指す将順位戦オープン戦 vsフェローチェ

俺より強い奴に会いに行く

指す順9thが終わってはや2ヶ月になろうとしている。
自分の対局は11月にはとうに終わっていて、また年を跨いだこともありかなり遠くのことのように感じられる。なお8thや9thの自戦記がデススタックになっているが、折角だからあったかいうちに書きたくてさ……

もっとバリバリなプレイヤーなら、大会に出たり、24やウォーズに邁進して来期を待つのだろうが……如何せん手頃な、そしてはっきりしたターゲットがなくなると人はスローダウンしてしまうものである。このまま何もせず来期を迎えるのはマズいけど、モチベがなァ……などと思いつつTwitterを見ていたら、「指す順オープン戦」なるものがあるらしいと知った。
……なるほどこれは良き企画。というのも、指す順はクラス分けがなされているので、別クラスの人とは直接的な交流がなされないからだ。自分は出場だけでなく放送局等の企画にも参加させてもらったのでまだ交流した方かもしれないが、それでも不足を感じるところはある。そこでこの企画であれば、本来マッチングしない御仁ともバトル&交流できるわけである。
そして将棋が強くなりたかったらどうすればいいか、自分は身に染みて知っている。

――自分より強い人にミンチにされれば良いのである。
強者に食い下がり、ワンチャンを狙いながら、やられ方を見て、感想戦でその強者の考えを聞く。
さながらフルパッケージ的であり、上達においてかなり効率の良い方法に違いないのだ。

準備の破綻

ということでTLで募集していたフェローチェさんにお願いしお受けいただいた。その時の心境は以下の画像の通りだ。

左がワイ。この画像の2人くらいのランク差はあった

指す順の将棋を観戦した印象は、異形の受けを得意とする怪物
尋常な攻撃では圧殺され、受け潰され、チャンスは永遠に来ないだろう。
まず序盤~中盤入口で五分以上である必要があると強く感じたところだ。
となれば指す順9thと同様、相手の棋譜から戦型を予想し、相手の得意系を迎撃できるよう準備すべし。
――が、ここでこの準備方法は破綻する

そう、いわゆるオールラウンダーだったのである。
我々アマチュアはどうしても戦型採択に偏りが出てしまうものなのだが、彼については相当に散っており、全部に準備しようとしたら次の指す順が始まってしまうくらいかかる
ここに迎撃型の準備の弱点がある。相手の戦型に幅があると効くかが運ゲーになってしまうのだ。これが来期本番前に知れたのもまた大きかったと言える。来期はこういう相手に対してこちらが能動的に押し付けられる戦法を準備したいところだ。
一応、フェローチェさんの採択率の高い戦法のうち上から2つくらいを予習したが、本番も準備の甲斐なくそうはならなかった。

一方でもう一つ準備というか、このフェローチェさんとの1局をきっかけに再開したものもある。24の野良対局だ。
正直腰を落として指すのは疲れるのであんまりやっていなかったのだが、これをやらないと身体に15分60秒および秒読みの感覚が戻ってこないので仕方がない。ウォーズやクエストの切れ負けは終盤の読みにマイナスの影響ばっかり出るので、バランス良く長いのも指さないといけない。
折角きっかけをもらったわけだし、これについてはこれからも続けていけたらいいと思う。

通い慣れた道

迎えた本番。色々考えを巡らせたがそれらは幻と消え、例のアレに進んだ。

第1図

△7二金。普通の手の中の1つではあるが、如何にもフェローチェさんらしさを感じる選択だ。玉が薄くなることに加え左右分裂形になる可能性もあるが、守備力に優れており筋違い角側の捌き合いが成立しづらくなるメリットがあって一長一短である。当然油断ならない。
ということで、あの金をリスペクトしヤンチャを控えつつ駒組をすすめる。

第2図

こちらは高美濃に構えることができたのに対し、相手の玉はあまり固めることができない。歩越しの銀は迫力こそあるが、実際に運用するのは難しい。
例えば△5五銀左と出て次に6五歩を狙うような手は▲5六歩と追い返しておいて何も起こらない。角道を止めさせたとも言えるが善悪不明であり、局後の感想戦でもそういう手は見えたが指さなかったとのこと。

序盤ではあるが、持ち時間のこともありここでは僅かに良さを感じていた。

手詰まりの影

少し進んで第3図。着々と陣形が整っていくが、嫌な空気が漂ってきた。

第3図

直前の△6二飛は、7三金~8二飛として戻っておいてからの手、反復横跳びである。例えばここで▲7八角などとするとまた8二飛が想定され、千日手がチラつく。こちらは先手だし、何より例のアレを受けてもらっておいてこんな千日手とかありえないと考えていた。
そこで、

第4図A
第4図B

強気にバンザイして銀冠へ。ただし6筋の歩交換は容認する。
なお第4図Aより▲同歩△同銀▲6六歩に△同銀とするのは、▲同銀△同飛▲2三角成でゲームセットである。
感想戦でもバンザイを咎める手は確認されず想定通り銀冠に組むことは出来たが、また指す手が難しい局面が近づいてきていた。

が、次の手で焦らされ、いよいよこちらから打って出ることになった。

逃したチャンス

第5図

桂の活用を作られつつ、将来の攻撃陣圧殺を見せられた手。現状陣形に不満はないが、どんどんへこまされていく展開に勝機はないだろう。
持ち時間はまだ10分近くあるためもう少し使った方がよかったかもしれないが、他に手が無さそうすぎたため第5図より少考で▲7五歩を決行。以下△同歩に▲8五歩とガンガン突き捨てつつ、どうにか8筋方面から戦いを起こそうとした。
少し局面は進み、以下のようになった。

