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「龍神考」第一部の締めくくり

 本稿をご覧いただき、またこれまでの「龍神考」やそれ以前の博多の鬼門などを取り上げた一連の記事をお読みくださり、誠にありがとうございます。

 特に「スキ」の評価をくださった方々には、拙稿の中にも何がしか有益なものや参考になるものがあったのかも知れないと思うと、評価をいただいたことへの感謝の念と嬉しさもひとしおです。

 しかし昨日4月21日投稿の「龍神考(33) ー龍神の直行と蛇行ー」をもって、今年1月から続けてきた「龍神考」を第一部として締めくくることにしました。

 前稿の最後に、龍女の豊玉毘賣と玉依毘賣、天孫の男系血脈の鵜葺草葺不合命と五瀬命、稲氷命、御毛沼命、若御毛沼命(後の神武天皇)は、魚類〜人類までの各種生物の誕生についての古代日本人の自然誌的な思想も反映する神格であるという、九年前の2015年に文明地政学協会(東京)発行の情報誌『世界戦略情報 みち』(昨年12月15日付で終刊)で提示した説に触れましたが、龍を「あらゆる動物の祖」とする古代中国の思想から「龍神考」を始めた時から、日本神話のこの内容で一つの区切りとする予定でした。

 そして実際に書き始めると、次々と新たな閃きや新たな知識に恵まれ、自分の中に溜まっていた数々の情報が続々と有機的に結びついていく体感に包まれていきました。

 今更ながら「書く」ということの大切さを改めて実感しましたが、当初は2月頃には一区切り付ける予定が、3月にずれ込み、結局は4月下旬にまでかかり、当初取り上げる予定にしていた内容でいまだ言及していないものも多々あります。

 閃きがあれば、それを確認するための追加の現地調査や取材も必要になり、また各回のボリュームも増えていき、後半は投稿のテンポも落ちてきました。

 ただ時期的に他に優先すべき課題もいくつか迫っているなどの諸事情から、これらの現地調査や取材を進めるのがしばらく難しくなりますので、今月中に一旦このテーマから離れることにし、当初予定していた日本神話の自然誌的思想までは少しでも言及できることを目標としてきました。

 しかも「33回」で終わらせたのは、龍神信仰は観音信仰とも関係が深く、観音様は衆生の苦悩に応じて三十三通りのお姿に変身されることを念頭に置き、この回数で一区切り付けることにしたためですが、そのために回を重ねるごとにボリュームが増えていき、同時に読みにくさも増していったとしたらすみません。


 とはいえ、最後の記事に書き忘れていた点があることに投稿後に気づき、本日は2024年甲辰4月己巳22日丙辰、旧暦2024年甲辰3月戊辰14日丙辰の「龍蛇の日」と謂うこともできますので、「龍神考」に若干の補足をします:

 龍女の豊玉毘賣が出産時に「和邇」のお姿で「匍匐(は)ひ委蛇(もこよ)ひき」と記す古事記の中の「和邇」の正体をワニ、サメ、舟などとする諸説について、ワニだけでなく、軟骨魚類のサメも「匍匐ひ委蛇ふ」、つまり蛇行する蛇のような動きで泳ぐという興味深い情報に触れましたが、帆船も風上に向かって進む場合は風の方向に対して蛇行するように進みます

 下記の『B&G財団』のサイトの「ヨット講座 Lesson2」には、ヨットが風上に向かってジグザグに進行することが分かりやすく解説されていますが、この動きは直行がジグザグに連続して蛇行に見えるものの、もっと遠くから俯瞰すると目的地に「直行」しているとも言え、まさに「龍神の直行と蛇行」といった感じです。


 すなわち、ワニもサメも帆船も「匍匐ひ委蛇ふ」動きが共通項であり、「和邇」=「龍」の本質であることを古事記は暗示しているようにも思われます。

上空を「匍匐ひ委蛇ふ」龍雲(2023年12月9日16時頃、新宮町の今池にて)


 したがって「和邇」=ワニ説、サメ説、舟説のいずれも一理あると同時に、そのいずれかに限定することには無理があり、これらを同時に念頭に置いて「和邇」という表記が創作されたと考える方が、「和邇」の実相により接近することになると思います。

 そしてそう考えた方が、「あらゆる動物の祖」である龍を九種類の動物のハイブリッドとした古代中国の発想にも通底することになるでしょう。

 また「九種類」の「九」という数字も、「龍神考(26) ー龍の数秘は八と九ー」の執筆中に「九」が「竜蛇」を意味する字だと知ったことも振り返ると、なるほどと納得がいきます。


 いずれ「龍神考」第二部は日本神話の自然誌的思想から始めることになるかもしれませんが、今後しばらくは特にテーマを絞らず、自己流の日本の信仰思想の探究姿勢やこれまでの研究で一般論的に気づいたこと、それらを踏まえた日本の現状、その他日々思いつくことなどについてランダムに投稿していくつもりです。

 読者の皆さんに何がしか有意義なものがあれば幸いです。
 

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