指す将順位戦8th A級3組第3回戦 vsナカアオ

前回記事より一年が経過しようとしている。
既に指す順8thの全対局が終了し、結果も出た。
まもなく9thが始まろうとしている。

が、私の指す順8thは終わっていないのである。

さあ、宿題を片付ける時は今である。
記憶を取り戻し、悔しい気持ちに再度火を入れ、参加を決めた9thへの活力としようじゃないか。

山、標高高し


本記事は3局目、vsナカアオさんである。
当時を思い起こすと、スランプ一歩手前の不調でありどうしたものかな…と悩んでいたあたりだ。
そんな中での、序盤の山場を感じていた。

対策のため24の棋譜を確認すると――Rがとても高い

……だからどうという話はない。自分にやれることをやるだけなのだから。
むしろ彼相手にどんな将棋を指すかが、その時の調子のパロメータになるだろう。
そう考えていくととても対局が楽しみだったのを覚えている。

こちらの土俵に招いた先で

改めて、確認したナカアオさんの棋譜の内容としては純正の、綺麗な振り飛車党である。
……振り飛車党相手で先手だったらもう…ネ…

1図

無理矢理居飛車を強いたところであるが、そつなくこなしてくる……中でいきなりの御相手の腕まくりである。
力強い金上がり。
「ふざけてんじゃねーぞ」という声が聞こえてくるようだ(幻聴です)

この金がどう活躍するかが序盤~中盤の鍵を握るのは間違いないが、警戒しつつもこちらは普通の駒組を進める。
御相手としてもすぐに変わったことは出来なかったと見え、2図の組み上がりでは相手のみ不自然な駒組となってまずまずだと思っていた。

2図

玉頭戦


3図

御相手は囲い側で突っ掛けながら、並行して棒銀の攻めを見せてきた。
よく言えば色々な味付けをされ、わるく言えばちぐはぐだろうか。
「攻撃陣を動かしたい」
「歩越しの金をどうにかしたい」
「しかし殴り合いは美濃囲い側に利」
という感じで複数の課題を押し付けられており、作戦勝ちといえるだろう。

また御相手には金を35~26と擦り込んで玉頭の歩を取ってくる筋があったが、そこで持ち歩で謝ると後手の金は討死するのである(参考1図)。

参考1図

双方この筋には気づいており、紛れを求めて玉頭に狙いをつけてくるが、自然に発展した銀冠で対応。
下4図では一旦模様良しを感じていた

4図

そこから相手の攻め、こちらの受けという展開が続く。
どこかで角の効きと玉形差を活かしてカウンターを打てればゲームを一気に持っていける、比較的明るい展開。
感想戦でもお互い「後手の攻めは無理」という見解で一致したのだが……

対局中自分は焦っていた。
銀香交換から相手が手にした香を頭から浴びた時、こちらは保たないのではないか――

そして迎えたこの局面。
焦りとカウンターの方針がシナジーし、下5図で以下の手順を選ばせた。

5図

ここは香をじっと取っておく余裕があり、それが優った。
その後の△2六香には▲3七香とそれこそカウンターで2枚の金を串刺しにでき、方針通りになる順があったのだ。
感想戦やスパー相手にも訊いたが、この▲3七香は強者にはひと目であるという。次には選べるようになりたいところだ。

しかし対局中は見えず、選んだのは▲3四歩△同金直▲同角△同金……と、金を遠ざけながら角を切る手だった。
このようにして少しずつ、リードを擦り減らしていった。

逸機

迎えたこの局面。
本局最大にして最後のターニングポイントであろう。

6図

厳密にはおそらく、まだ先手が残しているのである。
冷静な今なら、奇声を発しながら(冷静じゃねーじゃん)▲4二金打と打ち据え、総交換の末に銀捨てから王手角取りを掛けることができるだろう。
そしてその図(参考2図)は、玉形の差などから難しいながらも少し先手が勝ちやすいはずだ。

参考2図

しかしここでは自分は敵玉を頭から押さえつけることしか考えていなかったため、▲4三金と逃げてしまい△4二歩で青ざめることになった。
この歩打ちの見落としはあまりにも罪深く、持ち時間も使っていなかった
どころか、もう秒読みに入れた方が良い時間(残1分ほど)にも関わらず
即指し
していた。
視野狭窄もここに極まるといったところで、とても悔やまれる。

本譜も結局飛車はもぎ取ったのだが、一段落したところでの勘定が単純に角1枚損したことになり、指し切りに陥りはっきり逆転となった。
その後も唯一の堅さだけを頼りに指し続けたが、残念ながらチャンスは来なかった。

投了図

逃した大魚は垣根を越えて


かくして黒星先行と相成った。
既に最後まで結果が出ている今の時点で言えば、この将棋はあまりに大きな「逃した魚」の一匹だったと言える。
加えてその「魚」は昇級され別のクラスとなってしまっており、今期にリベンジの機会はない。

ただ、事前に考えていた「パロメータ」の観点でいえば、各所に不調は現れていたものの、決してチャンスを作れないわけではなく、競った内容であったことがうかがえた。これだけ指せるならば不調ももうじき底は打つだろうと妙に局後前向きだった記憶がある。
また感想戦のログをとってあるのだが、少なくとも2時間程は感想戦をしていたようだ。一方的に教わるだけでは大変申し訳ないことだが、この時間続けられるということは一方的なテイクに終わらず、こちらからのギブもあっての時間ではないかと思う。お相手の気持ちは分からないが。

感想戦も含め長時間お付き合い頂いたナカアオさん、改めてありがとうございました。また、昇級おめでとうございます。

******

好転の予兆を感じつつ、目の前の黒星先行という現実にも向き合うことになり――などと本来は書くべきところだろう。
だがもう結果が出ているわけで、そうした結びは無為である。

提出期限はとうに過ぎている振り返りではありますが、4局目分以降もよろしくお願いいたします。


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