指す将順位戦8th A級3組第6回戦 vs miymo
ちゅうい:これは8thの振り返りです。
上位戦線を目指して
前局の勝利により白星が先行し、前を、上を向ける心境に近づいてきた。
元々戦績を目標にはしないタイプではあるが、こうなってくると人間は現金なもので、俄かに昇級の二文字の背中が見えてきた。とは言っても既に2敗しており順位も悪いので、
「残り全勝だったらチャンスがあるかなー、でも今は考えてられないなー」くらいの考えだった。
しかし、最高の結果が見えていることとモチベーションは密接に結びついていることは間違いないのである。
今回のお相手はmiymoさん。読み方はみやもとのこと。こちらも初参加勢である。少ない情報を探ったところ、この時はほぼ三間飛車と中飛車が得意な振り飛車党寄りの対抗系党に見えた。相手が振り飛車を早期に明示した場合は居飛車も辞さないが、できれば振りたいのかなという印象。
対抗系を勉強・スパーするも、微妙にしっくりこなかった。
例のアレなら何も困らないが、こちらが後手だったらどうするか。
……ただでさえ不慣れな中、早石田とか飛んで来たらちと癪だな。
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――じゃあ、俺から振るわ!
我流が祟る
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戦型は後手中飛車穴熊vs先手一直線穴熊へ。1局目は先手側を持っていたわけだし、そこまでまずいことにはなるまい…と思っての採用だ。
第1図の△3五歩は位を張って、銀の退路や将来の石田流を作りつつ、相手の桂を出させないための手。指した時は複数の狙いがあって悪くない手だと思っていたのだが……
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第2図の▲4六歩が機敏な手。先手の右銀がまだ6八にいるので、このタイミングだと5六歩が通らない。にもかかわらず先手の飛車がちょうど5四にいて銀の退路をふさいでいるため、銀は3四に引くしかない。2筋の補強を手順に出来たといえば聞こえは良いが、僻地に追いやられた格好となった。
結論、この突っ張った3五歩からの一連の構想は無理かつスカスカであり……
お相手も感想戦では「定跡はよく知らない」と謙遜されていたが、それどころではないというか……明らかに序盤の勘所が掴めていない。
「型破り」ではなく「型無し」になってしまっているわけで、今後の為にも補強が急務なのだった。
身すら捩れず
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少し進んで第3図A。
……気が付いてみたら何も主張のない、絶望が広がるのみとなってしまった。左銀は左遷させられており、玉の堅さでも圧敗。せめて金銀3枚にしてチャンスを待ちたいが、直前に覗かれた角が3一を睨んでいる。
4二角と引いたとしても喜んで交換を迫られ、玉形差で轢殺されるだけだろう。ということで、動かしたい駒がなくなり困り果てることとなった。
なんとか身を捩ろうと△7四歩と突いて懐を広げ、最悪パンツを投げつける構えを見せるも、
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喜んで開戦の足掛かりにされる始末である。そしてこれは将来の7二歩を誘発するので罪が想定以上に重い。こうなってしまうともう流れに身を任せ、相手が息を切らすまでやられ放題にされる他ない。
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それでもソフトの形勢グラフ上はずっと互角~微不利を彷徨っており、
ギリギリ自ら土俵を割らないでいたのだが、
ここから局面が一層激しくなり、試練の時は続く。
堪え性のなさ
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第3図より進んで第4図。直前に自陣に蒔かれた拠点をそのままにはできないので飛車で刈りにいくが、相手もいよいよエンジンを掛けてくる。
▲5五歩として角道を遮断してきて、これを同角なら▲5六金~再度5五歩とするつもりだろう。ゆえに△6三飛と目当ての拠点を刈り取ったが、そこで▲6六飛とぶつけられる。当然陣形差で跳ね飛ばされるので五分の交換は拒否。
拒否したのだが……
結局のところ前項から引き続き、身が捩れない状態は継続中なのである。大きく動こうとすれば陣形差にちぎられ、小技を利かす時間もなく、加えて良く利くポイントも見つからないといった具合だ。
仕方なく残しておいた角金交換を済ませ、角をあやしく打ってもたれかかる方針をとることにしたが、依然お相手の中盤力が光る展開となっていった。
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それでも辛抱と嫌味付けを続け、第5図Aのように長い中盤戦が続く。その中では細かく形勢がこちらに振れるところもあったようなのだが……
来ているはずの好転のチャンスだが、なかなか保持することができない。
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第5図Aから▲7二歩△6六歩▲7一歩成となって第5図B。
