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会社を辞めて大学に戻って博士課程の学生になった話①<決起編>

「やっぱり仕事辞めよう。大学に戻ろう。博士になろう」

そう一念発起した数年前。

こんにちは、晴れて博士になりました。生物系の研究者の端くれです。

私は農学系の大学院の修士課程を経た後に就職し、2年働いた後に退職して大学院に戻り、博士号を取得しました。
https://note.com/mypacebiomuswri/n/n0235819251f7

一度就職した後に大学院に戻る、というパターンで博士になる人はなかなか少ないのですが。とはいえ、最近では全く0ということでもないみたいで、よーくよーく探してみると少数派でも確実に存在しているようです。

けれどもやはり、少数派は少数派。

お金のことや将来のこと、知りたいのに誰に聞いたらいいんや!とか。聞いてみたけど意味がわからん!とか。四苦八苦しながら博士になりました。

ここでは、そんな私の20代奮闘記を書きたいと思います。2015~2020年頃のお話です。

全部で5つの記事に分けて書こうと思います。
(今後も加筆訂正予定)

①「決起編」では、会社員をしながら博士課程の学生になった経緯について書きます。(会社で研究をすることの問題点や、会社員をしてから博士になる場合の懸念点についてなど。)

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そもそも、博士号って何?

博士といっても、何のことだかよく知らない人もたくさんいると思います。

ここでの「博士」とは、博士号の学位を持っている人のことを指しています。他にも、「ドクター」と呼ばれていたりもします。また、名刺の裏に「PhD」と書いてあったりします。

大学を4年間で卒業して「学士」となり、大学院で修士課程を2年間で修了して「修士」となり、さらに大学院で博士課程を3年間(時には3年以上)で博士号の学位を取得すると「博士」になれます。

大学院では研究室に所属して研究活動に励むことになり、博士号取得は研究者の登竜門である、という捉え方が一般的です。大学や研究所で研究者として働くためには博士号を取得していることが前提です。

また、最近ではかなり難しくなってきましたが、修士で就職した会社の研究開発部などで研究業績を積んで博士になる人もいます。

なぜ会社ではダメなのか?

実は、私が以前にいた会社は働きながら博士号を取得することが可能でした。それなのに、なぜ私は大学院に通って取得することを選んだのかといいますと。

理由はたくさんありますが、シンプルにして最大の理由は、生物学に関わる仕事をしたいと思ったからです。

その会社での仕事は、生物系ではありませんでした。なので、博士号を取得できるとしても生物以外の分野。転職も考えたのですが、なかなか同業他社以外の会社に行くのは難しいらしい。

え、じゃあ、このままだと私、もう生物学に関わる仕事は一生できないかも……?

それに気がついてしまったが最後、人生に迷いが生じてしまいました。

そして、理由はもう一つ。研究をやりたいと思ったからです。

私がいた会社では確かに博士号を取得できる可能性はありましたが、実際はなかなか研究活動ができる環境ではありませんでした。

これはあくまで私の感じることですが、おそらく、どこの企業も一昔前ほど研究開発にお金をかけていないと思います。それに伴って、会社のお金で社員に学位を取得させよう、ということも少なくなったと感じます。

私が以前いた会社でも、本業の仕事をメインでしながら就業時間外とか休日とか、時間の合間を縫って研究活動をするスタイル。それを若い頃から続けて地道にデータを積み上げて論文を執筆して、40~50代でやっと博士号を取得できる、かも、という感じでした。

その会社自体はとても良い職場で、人にも環境にも本当に恵まれていました。けれど、人生は一度きり。そして、20代は10年間だけしかない。若いうちに博士になって、生物学に関わる仕事がしたいなあと思い、大学に戻ることを真剣に考え始めました。

博士になるために、避けて通れない3大プレッシャー

さて、そんなわけで会社を辞めようと思い立ってみたのですが、そうすると湧き上がってくるのはお金と将来に対する疑問と不安の数々。

なんだかんだ、思い立ってから1年くらいは悩んで悩んで悩んで。今までの私の人生(短いけど)の中では一番将来について考えて迷った苦しい時間でした。懐かしい。

そもそも、就職していた、いないに関わらず、大学院の博士課程に進む誰もが漏れなく抱えることになる不安要素は次の3つです。

①お金
博士課程の期間(3年、時にはそれ以上)の生活費はどうするか

②将来のキャリア
企業の就職先はあるのか(学部~博士課程までストレートに行っても社会に出るのは27歳、一般的に就職活動は難航しやすい)、それとも研究者の道に進むのか(不安定で薄給の時期が長く続く可能性があり、仕事として長らく食っていけるようになるのは狭き門)

