いを大切にしたいという気持ちを込めてこの名前で創業しました。
企業理念は「『好き』と『得意』からうまれる”やってみよう”を二人三脚で応援する」です。企業さんからの「やってみたい」の相談を、企業さんと弊社の二人三脚で共に取り組んでいきたいという想いを大切にしています。
多田:素敵な名前ですね。
松坂さん:ありがとうございます。私も妻も元々システムエンジニアで、メイン事業としてはシステム開発やIoTデバイス製造などのIT事業です。
そういった中でクラフトビールペーパーをなぜ始めたかというと、私たちが住んでいる横浜市がSDGs未来都市に選定されており、特にフードロスが問題になっている地域だと知ったことがきっかけでした。コロナ禍になってから、街を歩いていると飲食店などの休業も目立ち、仕入れが止まり行き場を失くした食品廃棄の課題についてのニュースがより目につくようになりました。
この課題をどうにかできないか話し合う中で、前職の同僚が廃棄になってしまうもの(お米、ワインの籾殻、コーヒー粕など)を紙に混ぜる研究をしていたことを思い出しました。彼と連絡を取って、紙を作ろうという話になったのは割とすぐでした。
■なぜモルト粕なのか?
松坂さん:横浜はビール発祥の街で、クラフトビールを造っている会社がたくさんあります。
1番初めに声をかけた横浜ビールさんは、地元の農家を応援したり、ビールに関わっている人を取り上げることを大切にされていて、その姿勢にすごく共感して何か一緒にやれないか考えました。ビールを醸造している過程で出てくるモルト粕が大量の廃棄になることや、実は栄養素がとても高いのに廃棄されてしまうことを聞いて、「紙に混ぜてみませんか」と提案して生まれたのがクラフトビールペーパーなんです。
多田:様々なご縁で繋がったのですね。
本業のITとは分野が異なると思うのですが、不安やハードルはなかったのでしょうか?
松坂さん:そうですね、全くこの分野は知見がなかったのですが、何ができるか手当たり次第で進めていったらここに至りました。デザイナーも、北海道つながりの友人と話していたら、横浜の課題についてお互い共感して今一緒にお仕事をするようになりました。本当に人のご縁で動いています。
多田:面白いですね。元々SDGsにご興味はあったんですか?
松坂さん:私の出身の北九州市がSDGs未来都市なんですが、今住んでいる横浜もSDGs未来都市だと知って興味を持ったのがきっかけです。SDGsには元々馴染みがありましたね。
多田:なるほど。そういった繋がりもあるんですね。
■モルト粕の取り扱いの難しさに直面中。
また、SDGsの進捗を数値化するには…
多田:SDGs活動で感じている課題や、mySDGがフォーカスしている「見える化」といった観点について困難なことはありますか?
松坂さん:ビールを作っている過程で出てくるモルト粕は水分を多く含んでいるので、脱水や乾燥について検討しています。モルト粕の発酵を防ぐため冷蔵やチルド便が必要になってくるので、物流運搬コストがかかってしまいます。そうすると、果たしてこれは環境に優しいのかという疑問も出てきます。
多田:そうですよね。例えばサステナブルに開発した商品も、梱包などが多いと「そもそもサステナブルなのか?」と思ってしまうことがあります。難しい問題ですね。
松坂さん:海外の事例などを探しているんですが、物流運搬は世界的にも課題なんだなと感じている最中です。あとは「どれだけ環境に優しいのか」を数値化ができていないのが課題です。お客様からもよく「このクラフトビールペーパーを使うことで何にどれだけ貢献できているのか提示して欲しい」とお問い合わせがあります。
多田:問い合わせてくるお客様はどんな方が多いのでしょうか?
松坂さん:サステナブルに取り組もうとされているブルワリーさんや企業さんからお問い合わせいただきます。サステナブルウォッシュという言葉もあるように、今後は「本当にサステナブルな取り組み」がどうかが求められます。弊社の取り組みについては必ず説明させていただいておりますが、予め数値化することでお客様の安心や信頼に繋がるんだなと感じます。数値化は今後の課題です。
■アピールしたい成果
多田:アピールしたい成果はありますでしょうか?
松坂さん:クラフトビールペーパーを使うことで生まれる付加価値は、どんどん広めていきたいです。例えば、名刺交換する際にクラフトビールペーパーが一つのストーリーになるんです。「この名刺はビール生産の工程で出てくるモルト粕で作ったんです」ということを相手に伝えると、相手にとって「こんな取り組みがあるんだ」と会話のきっかけになり、印象にも残ります。こういったことがお客様に喜ばれて、お問い合わせが増えています。
多田:良いものが作れたということなのですね。
松坂さん:そうですね。あとは「本当に使ってもらえるモノを作りたい」と思っています。
多田:「本当に使ってもらえる」とはどういうことなのでしょうか?
松坂さん:色々作りすぎても、実際に使ってもらえるモノじゃないと在庫が残ってしまって意味がなくなってしまうんです。そのため、ブルワリーさんから「これを作りたい」という意見をいただいてから、必要な分だけ届けるようにしています。使われないで捨てられてしまうのも無駄になってしまいます。そうならないよう、ヒアリングしながら作っていくイメージです。
多田:なるほど。実際に必要な分だけ使っていただいてる実感はありますか?
松坂さん:そうですね、出来ているかと思います。
印刷自体は家庭用のプリンターや会社のレーザープリンターでも出来るので、印刷していない状態の紙をストックしておいて必要な分だけシェアするようにすると、「印刷して無駄になる」といったこともなくなります。
多田:それはいいですね。集客などはどうされてるんでしょうか?
松坂さん:問い合わせがほとんどで、営業はゼロに近いです。プレスリリースとnoteを書くことはしています。
多田:すごいですね。環境にやさしい取り組みが評価されているのでしょうか?
松坂さん:そうですね、「取り組みが素晴らしい」とどんどん広めてくださいます。クラフトビール業界は独特で、横並びの意識が強いんです。本当にいいものは独占するのではなく紹介し合っています。競合意識が薄くて、みな「クラフトビール業界全体を盛り上げていこう」という意識を持っています。
多田:なるほど。では名刺交換などをきっかけにブルワリーさん同士の紹介で繋がっていってるんですね。
松坂さん:そうなんです。ありがたいことに、ビアジャーナリストの方だったり、今月からはジャパンビアタイムスさんに紹介していただいています。
多田:素晴らしい繋がりですね。
■目指すは全国拡大 本業のITスキルを活かし、ビアマップ作成も目指す
多田:今後の展望をお聞かせください。
松坂さん:今後は全国のブルワリーさんや、ビールを取り扱っている飲食店さんにも使っていただきたいと思っています。
また、使っていただいているブルワリーさんを紹介するようなクラフトビアマップをWEBやアプリで作りたいとも思っています。ここでようやく私達の本業のエンジニアの力が活かせるかと思います!
ブルワリーさんの想いや取り組みを伝えられるビアマップを作りたいですね。
多田:いつ頃できる予定なのでしょうか?
松坂さん:できれば今年中に作りたいと思っています。
あとは海外にも展開したいですね。以前ドイツのメディアが取材してくださって、それをきっかけに海外のメディアにも取り上げていただいているので、海外にもクラフトビールペーパーの技術や取り組みを展開していきたいです。
多田:これからの発展がとても楽しみです。ワクワクするお話をありがとうございました!
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