急所に飛んできた▲7二歩を手抜いて飛車を取ったがこれがまずかった。
△6六歩に代えて△同金が正着だが、▲7三歩と叩かれる手や、飛車交換から角金両取りに先着される手が浮かんで取り払うことができなかった。
また観戦欄では金は寄るものと見ていたらしいのだが、いずれにしても代償なく金が浮いてしまう手は指し切れなかった。
少し進んで第6図。
ここでも形勢が僅かにこちらに向いていたのだが、フイにしてしまう。
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攻め合いを目指した△7六桂だがこれが悪手。敗着と呼ばれた世界線もあっただろう。相手の玉が全く見えぬ状態では勝機は無いとみた手だが、冷静に見てみると相手の攻めは細かったのである。
ゆえに代えてソフト推奨の△7二銀や、感想戦で出た△8二玉などと受けの手を指し、相手の▲7三歩成からのと金攻めを防ぐべきだった。
もちろん今冷静になれば見えない手ではないが、第一感が相手陣を向いてしまう悪癖があるのかもしれない。ある意味では長所にもなり得るとはいえ、どうにも堪え性のない性分が出ている。
指す順本番での1分将棋かそれに近いギリギリの状態でも、こういった受けの手を発見し、選べるようにしなければならない……
今振り返り、改めて今後の課題としてこのあたりを認識した次第だ。
投げる手をおさえて……
第7図の一手前。
形勢を損ね切り、戦意は底をついていた。
依然敵玉は金銀3枚+上部にもう1枚の堅陣でありまだ見えない。
一方こちらは銀1枚でパンツも毟られようとしている、風前の灯。
駒割りこそほぼ飛車得だが、そんなものはこの状況では何の意味もない。っていうか相手の駒台の角はなんですか?もたれるつもりで打ったのに何で切っちゃったんですか?
ヤケを起こそうにも全く効果がないのでは暴れることもできやしない。
穴熊というのは本当に残酷なものだ。
……思わず投了ボタンにマウスポインタを合わせる。
が、ここで何故か頭に「焦点の歩」という単語が浮かび、焦点を探してみるとすぐ見つかった。ちょうど敵の金銀の焦点――
……これもあまり意味はなさそうだ。
でも最後に一手指してみてもいいじゃないか。
応手を見てから投了しても遅くはあるまい。
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もしこれを同銀なら、そこで投了のつもりだった。また同金引なら5五角から指し続けるだろうが、これも負けだっただろう。
しかし実戦は▲7九銀。これはソフトによると次善手相当であり、これでももちろん負けなのだが……
ゼロ手で敵玉付近に拠点が出来たという事実が、戦意を再燃させた。
以下△6八金と相手を削りにかかり、依然必敗ではある将棋に食らいつく。
お相手はそれに圧されるように攻め合いに誘引され、以下▲7三歩成△7八金▲同銀△6八歩成▲8二金……と進行。
その後こちらは自陣に金3枚を打ち据えて必死にガードを上げ続け、相手のラッシュが止むのを待つ。
そしてついに、その時を迎えた。
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もしここで▲7三金捨てから入っていたらこちらは倒れていたらしい……と書こうとしたが、それは妥当ではないかもしれない。
いや、確かに正しく指せば倒れているらしいのだが、その倒れているルートの難易度がすごく高かった。
一例は▲7三金△同金▲7四歩△7二金▲7三銀△8二金打▲7二銀成△同金▲7三金△7一銀▲8二金打△同金▲7一飛成△9三角▲8二金 △同角▲同龍△同玉▲6四角(参考図)…といった具合で、最後の角の王手への合駒が悪く、逃げる手も効かずで一手勝ちということなのだが、
金捨てから入るのがリスキーだし、その後歩で金を取りに行こうとして引かれる感触もキモいしで、1分で正着を続けるのは困難至極だっただろう。
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ゆえに本譜は第8図より▲7一銀と掛けてきたが、これを待っていた。
相手の持駒から角銀桂が全て消えており、これが詰めろになっていない。
この一点に全てを託して、今まで指し続けてきたのだ。
以下△7八とで速度を入れ替えついに逆転。勝利することができた。
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熱を帯びた星を貯えて
かくて貯金を2に増やすことができた。
内容は「辛くも」という言葉では足りな過ぎるが、結果は素直に嬉しい。
またスマホでやりにくい中、長い時間感想戦に付き合ってもらってとてもありがたかった。
感想戦は令和の今もなお、とても大事だと思う。
どう指すべきだったかの振り返りはソフト相手でもできるが、対局中の心理状態からどんな手を選んだかなど、人間からしか得られぬ情報があるのだ。
miymoさん、対戦ありがとうございました!
……さて、冒頭の通り指し分けから二路遠ざかったことで負け越し・降級ではなく、勝ち越し・昇級を見据えられるようになったのだ。
次局はのりじさん。彼もまた初参加勢である。
「彼と」という点ももちろん楽しみだが、貯金2で「自分が上向いた心持ちでの対局」がどうなるかもまた楽しみ。そんなところで……
もう結果出てるけど是非次もお楽しみに!