「旅も人生も、まだまだつづく」2020年10月(パリ~リヨン往復):「TGV(フランス高速鉄道)乗車記録」エピローグ
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見出し画像:リヨンの街を見渡せるフルヴィエールの丘に向かうケーブルカーからの眺め。
*本シリーズでこのエピローグのみ、本文中に写真があります。
*駅や列車の設備、システムなどは、ひんぱんに変更されます。
記述内容は、あくまでも乗車当時のものであることをご理解ください。
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シリーズあとがきにかえて
プロローグの話はあまりにも古すぎ、本編も情報としてはどんどん古びたものになっていくだろう。
しかし、だからこそ、記録として残す価値があるのではないかと考えた。
日本に住んでいて、10年連続でフランスへ行き9年連続でTGVに乗っている人間は、それほど多くないはずだ。
また、1990年にTGVで南フランスをまわった経験があり、現在も仕事とプライベートの両方で深くフランスとかかわっている日本人が、そこらじゅうにいるとも思えない。
フランスの旅行記は、無数にある。
美しい写真が添えられた記事も、世の中にあふれるほどだ。
それでも、私はこれまでの旅を文章の形で残したかった。
だが、書くからには、多少とも独創的なものにしたい。
それで、TGVの乗車記録という形をとることにした。
このシリーズには、それなりの意味があると自負しているが、本当のところ、意味などなくてもいい。
読み物として楽しんでもらえれば、それで満足だ。
記憶違いや勘違い、思いこみなどはあるかもしれないが、すべて私自身が実際に体験したことをもとに書いている。
ささやかなこれらの物語のなかでTGVの旅をご一緒してくださったことに、心からの感謝をこめて。
エピローグ本編
じつのところ、エピローグにはとっておきの路線と座席の体験を書くつもりだった。
すでに乗車券も購入してあったが、乗車日の約3週間前に、目的の土地へ行くことができない事態が起きた。
急いで行き先を変更しなければならない。
即座に思いうかんだのが、フランス南東部の都市リヨンである。
リヨンへは、2014年10月に一度、パリから日帰りで行ったことがある。
そのときの乗車体験は、第5話「幻のサービス」に記した。
パリから日帰りでは物足りなく、いずれは泊りがけで、と思っていたが、まだ行ったことのない都市を優先していたので、再訪はだいぶ先になると考えていた。
ところが、思いがけず、希望が早くかなったのである。
リヨンの手ごろなホテルを予約し、フランス国鉄のサイトにアクセスすると、時間帯によっては、1等席のひとり掛けでもまだ安い乗車券が残っていた。
そこで、いそいそと往復分を購入して、出発する日をわくわくしながら待ったのである。
***
2020年10月も、私は例年どおりフランスで休暇を過ごした。
しかし、このときフランスへ行くことは、必要最小限の人にしか話さなかった。
その理由は、おわかりいただけると思う。
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