③研究業績
実験をして研究成果を出し、論文としてまとめて国際的な科学系雑誌に発表する(これができないとそもそも博士号がもらえない)

特に、「会社で働いた」ことによりこの3大プレッシャーにハンデが生じるならきちんと事前に知っておきたい。例えば……

住民税とか国民健康保険とか、辞めた一年目って結構払わないといけないよね?

というか、前年度に収入あると奨学金がもらえないとか、授業料免除が通らないとか、そういう不利なことはないのか?

就活って新卒採用?中途採用?

大学とかの研究者の道に進むとしても、年齢上がると研究費取りにくかったり、ポストなかったりするのかな?

……など。

けれど、こういうこと、調べてみても全っ然情報がない。もしくは、あっても難しくてややこしくて非常にわかりにくい。

何はともあれ、まずは指導教員に相談を

こんな感じでいろいろと不安なこと、よくわからないことがあったのですが、とりあえずまず、修士課程で指導教員だった先生に相談しました。

私は、もしも博士号を取るならば修士課程でお世話になった研究室で、と思っていました。それなので、まだ本当に会社を辞めるのか迷っている段階でしたが、入社して半年くらい経った頃にお世話になった指導教員の先生に連絡をして研究室を訪ねました。

今思ってみると、迷っている段階で先生に相談するというのは非常に重要なことだったと思います。

というのも、大学教員とは、誰であれ、いつ別の大学、研究室に移ることになっても不思議ではない職業です。若い先生だと、たまたま空いたポストに栄転して別の大学に移ったり。年配の先生でも、定年退職の前に研究環境や待遇のよりよい大学に移ることがあったり。

言わずもがな、自分が博士号を取る前に指導教員がいなくなってしまうのは非常に困る。

そして、もう一つ。

私は博士課程に進むならば、修士課程の頃のテーマを継続しようと思っていました。が、そもそも、そのテーマで論文を書けるほどのデータの取得が見込めるのか?という観点は、恥ずかしながら、先生に指摘されるまで完全に私から抜け落ちていました。

これも言わずもがな、超重要。

博士課程に進むことを選択肢の一つとして考えるならば、自分自身が迷う以前に、これらのことについて先生と相談することは必須だと思いました。

また、他にも、お金や学位取得後のキャリアプランに関する学内の情報や、先生ご自身の体験、研究室OBの話など、さまざまなお話を先生から聞くことができました。非常にありがたい。よい先生に恵まれました。

先生方は博士号を取得した大先輩で、長らく大学、研究の世界にいる方々。ネットやら何やらで調べるよりも、具体的、現実的なことをよくご存じです。

博士課程の学生は、とにかく自分で道を切り開いていく行動力がとても重要。当時、迷いながらも指導教員に相談したことは、気後れするような人にも躊躇わずに相談してみることの大切さを学んだ第一歩だったと思っています。


他にも、役所に行ったり、大学事務に問い合わせたり、詳しい公務員の知人に聞いてみたりしてお金のことを調べて。途中で学振DC1なんかも出してみたりして(不採用でしたが)。

いろいろと悪戦苦闘しましたが、でも少しずつ具体的に博士課程に戻るためにすべきことが見えてきました。そして、2年間で会社を退職して大学院に戻りました。


②「生活とお金編」では、博士課程の学生としてどうやって生計を立てていたのかについて書きます。

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会社を辞めて大学に戻って博士課程の学生になった話
②生活とお金編
https://note.com/mypacebiomuswri/n/nd4d8344b0662
③企業就職?アカデミア? 準備編
https://note.com/mypacebiomuswri/n/nb691e206919a
④企業就職?アカデミア? 実践編
https://note.com/mypacebiomuswri/n/n6572d7b4dbf9
⑤ふりかえり編
https://note.com/mypacebiomuswri/n/n3daccb226d6c

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