第6図

もし次の一手問題だったら自分も8秒くらいで正解できたかもしれない。
感想戦で指摘されたのは第6図から▲7二歩と垂らす手であり、言われてアッと叫んだ。この戦型においては頻出の垂らしであり指せるはずに思えたが、
後手の桂が既に7三に跳ねており、歩成が桂に当たらずあまり威力がないように見え、そのためこの垂らしを頭から消してしまっていた
しかし桂に当たらずとも相手を急かす効果としてはそれなりであり、本譜より間違いなく優っていた。
実戦は▲2五歩△3三銀(これもフェローチェさんらしい手に思う)▲3五歩△8四飛と進み、左辺の攻撃陣側はいよいよ圧殺一向聴といった風情になってきた。左はもうどうしようもないので、

第7図

左が無理なら右で行く。銀冠を銀立矢倉に進化させチョーパン一発ツッパることが男のたった一つの勲章
そのまま第二第三の頭突きを繰り出し続け、第8図を迎えた。

第8図

この局面、僅かではあるが優位を保つ最後のチャンスを迎えていた。
シンプルに▲4五銀とぶつければ難しいながらごく僅かにリードだったようだ。実戦ももちろんこれを読んだのだが、△3五銀とすれ違われたらダメに見えてしまってそれ以上読めなかった。が、▲4四歩とさらに迫り、なんやかんや銀をぶつける→桂をちぎる→5六でふんどし…などという展望で互角以上の展開だったようだ。
この▲4五銀を選べず指した手が良くなかったのもありここらは反省しきりであり、感想戦では「単調すぎて自分も選べなかったと思う」と言ってもらうなどしたが、これは慰め半分・感覚半分で受け取った。
実際はどうなんですか?>強い人

斬り合いだが……

第9図

実戦は第8図より▲5六金△6九角▲2七玉と進行して上図。
善悪はともかく明らかに生き急ぎ過ぎている。そして▲5六金は6九角が銀当たりになる手であり悪い。この6九角を見落としており、飛車を転換したかったのだが、だとしてもまだしも先に▲4八飛としてから開通を狙うべきであったようだ。
▲2七玉も金を下段に残して踏ん張ろうという勝負手気味の手だが、これもおとなしく戻る▲4六金が優ったようだ。
そこからしばらく進んで第10図。

第10図

セットした2三の歩を取られ、また完封の匂いがしてきたところ、
ここで▲5八銀。如何にも切られそうなためギャラリーのウケは悪かったようだが、AI曰く最善の勝負手。ただ自分としても全く感触は良くなく指させられている手だと思った。いやもう他の手が分からなかったんや

銀冠の堅陣は見る影もなく。
完封を嫌って斬り合いにはなったが、どちらかというと斬られに行っているという感じになってしまった。自分の中盤の弱さと、何よりフェローチェさんの分厚さが出た将棋だった。

要所が抜ける

角切られからかなり進んで、第11図。

第11図

直前に▲5二銀と投げ込んでおくなど、最後までチャンスを作ろうとは出来ていたのだが、ここで▲4三銀打としたのが敗着となった。
意図としては4四角で3五の桂を抜く手を用意したのだが、こんなところに角を使うようでは後手玉が安全になってしまう。角は4一に打ち、腹銀で詰めろを掛けたり2三角成のラッシュを狙うようなつくりでなければならなかったのだ。
代えて第11図では▲4一角と引っ掛けておいてから▲2八歩と受けておくのが良く、これならギリギリ均衡を保った勝負ができていた。
この2八歩は感想戦で指摘された手であり要となる手で、見えてはいたものの1五歩絡みの筋やそもそも飛車をボロっと取られるだけでダメだと切り捨ててしまったが、先述の4一角と組み合わせて喰い付き速度を合わせることで難解だったようだ。

ここで準備に想いを馳せる。
攻める側という視点の違いはあれど、フェローチェさんは2八歩の受けが有力なことを認識していたわけだ。もし日頃から秒読みに慣れていればこれを掘り下げることが出来ていたかもしれない……
そういう意味では準備したはずが大いに不足だったわけで、悔いが残る。

要所が抜け、以降はハッキリしてしまい着地を決められるだけとなった。

投了図

逃 げ る な

かくて敗戦となった。
局後反省会もし、その中で「面白かった」と言ってもらえたのが救いだ。長く五分以上の時間を維持し、この戦型の有力さを再認識することもできた。つまり乗り手が弱いってことだね!
そして上達の要素もしっかり噛みしめ、味わい…この苦味を次の、そして来期本番で糧にしたく思う。

フェローチェさん、改めて対局ありがとうございました!

オープン戦についてであるが、もう少し続けたいと思う。
1局だけというのも味気ないし、クラス差のある人と対局・交流のチャンスをもっと享受したいと思っている。
少しだけ間を空け、次のお相手に挑戦するつもりだ。

そして本局を経て、目下最大の課題はやはり秒読みだと感じた。
R差がある人ではあるが、今回のフェローチェさんの秒読み下の思考は自分の秒読み下のそれより遥かに精度が良いのを痛感した次第だ。
改善方法はいくらか思いつくが、中でも効果が約束されているのは……やはりこれだろう。

60局スパーに付き合ってくれ、実質コーチとなってくれていた、あの人が使っていたタグをみんなに共有して本記事の〆とする。

#24から逃げるな

そうなんですか先生? 3日後じゃん

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